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マティアス・クロイツァーその人。  作者: Kentarou Tou
第十一章 乳母と、クロイツァー伯と、旅立ちの日

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第十二話「兵隊ごっこと、独りの遊び」


十三歳になる直前、マティアスは、屋敷を訪れた親戚筋の子供たちと、兵隊ごっこをする機会があった。

子供たちは、皆、楽しそうに、木剣を振り回して遊んでいた。

マティアスも、誘われて参加した。


だが、途中で、マティアスは輪から外れた。

「なんで抜けるの」と一人の子供が聞いた。

「勝敗が、決まっている遊びだ」

「決まってないよ、これから戦うんだから」

「戦う前に、分かる」

「なんで分かるの」

マティアスは、少し考えた。

「地形と、人数と、武器の差を見れば、分かる」

子供たちは、顔を見合わせた。

「つまらないこと言うね、マティアスは」

「そうか」

「もっと、楽しくやろうよ」

「楽しさが、何を指すのか、分からない」


子供たちは、やがて呆れて、遊びを続けた。

マティアスは、一人、庭の隅に座って、それを見ていた。

つまらないとは、思わなかった。

ただ、参加する理由が、自分の中に見つからなかった。


その様子を、フェリクスが見ていた。

「なぜ、加わらない」

「理由がない」

「楽しむのに、理由はいらない」

「楽しむとは、どういうことだ」

フェリクスは、少し困った顔をした。

答えられなかった。

それから、静かに言った。

「……いつか、分かる日が来る」

「いつだ」

「私には、分からない」

マティアスは、その答えに、特に何も感じなかった。

分からないことが多いのは、いつものことだった。


つづく


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