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マティアス・クロイツァーその人。  作者: Kentarou Tou
第十一章 乳母と、クロイツァー伯と、旅立ちの日

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第十話「初めての遠征訓練」


十二歳になった年、フェリクスの提案で、マティアスは初めて、屋敷の外での野営訓練を経験した。

数日間、山中で、自分で火を起こし、食料を調達し、寝床を作る訓練だった。


初日、マティアスは火を起こすのに苦労した。

何度も失敗した。

フェリクスは、手を貸さなかった。

「自分でやれ」

「やっている」

「もっとやれ」

夜になる前に、ようやく火がついた。

小さな炎だった。

マティアスは、その炎を、しばらく見ていた。


「なぜ、こんな訓練をする」とマティアスは、その夜、フェリクスに聞いた。

「お前が、いつか、屋敷を出るからだ」

「屋敷を出る?」

「いずれ、士官学校に入ることになる」

マティアスは、少し驚いた。

「聞いていない」

「伯爵様が、まだお話しになっていないのだろう」

「なぜ、士官学校に」

フェリクスは、火を見ながら言った。

「軍の中では、身分よりも、実力が問われる」

「それが」

「お前にとって、都合が良い場所だ」

マティアスは、その言葉の意味を、まだ完全には理解できなかった。

ただ、何か、大きな決断が、すでに自分の知らないところで進んでいることだけは、感じ取った。


訓練の最終日、マティアスは一人で、崖の上から遠くを見た。

山々が連なっていた。

その向こうに、見たことのない土地が広がっているはずだった。

「あの向こうは」

「礎の国だ」

フェリクスが答えた。

マティアスは、しばらくその方角を見ていた。

理由は、自分でも分からなかった。

ただ、目が離せなかった。


つづく



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