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マティアス・クロイツァーその人。  作者: Kentarou Tou
第十章 カイルの父と、謎の女と、その子供たち

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第九話「帰路と、墓場まで持っていく荷物」


帰り道、カイルの父は、ずっと黙っていた。

馬の足音だけが、続いていた。


王だった。

間違いなかった。

あの歩き方、あの体つき、月明かりに照らされたあの顔。

何度も見た顔だった。


なぜ、王が。

なぜ、あの女と。

なぜ、赤子が二人も。


問いは、いくつも浮かんだ。

答えは、一つも出なかった。

出す必要も、ないと思った。


これは、自分が抱えて、そのまま墓場まで運ぶべき荷物だ。

そう決めたのは、王都が見えてくる頃だった。


側近への報告は、短かった。

「土地には、一軒家がありました。人が住んでいました」

「誰が」

「女が一人。子供が」

「詳しく」

「すみません。詳しくは、見ておりません。一晩世話になっただけで、朝には発ちましたので」


嘘だった。

生まれて初めてつく、大きな嘘だった。

だが、口にした瞬間、後悔はなかった。


側近は、しばらくカイルの父を見ていた。

それから、頷いた。

「そうか。分かった」

それ以上は、追及されなかった。


帳面には、こう記した。


  空欄  女、旅装


それだけだった。

名も、事情も、王のことも、何も書かなかった。


つづく


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