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マティアス・クロイツァーその人。  作者: Kentarou Tou
第十章 カイルの父と、謎の女と、その子供たち

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第七話「朝と、目が合わない朝食」


朝、居間に出ると、女が一人で朝食の支度をしていた。

男の姿は、なかった。

馬もいなかった。

夜のうちに、発ったらしかった。


「よくお休みになれましたか」と女は言った。

「……ええ」

声が、少し掠れた。

女は、それに気づいたかもしれなかった。

気づかなかったかもしれなかった。

どちらとも、分からなかった。


朝食の間、二人とも、ほとんど話さなかった。

揺り籠の赤子たちが、時々、小さく声を上げた。

女は、その度に、あやしに行った。

戻ってくると、また黙って食事を続けた。


カイルの父は、何度か、言葉にしようとした。

昨夜、見たことを。

だが、言葉にする前に、飲み込んだ。

言葉にすれば、何かが、決定的になる気がした。

決定的にしていい種類のことではない気がした。


食事が終わる頃、女が言った。

「昨夜、何か、お気づきになりましたか」


カイルの父は、しばらく、答えなかった。

女は、答えを急かさなかった。

ただ、静かに、こちらを見ていた。


「……いいえ」とカイルの父は言った。「何も」


女は、しばらく、カイルの父を見ていた。

それから、小さく頷いた。

「そうですか」

それだけだった。

それ以上は、何も聞かれなかった。


つづく


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