表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マティアス・クロイツァーその人。  作者: Kentarou Tou
第十章 カイルの父と、謎の女と、その子供たち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
74/132

第四話「揺り籠が、二つ」


夜半、目が覚めた。

喉が渇いていた。

水を探して、居間に出た。


女が、起きていた。

揺り籠のそばに、座っていた。

揺り籠は、一つではなかった。

もう一つ、隅にあった。

先ほどは、気づかなかった。


女は、二つの揺り籠を、交互に見ていた。

どちらにも、赤子が眠っていた。

よく似た、小さな寝顔だった。


カイルの父は、声をかけるのをためらった。

女の横顔が、あまりにも静かだったからだ。

静かすぎて、声をかければ、何かが壊れる気がした。


女が、先に気づいた。

「起こしてしまいましたか」

「いえ。喉が渇いただけです」

「水は、そこに」

女は、壺を示した。

カイルの父は、水を飲んだ。

そのまま、部屋に戻ろうとした。


「あの」

女が、呼び止めた。

カイルの父は、振り返った。

女は、二つの揺り籠を見たまま、言った。

「もし——」

言葉を、選んでいるようだった。

「もし、いつか、この子たちのことを、誰かに聞かれることがあったら」

「はい」

「見なかった、と言っていただけますか」


カイルの父は、しばらく、女を見ていた。

理由は、聞かなかった。

聞けば、何かに巻き込まれる気がした。

それに——女の目が、何かを、必死に守ろうとする目だった。

そういう目を、何度か見たことがあった。

王に仕える中で、何度か。


「見ませんでした」とカイルの父は言った。

女は、カイルの父を見た。

それから、深く、頭を下げた。

「ありがとうございます」

それだけだった。


カイルの父は、部屋に戻った。

横になったが、眠れなかった。

二つの揺り籠のことを、考えていた。

よく似た寝顔のことを、考えていた。

この家に、他に誰か、いるのだろうか。

父親は、どこにいるのだろうか。


考えても、答えは出なかった。

出ないまま、朝を待った。


つづく


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ