72/132
第二話「若い頃と、任務」
若い頃、カイルの父は、王の使いだった。
今のような、庭を持つ隠居の身ではなかった。
命じられれば、どこへでも行った。
理由を聞くことは、しなかった。
聞かない方が、長く仕えられると、若い頃に学んだ。
その年、命じられた任務は、簡単なものだった。
国境沿いの、ある土地を見てくること。
地図にない土地だった。
「見て、何もなければ、それでいい」と、王の側近は言った。
「何かあれば、報告しろ」
「何かとは」
「行けば分かる」
そう言われて、行った。
馬で三日かかった。
道はなかった。
獣道を辿るしかなかった。
やがて、開けた土地に出た。
何もない、緩衝地帯だった。
その中に、一軒家があった。
古くはなかった。
新しくはあったが、丁寧に建てられた家だった。
誰が建てたのか、すぐには分からなかった。
ただ、人の手が、ちゃんと入っている家だった。
日が暮れかけていた。
戻るには、遅すぎた。
カイルの父は、その家の戸を叩いた。
つづく




