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マティアス・クロイツァーその人。  作者: Kentarou Tou
第十章 カイルの父と、謎の女と、その子供たち

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第二話「若い頃と、任務」


若い頃、カイルの父は、王の使いだった。

今のような、庭を持つ隠居の身ではなかった。

命じられれば、どこへでも行った。

理由を聞くことは、しなかった。

聞かない方が、長く仕えられると、若い頃に学んだ。


その年、命じられた任務は、簡単なものだった。

国境沿いの、ある土地を見てくること。

地図にない土地だった。

「見て、何もなければ、それでいい」と、王の側近は言った。

「何かあれば、報告しろ」

「何かとは」

「行けば分かる」


そう言われて、行った。


馬で三日かかった。

道はなかった。

獣道を辿るしかなかった。

やがて、開けた土地に出た。

何もない、緩衝地帯だった。


その中に、一軒家があった。


古くはなかった。

新しくはあったが、丁寧に建てられた家だった。

誰が建てたのか、すぐには分からなかった。

ただ、人の手が、ちゃんと入っている家だった。


日が暮れかけていた。

戻るには、遅すぎた。

カイルの父は、その家の戸を叩いた。


つづく


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