第四話「冬と、フワンが一人で抱えているもの」
冬になった。
雪が降った。
マティアスは今年も来た。
エルザは台所にいた。
フワンは縁側にいた。
ナギが、川の方を向いて縁側にいた。
いつも通りだった。
その夜、縁側に三人で出た。
お茶を飲んだ。
しばらく、誰も何も言わなかった。
音が吸い込まれていた。
静かだった。
それから、フワンが言った。
「マティアスさん」
「なんだ」
「重いものを持っている時、引き出しに入れるといいんですよね」
マティアスは少し間を置いた。
「そうかもしれない」
「引き出しに入れられないものは、どうしますか」
「ここに持ち歩く」
「ここというのは」
「持ち歩けば、いつか形になるかもしれない。形にならなくても、持ち歩ける」
フワンはしばらく雪を見ていた。
「そうですか」
「そうだ」
「持ち歩ける、ということが大事なんですか」
「そうかもしれない」
フワンは少し間を置いた。
それから、静かに言った。
「じゃあ、大丈夫です」
「何がだ」
「持ち歩けているので」
マティアスはフワンを見た。
フワンは雪を見ていた。
にやにやしていなかった。
ただ、静かな顔をしていた。
何かを抱えたまま、静かにしていた。
「フワン」
「なんですか」
「重いか」
フワンは少し間を置いた。
「……少し」
「そうか」
「でも持ち歩けています」
「そうか」
「マティアスさんが来てくれるから、持ち歩けています」
マティアスは返事をしなかった。
しなかったが、フワンの隣に、少し長く座っていた。
エルザは何も言わなかった。
ただ、お茶を飲んでいた。
三人で、雪の夜を見ていた。
誰も何も言わなかった。
それで十分だった。
春まで、まだ少しあった。
でも今年の冬は、去年の冬とは少し違う冬だった。
フワンが「持ち歩けている」と言った冬だった。
それだけのことが、今夜の縁側を、今まで一番温かい場所にしていた。
鎧は、今夜も着ていた。
ただ——今夜の隙間からは、雪の冷たさと、縁側の温かさが、両方通り抜けていた。
それで十分だった。
翌朝、引き出しを開けた。
フワンの手紙が入っていた。
カボチャを渡しました、それ以上は書きません、という手紙が。
カイルの手紙も入っていた。
深く掘るな、という手紙が。
それから、カボチャの種が一粒あった。
春にフワンが渡してくれた種が。
全部あった。
閉めた。
それから便箋を出した。
誰にも送らない手紙を書いた。
フワンが重いものを持ち歩いている。
カイルも、何かを知っていて、深く掘るなと言っている。
私には、まだ形が見えない。
ただ、フワンが「持ち歩けている」と言った。
それで十分だった。
来年の春、また行く。
その時に見えるものが、見えるかもしれない。
見えなくても、行く。
ずっとだ。
折って、入れた。
閉めた。
窓の外では、雪が降り続けていた。
静かだった。
春まで、まだ少しあった。
つづく




