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マティアス・クロイツァーその人。  作者: Kentarou Tou
第六章 にやにやしているフワンと、カボチャの種

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第三話「秋と、カボチャが十一個実った日」


秋になった。

約束通り、来た。


ルドルフが来た。

ハルトが来た。

今年は外から走ってきた。

春に来た時より、少し大きくなっていた。

「ああ」とマティアスは言った。

ハルトは尻尾を振った。


フワンは畑にいた。

カボチャを見ていた。

マティアスが近づくと、振り返った。

にやにやしていた。

今日のにやにやは、今まで見た中で一番本物だった。

「来てくれた」

「約束だ」

「見てください」

フワンが畑を示した。

マティアスは数えた。

「……十一個だ」

「十一個です」

「春に、十個以上と言っていたな」

「はい」

「一個多い」

「一個多いです」

フワンはにやにやしたまま、泣いていた。

にやにやしながら泣いていた。

「フワン」

「なんですか」

「泣いているのか」

「泣いています」

「なぜだ」

「嬉しいからです」

「カボチャが十一個実ったのが」

「それもですけど」

「なんだ」

「マティアスさんが来てくれたから、見てもらえたので」

マティアスは返事をしなかった。

フワンはにやにやしたまま泣いていた。

マティアスはフワンの頭に手を置いた。

今日は少し長く置いた。

フワンは何も言わなかった。

ただ、にやにやしたまま泣いていた。

それで十分だった。


その夜、三人でシチューを食べた。

カボチャが入っていた。

今年のカボチャだった。

「旨いか」とフワンが聞いた。

「旨い」とマティアスは言った。

「今年のカボチャですよ」

「知っている」

「どうですか、去年と比べて」

「去年より旨い」

フワンがにやにやした。

「なぜだと思いますか」

マティアスは少し考えた。

「来ると約束していたから、実らせたんだろう」

フワンが止まった。

エルザが笑った。

「マティアス、それ良いこと言ったわよ」

「そうか」

フワンはしばらく黙っていた。

それから、目を拭いた。

「また泣いてるの」とエルザが言った。

「泣いてないです」

「目が光ってるわよ」

「カボチャの湯気です」

「カボチャの湯気は目に入らないわよ」

フワンがにやにやした。

マティアスはシチューを食べた。

旨かった。

来ると約束して来たから、旨かった。

来年も来ると思ったら、もっと旨かった。


縁側に出た後、フワンが来た。

エルザは先に休んでいた。

フワンとマティアスの二人になった。

川の音がした。

秋の夜が続いていた。

「マティアスさん」

「なんだ」

「ヴェルタという港町に、行ったことがありますよね」

マティアスは少し止まった。

「そうだ」

「どんな町でしたか」

「騒がしかった」

「海は」

「悪くなかった」

「人は」

「良い人間がいた」

フワンはしばらく川を見ていた。

「そうですか」

それだけ言った。

それ以上は聞かなかった。

マティアスも、それ以上は言わなかった。

しばらくして、フワンが小さく、何かを口ずさんだ。

名前のない歌だった。

低くて、静かな歌だった。

マティアスは、その歌を聞いた。

知っていた。

防波堤で聞いた歌だった。

でも今夜は、それだけではない何かが混じっていた。

歌が終わった。

縁側が静かになった。

川の音だけが残った。

「フワン」

「なんですか」

「良い歌だ」

フワンは少し間を置いた。

「ありがとうございます」

「どこで覚えた」

「……ずっと前から、知っていました」

それだけ言った。

それ以上は言わなかった。

マティアスも、それ以上は聞かなかった。

聞かなかったが——

何かが、今夜、少し動いた気がした。

何が動いたのか、まだ分からなかった。

ただ、動いた。

秋の夜が続いていた。

川が、名前もなく、流れ続けていた。


つづく



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