第二話「三人と、四人と、間違っている」
三日後、リゼットがまた来た。
ノックをして、返事を待った。
今日は、それを待った。
「入れ」とマティアスは言った。
リゼットが入ってきた。
今日も軍服に近い服だった。手に書類を持っていた。
「拘留の延長について、ご報告に来ました」
「延長か」
「ええ。上層部の判断です。私の権限では、すぐにお出しすることができません」
「分かった」
リゼットは少し意外そうな顔をした。
「抗議はされないのですね」
「抗議して変わるなら、する」
「変わりませんので」
「だから、しない」
リゼットは書類を机に置いた。
それから、椅子に座った。マティアスが許可するより先に。
マティアスは何も言わなかった。
「マティアス様」
「なんだ」
「占いというものを、信じますか」
マティアスは少し考えた。
「占いか」
「神父様に、運命を見ていただくことがあります。私は」
「それで」
「三人の神父様から、同じことを言われました」
「何を言われた」
リゼットは少し間を置いた。
「あなたと、運命の糸で結ばれている、と」
マティアスは表情を変えなかった。
「三人とも間違っている」
リゼットが止まった。
「即答ですね」
「迷う理由がない」
「神父様が三人ですよ」
「三人とも間違っている」
リゼットはしばらくマティアスを見た。
それから、わずかに笑った。
「面白い方ですね」
「事実を言っている」
「事実、ですか」
「そうだ」
リゼットは立ち上がった。
窓辺へ歩いた。中庭の噴水を見た。
「クロイツァー殿には、お戻りになりたい場所が、おありなのですか」
マティアスは少し間を置いた。
「ある」
「どのような場所ですか」
「答える義理はない」
「そうですね」とリゼットは言った。「失礼しました」
リゼットは扉へ向かった。
扉の前で、足を止めた。
「クロイツァー殿」
「なんだ」
「神父様が、四人になりました」
マティアスは窓の外を見た。
「四人とも間違っている」
リゼットは、今度は声に出して笑った。
小さく、しかし確かに、笑った。
「では、五人目が来た時も、同じ答えですか」
「同じだ」
「分かりました」
リゼットは出て行った。
扉が閉まった。
マティアスは窓の外の噴水を見続けた。
水音は、変わらず続いていた。
つづく




