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マティアス・クロイツァーその人。  作者: Kentarou Tou / Kentarou Theater
第三章 整いすぎた女と、即答する男

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第一話「薔薇と、断られた夕食」


部屋は、牢屋ではなかった。

石造りの壁は同じだったが、寝台には布が敷かれていた。窓には格子がなかった。机があり、椅子があり、棚には本が並んでいた。

扉に鍵はかかっていなかった。

ただ、外に常に二人、見張りが立っていた。

マティアスは窓辺に立っていた。

外は中庭だった。噴水があった。水音が、静かに響いていた。

牢屋よりは、ずっと良い場所だった。

それでも、帰れない場所だった。

ノックの音がした。

返事を待たずに、扉が開いた。

「マティアス様」

入ってきたのは、女だった。

金髪を一つに結い上げていた。灰色の目だった。軍服に近い、しかし装飾の多い服を着ていた。立ち姿が、ひどく整っていた。隙がなかった。

「リゼット・ハウゼンと申します」と女は言った。「この拘留について、私が責任者を務めております」

「そうか」

「お加減はいかがですか」

「悪くない」

「結構です」

リゼットはしばらくマティアスを見た。

値踏みをするような目ではなかった。ただ、観察する目だった。

「夕食をご一緒にいかがですか」とリゼットは言った。「拘留下の方とは思えないかもしれませんが、私の部屋で。話を伺いたいことがあります」

マティアスは少し間を置いた。

「断る」

リゼットの表情は変わらなかった。

ただ、目の奥で、何かがわずかに動いた。

「理由を伺っても」

「夕食を共にする理由がない」

「私はあなたの拘留の責任者です。理由としては十分かと」

「夕食をする必要のある責任ではない」

リゼットは少し笑った。整った笑い方だった。

「ずいぶん、はっきりとおっしゃる方ですね」

「事実を言っている」

「分かりました」とリゼットは言った。「では、別の機会に」

「別の機会も同じだ」

リゼットはまた、わずかに目を動かした。

それから、一礼した。

「失礼します」

扉が閉まった。

足音が遠ざかった。

マティアスは窓の外を見た。

噴水の水が、光を受けて、きらきらと光っていた。

きらきらと光る水を見ると、いつも別のものを思い出した。

小川だった。

あの村の、小川だった。

マティアスは引き出しを開けた。

便箋があった。

ペンを持った。

書き始めた。


エルザ

また捕まった。今度は牢屋ではない。窓に格子もない。だが、出られない。

帰る予定が遅れる。

すまない。


ペンを置いた。

それだけしか書けなかった。

書きたいことは、もっとあった。

だが、今は、それだけで十分だった。

噴水の音が、夜まで続いた。


つづく


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