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マティアス・クロイツァーその人。  作者: Kentarou Theater
第二章「古い友人は、だいたい最悪のタイミングで現れる」

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第十一話「夏と、カイルの手紙と、言えなかった続き」


夏になった。

約束通り、来た。

今年三度目の訪問だった。

カイルが「年に三度」と言ったのは、もう去年のことだった。気づけばその通りになっていた。

そのことをカイルに言うつもりは、やはりなかった。


出発の朝、門の前にカイルはいなかった。

今回は一人だった。

それが少し、静かな感じがした。

悪くなかった。

ただ、馬に乗りながら、ふと思った。

カイルは今頃どこにいるだろう。

本部にいるかもしれない。あるいはどこかへ出かけているかもしれない。

カイルのことを道中で考えたのは、初めてだった。


三日かかった。

夏道は、春より少し埃っぽかった。

日差しが強かった。

馬が水を飲む回数が増えた。

二日目の夜、焚き火を一人で囲んだ。

カイルがいた時は、黙って二人で飯を食った。

今年は一人だった。

飯を食いながら、少し考えた。

カイルが隣を歩いていた時間のことを。

羅針盤の話を。

台所で困った顔をしていたことを。

声を出さない笑い方のことを。

孤独な人かもしれない、とエルザが言っていた。

そうかもしれない、とマティアスは思っていた。

ただ、今年の春、カイルは「また来る」と言っていた。

来るだろう。

あの男は、言ったことはする。

善処する、と言った時以外は。


三日目の午後、小川が見えた。

北へ向かった。

一里。

二里。

村が見えた。

今年もルドルフが最初に気づいた。

尻尾が激しく動いた。

「ああ」とマティアスは言った。


エルザは台所にいなかった。

畑にいた。

夏の日差しの中で、麦わら帽子をかぶって、何かの世話をしていた。

マティアスが近づく足音を聞いて、振り返った。

目が丸くなった。

それから笑った。

泣いていなかった。

ただ笑った。

「来た」と言った。

「ああ」とマティアスは言った。

「約束、守ったわね」

「守ると言った」

「善処すると言ったじゃない」

「今回はすると言った」

エルザはまた笑った。

麦わら帽子が、夏の光の中で揺れた。

マティアスはその帽子を、少し見た。

初めて見る帽子だった。

初めて見る季節の、初めて見るエルザだった。

「何を見てるの」とエルザが言った。

「麦わら帽子だ」

「そうよ、夏だから」

「似合っている」

エルザが少し止まった。

耳が赤くなった。

「……朝から勘弁してよ」

「朝ではない。午後だ」

「午後でも勘弁してよ」

「事実を言っただけだ」

エルザはしばらくマティアスを見た。

それから、麦わら帽子を少し下げて、顔を隠した。

「……ありがとう」

「どういたしまして」

帽子の下から、小さく笑う声がした。


フワンは畑の反対側にいた。

マティアスを見て、にやにやした。

「来ましたね」

「来た」

「夏も来てくれるんですね」

「カイルが年に三度と言った」

「カイルさんの案を採用したんですね」

「そういうことになるかもしれない」

フワンはにやにやを深めた。

「カイルさんに教えますよ」

「余計なことをするな」

「でも喜びますよ、カイルさん」

「それが余計だと言っている」

フワンはにやにやしたまま、畑に戻った。

犬が三匹、フワンの後をついていった。


夕食の後、縁側に二人で座った。

夏の夜だった。

虫の声がしていた。

星が出ていた。

「ねえ」とエルザが言った。

「なんだ」

「カイルさん、今頃どこにいるかな」

マティアスは少し驚いた。

「道中でも同じことを考えていた」

エルザが振り返った。

「本当に?」

「そうだ」

「珍しいわね」

「そうかもしれない」

エルザは星を見た。

「孤独な人だって言ったでしょ、春に」

「そうだな」

「でも、ちゃんとここに来るじゃない」

「ああ」

「だから孤独じゃないと思う」

マティアスは少し考えた。

「孤独かどうかは、来るかどうかで決まるわけではない」

「そうね」エルザは少し間を置いた。「でも、来られる場所がある人は、少し違うと思う」

「どう違う」

「来られる場所がない人より、少しだけ温かい」

マティアスは返事をしなかった。

しばらく、星を見ていた。

虫の声が続いていた。

「マティアス」

「なんだ」

「あなたも昔、来られる場所がなかったの?」

マティアスは少し間を置いた。

「そうかもしれない」

「今は?」

「今は、ある」

「どこ」

マティアスはエルザを見た。

エルザはまっすぐにこちらを見ていた。

「ここだ」

エルザは何も言わなかった。

しばらく、マティアスを見ていた。

それから、縁側の上の手を、少し動かした。

マティアスの手に、触れた。

「よかった」と、エルザは小さく言った。

「ああ」

「ずっと、そうであってほしい」

「そうだ」

「変わらない?」

「変わらない」

エルザはしばらく黙った。

それから、手を少し強く握った。

「言いたいことが、また一つ言えたわね」

「そうかもしれない」

「まだある?」

「ある」

「何年分」

「数えていない」

エルザが笑った。

夏の夜の笑い声だった。

虫の声に混じって、夜に溶けた。


翌日、カイルから手紙が届いた。

行商人が持ってきた。

鷹の封蝋だった。

今回の鷹は、飛んでいた。

羽根を広げて、空を飛んでいた。

マティアスは開けた。


マティアス

夏に行ったか。

行ったのなら、よかった。行っていないなら、今すぐ行け。

私は今、少し遠いところにいる。仕事だ。詳細は書かない。

一つだけ伝える。

先日、通りがかりの宿で、偶然、面白い人物に出会った。

名前は言わない。ただ、こういう人物だった。

食事を一人でしていた。周りが賑やかな中で、一人で静かに食べていた。私が隣に座ると、少し驚いた顔をした。

「一人ですか」と私が聞いた。

「そうだ」とその人物は言った。

「ならば二人で食べよう」と私が言った。

その人物はしばらく私を見た。

それから「分かった」と言った。

二人で食事をした。

あまり喋らなかった。でも、悪くなかった。

別れ際、その人物が言った。

「あなたは、なぜ見知らぬ人間に声をかけるのか」

私は少し考えた。

「一人で食べている人間を見ると、隣に座りたくなるからだ」と答えた。

その人物はしばらく黙っていた。

それから「そうか」と言った。

それだけだった。

お前に似た人物だと思った。

昔のお前に、少し似ていた。

オッホン。

カイル

追伸 夏のヴァイス村を、私はまだ見ていない。秋に行く。


マティアスは手紙を読み終えた。

もう一度読んだ。

「昔のお前に少し似ていた」という一行のところで、少し止まった。

それから、エルザに手紙を渡した。

エルザが読んだ。

読みながら、少し顔が変わった。

読み終えて、手紙を返した。

「カイルさん」とエルザは言った。

「なんだ」

「孤独じゃないわよ、やっぱり」

「そうか」

「隣に座れる人は、孤独じゃない」

マティアスは少し考えた。

「来られる場所がある人は、少し違うと言っていたな」

「そうよ」

「隣に座れる人も、少し違うかもしれない」

エルザは笑った。

「そうね」

「カイルのことだ。その人物に手紙を送っているかもしれない」

「送ってそう」

「封蝋は鷹だ」

「その人、驚くわね、鷹の封蝋が届いたら」

「そうかもしれない」

エルザはしばらく手紙を見ていた。

それから、言った。

「カイルさんにも、引き出しができるといいな」

マティアスは少し間を置いた。

「できるかもしれない」

「できてほしい」

「そうだな」

エルザはまた笑った。

夏の夜の、温かい笑い方だった。


その夜遅く、マティアスはカイルへの返事を書いた。


カイル

来た。夏に来た。

宿の話を読んだ。エルザにも見せた。

お前が隣に座れる人間だということを、改めて知った。

昔のお前に似ていたと書いてくれた。

ならば、その人物もいつか、正しい方向に歩けるようになるかもしれない。

羅針盤を正しく読めるようになるかもしれない。

お前が隣にいれば。

マティアス

追伸 秋に来い。フワンの畑が実る頃だ。カボチャが何個になるか、一緒に見よう。


書き終えた。

封をした。

行商人に渡した。

縁側に戻った。

エルザがまだいた。

星を見ていた。

マティアスも隣に座った。

しばらく、二人で星を見た。

虫の声が続いていた。

「ねえ」とエルザが言った。

「なんだ」

「まだ言えてない言葉、あるの」

「ある」

「今夜は?」

マティアスは少し考えた。

「今夜は」

「うん」

「一つだけ言える気がする」

エルザは星を見たまま、少し手を動かした。

マティアスの手の隣に。

「言って」

マティアスは星を見た。

夏の星が、たくさん出ていた。

「来年も、再来年も、その次も——ここに来る」

エルザは何も言わなかった。

しばらく星を見ていた。

それから、手を重ねた。

「知ってる」と、エルザは言った。

「そうか」

「でも言ってくれてよかった」

「そうか」

「うん」

虫の声が続いていた。

夏の夜が、深くなっていた。

鎧は、今夜も着ていた。

ただ——今夜の隙間からは、夏の夜の温かい空気が、静かに満ちていた。

言えなかった言葉が、また一つ言えた夜だった。

引き出しの中に、まだ言葉があった。

でも焦らなくていい。

秋に、カイルが来る。

冬に、また来る。

来年の春に、また来る。

言える日が、毎回来る。

それで十分だった。

星が、夏の夜空に満ちていた。

名前を知らない花の香りは、夏の夜には少し薄かった。

でも確かに、どこかにあった。

悪くなかった。

つづく


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