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マティアス・クロイツァーその人。  作者: Kentarou Theater
第二章 古い友人は、だいたい最悪のタイミングで現れる

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第六話「春の前と、我慢できなかった男と、冬のヴァイス村」


春になる前に、マティアスは動いた。

二月だった。

雪はまだ残っていた。道は悪かった。迂回路は泥と氷が混じっていた。

それでも動いた。

上官室のドアを叩いた。

「入れ」

入った。

上官はマティアスを見た。

窓の外の雪を見た。

マティアスを見た。

「……東か」

「そうだ」

「今か」

「そうだ」

「雪道だぞ」

「知っている」

上官はしばらくマティアスを見た。それから、深くため息をついた。今まで聞いた中で一番深いため息だった。

「何日だ」

「十日」

「前回と同じか」

「そうだ」

「春になってから行けばいいだろう」

「待てない」

上官が少し止まった。

マティアスが「待てない」と言ったのを、おそらく初めて聞いた顔だった。

「……待てないのか」

「そうだ」

上官はしばらく何も言わなかった。

それから書類に何かを書いた。

「十日だ。それ以上は認めない」

「分かった」

「気をつけろ。雪道で馬を飛ばすな」

「善処する」

「お前が善処すると言う時は——」

「今回はする」とマティアスは言った。

上官は少し笑った。

「行ってこい」


雪道は悪かった。

カイルから聞いた冬の迂回路は、春の迂回路より三時間余計にかかった。泥が凍っていて、馬の足が何度か取られた。

それでも、三日と半日でヴァイス村に着いた。

村に入る手前で、マティアスは少し止まった。

冬のヴァイス村を、初めて見た。

雪が積もっていた。

屋根が白かった。

小川が薄く凍っていた。

音が、吸い込まれるように静かだった。

エルザが言っていた通りだった。

雪が積もると、村が静かになるから。

マティアスはしばらくその景色を見た。

それから村に入った。

最初に気づいたのは、またルドルフだった。

雪の中を駆けてきた。

「ああ」とマティアスは言った。

ルドルフは尻尾を振った。雪を蹴散らしながら振った。

それからまた走り出した。

村の中へ向かって、全速力で。


エルザは台所にいた。

何かを煮ていた。

湯気が窓から漏れていた。

マティアスが戸口に立った時、エルザはまだ気づいていなかった。

鍋をかき混ぜながら、小さく何かを歌っていた。

声は聞こえなかった。口だけが動いていた。

マティアスはそれを、少し見ていた。

見てはいけないものを見ているような気もしたが、動けなかった。

ルドルフが吠えた。

エルザが振り返った。

目が丸くなった。

「……マティアス」

六度目だった。

「ああ」

「なんで」

「来た」

「春じゃない」

「そうだ」

「雪道を来たの」

「そうだ」

エルザはしばらくマティアスを見た。

それから、鍋のことを完全に忘れた顔で、戸口まで歩いてきた。

マティアスの顔を見た。

頬が風で赤くなっていた。外套に雪が残っていた。

「……待てなかったの」

「そうだ」

エルザは少し黙った。

それから笑った。

泣きながら笑った。

声を出して笑った。

「バカじゃないの」

「そうかもしれない」

「雪道を三日も」

「三日と半日だ」

「もっとバカじゃないの」

「そうかもしれない」

エルザはまた笑った。笑いながら、目の端を拭いた。

マティアスは外套の雪を払った。

「シチューを煮ていたのか」

「そうよ」

「旨そうな匂いがした」

「入って」とエルザは言った。

「ああ」とマティアスは言った。


フワンは畑にいた。

雪の中で何かをしていた。

マティアスが近づくと、振り返った。

目が丸くなった。

「……マティアスさん」

「ああ」

「春じゃないですよ」

「そうだな」

「雪道を来たんですか」

「そうだ」

フワンはしばらくマティアスを見た。

それから、にやにやした。

「待てなかったんですね」

「……そういうことになるかもしれない」

「なりますよ、絶対に」

「畑で何をしていた」

「雪の下に何かあるか確認してました」

「何かあったか」

「土でした」

「そうか」

「当たり前なんですけど、なんか確認したくて」

マティアスは少し考えた。

「春になれば分かることを、待てずに確認しに来る気持ちは、分かる」

フワンはにやにやをやめた。

それから、また盛大ににやにやした。

「今の、エルザのこと言ってますよね」

「土のことを言っている」

「絶対違いますよ」

「畑に戻れ」

「もう確認しましたから戻りません」

マティアスは返事をしなかった。

フワンが隣に並んで歩き始めた。

「マティアスさん」

「なんだ」

「来てくれて、よかったです。エルザ、最近ちょっと元気がなかったから」

マティアスは少し止まった。

「元気がなかったのか」

「手紙では書かなかったと思いますけど」

「……そうか」

「冬って、長いんですよ、この村。雪が降ると外に出られなくて、花も咲かなくて。エルザ、そういう時に少し寂しそうになるんです」

マティアスは村を見た。

白い屋根が続いていた。

静かだった。

美しかったが、確かに、長い冬だった。

「知らなかった」

「エルザ、心配かけたくないから書かないんですよ」とフワンは言った。「でも来てくれたじゃないですか、マティアスさん」

「手紙で分かったわけではない」

「でも来た」

「……そうだな」

フワンはにやにやした。

「今回は、誰かに歩幅を合わせてもらわずに済みましたね」

マティアスはフワンを見た。

「誰から聞いた」

「カイルさんです」

「あの男は喋りすぎる」

「好きですよ、カイルさん」とフワンは言った。「でもマティアスさんの方が好きです」

マティアスは返事をしなかった。

しなかったが——右手が、フワンの頭の上に、一瞬だけ置かれた。

それだけだった。

フワンは何も言わなかった。

ただ、にやにやが少し違う種類になった。


その夜、エルザが作ったシチューを食べた。

温かかった。

今まで食べた中で、一番旨かった。

「冬のシチューの方が旨いかもしれない」とマティアスは言った。

「なんで」

「寒い分、温かさが増す」

エルザが笑った。

フワンがにやにやした。

犬が九匹、部屋の中をうろうろした。

「ねえ、マティアス」

「なんだ」

「待てなかったって、さっき言ったわね」

「そうだ」

「なんで」

マティアスは少し考えた。

「冬の村を見たかった」

「それだけ?」

「……それだけではない」

「じゃあ、他には」

「フワンが言っていた。春になれば分かることを、待てずに確認しに来ることがある、と」

フワンが「俺そんな感じのこと言いましたっけ」という顔をした。

エルザはマティアスを見た。

まっすぐに、見た。

「確認できた?」

マティアスは少し間を置いた。

「できた」

「何が分かったの」

「冬の村は、静かで、美しかった」

エルザは少し黙った。

「それだけ?」

「……それだけではない」

「だから、他には」

マティアスは窓の外を見た。

雪の夜だった。

音が吸い込まれるように静かだった。

「元気がなかったと、フワンが言っていた」

エルザがフワンを見た。フワンは急に天井を見始めた。

「……手紙には書かなかった」

「分かっている」

「心配かけたくなかったから」

「分かっている」

エルザは少し黙った。

「……来てくれたのね」

「そうだ」

「雪道を三日と半日かけて」

「そうだ」

エルザはしばらく何も言わなかった。

テーブルの上に手を置いた。

マティアスの手の隣に。

マティアスは自分の手を、少しだけ動かした。

触れた。

「バカね」とエルザは小さく言った。

「そうかもしれない」

「でも」

「なんだ」

「来てくれて、よかった」

マティアスは返事をしなかった。

しなかったが——今夜だけは、返事の代わりに、少し強く手を握った。

エルザは何も言わなかった。

握り返した。

フワンが席を立った。

「犬の様子を見てきます」

誰も止めなかった。

フワンは出ていった。

犬が三匹、後をついていった。

残った六匹は、何事もなかったように部屋の中をうろうろし続けた。

窓の外では、雪が降っていた。

静かな冬の夜だった。

鎧は、今夜も着ていた。

ただ——今夜だけは、その重さを感じる必要が、なかった。

春まで、まだ少しあった。

でも、もう来ていた。


翌朝、マティアスはカイルへの手紙を書いた。


カイル

来た。二月に来た。

雪道だった。三日と半日かかった。

冬の村は、お前が言っていた通りだった。

待てなかった。それだけだ。

マティアス

追伸 今回は、途中で引き返さなかった。


三日後、返事が来た。

手紙ではなかった。

カイルが来た。

予告なしで。

「オッホン」

「予告しろと言った」

「善処すると言った」

「お前が善処すると言う時は——」

「今回はしなかった」とカイルは言った。「反省している」

「していないだろう」

「していない」

マティアスはカイルを見た。

カイルは満足そうな顔をしていた。

「で、どうだった」

「何がだ」

「冬のヴァイス村は」

マティアスは少し間を置いた。

「静かで、美しかった」

「それだけか」

「……それだけではない」

カイルは口の端を上げた。

「オッホン」

「何が言いたい」

「何も」

「また二回鳴いた」

「気のせいだ」とカイルは言った。

そして椅子を引いて、誰に断るでもなく座った。

「紅茶を頼む」

「自分で淹れろ」

「冬道を来た友人に紅茶も出さないのか」

「来るとは言っていなかった」

「来た」

マティアスはしばらくカイルを見た。

それから、立ち上がった。

紅茶を淹れた。

二人分。

カイルは受け取った。

一口飲んだ。

「旨い」

「そうか」

「お前、紅茶を淹れるのが上手くなった」

「そんなことはない」

「ある」とカイルは言った。「前より、丁寧に淹れている」

マティアスは返事をしなかった。

窓の外では、雪が降っていた。

二人は黙って、紅茶を飲んだ。

それだけで、十分だった。

十五年来、変わらない時間だった。

鎧の隙間から、湯気が通り抜けた。

温かかった。


つづく


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