第三話「秋と、カイルと、余計な一言がまた増えた」
秋になった。
予想通り、三通来た。
エルザから、フワンから、カイルから。
マティアスは順番に開けた。順番は、エルザ、フワンの順で開けて、カイルのは最後にした。理由は特にない。強いて言えば、カイルの手紙は読む前に心の準備が必要だった。
エルザの手紙から開けた。
マティアス
秋になった。白い花が散った。来年の春まで、また待つわね。
フワンの畑が少し実った。かぼちゃが三つ。フワン、泣いて喜んでた。犬が一匹かぼちゃを転がして遊んでいた。フワンはかぼちゃを取り返しながらまた泣いてた。
ねえ、マティアス。
カイルさんが来た時、一つ気になったことがあって。
カイルさんって、あなたのことをよく知ってるのね。話してる時に、ふとそう思った。「マティアスは昔からそういう男だ」って、何度か言ってたから。
昔のあなたって、どんな人だったの。
またね。
エルザ
マティアスは手紙を読み終えた。
「昔のあなたって、どんな人だったの」という一文を、もう一度読んだ。
それからフワンの手紙を開けた。
マティアスさんへ
かぼちゃが実りました。三つです。カイルさんが「立派なかぼちゃだ、オッホン」と言ってたので本物だと思います。
一つ聞いていいですか。
カイルさんって、マティアスさんの親友ですか。
カイルさんが帰る時、エルザに「あの男をよろしく頼む」と言ってたのを聞きました。カイルさんは気づいてなかったみたいだけど、私は聞こえてました。
なんか、カイルさんって、ぶっきらぼうだけど、本当はすごく心配してるんだなって思いました。
フワン
追伸 ミミがまた太りました。原因不明です。
マティアスは手紙を読み終えた。
「親友ですか」という一文のところで、少し止まった。
それからカイルの手紙を開けた。
鷹の封蝋だった。今回の鷹は、前より少し凛々しく描いてあった。
マティアス
秋だ。こちらは何事もない。
ヴァイス村の報告をしよう。
エルザ・ヴァイスは良い人間だ。前回も言ったが、改めて言う。目が良い。人を見る目が、ごまかしを通さない種類の目だ。お前のことを見る時の目は、特にそうだった。
フワンという少年は、やはり将来大物になる。確信に変わった。
犬は九匹全員元気だった。ルドルフが私の足元に来た。良い犬だ。
一つだけ言っておく。
お前は年に一度しか行かないと言った。それは少ない。私の見解では、年に三度は行くべきだ。春、夏、秋。冬は道が悪い。それでも少ないと思うが、まず三度から始めろ。
オッホン。
カイル
追伸 エルザに昔のお前の話を少ししてしまった。怒るなら怒れ。事実しか言っていない。
マティアスは手紙を読み終えた。
「事実しか言っていない」という一行のところで、しばらく止まった。
それから便箋を三枚取り出した。
エルザへの返事を書いた。
エルザ
かぼちゃが実ったとのこと。フワンによく伝えてくれ。
昔の私について聞いてくれた。
答えるのが難しい。カイルの方が詳しいかもしれない。ただ、カイルの言うことを全部信じると怪我をする。半分くらいにしておいてくれ。
一つだけ言える。昔も今も、鎧を着ていた。ただ、今の方が、隙間が多い。
それはお前のおかげだ。
マティアス
フワンへの返事を書いた。
フワンへ
かぼちゃ、おめでとう。
カイルについて聞いてくれた。
親友かどうか、自分ではよく分からない。ただ、十五年間、ずっとそこにいる人間だ。それがどういう意味かは、お前が大人になれば分かると思う。
畑に網を張ることを勧めた時、お前が実践してくれたことを、私はまだ覚えている。
マティアス
追伸 ミミが太り続けているなら、食事の量を確認してくれ。誰かが余分に与えているかもしれない。
それからカイルへの返事を書いた。
カイル
怒っていない。
ただし、何を話したか教えろ。
年に三度という提案については、検討する。
マティアス
追伸 お前が「良い人間だ」と言う時は、本当にそうだということは、十五年で学んだ。
三通書き終えた。
封をした。
引き出しを開けた。
秋の手紙が三通、加わった。
引き出しの中が、また重くなった。
鷹の封蝋と犬の封蝋と、フワンの手紙が並んでいた。
マティアスはそれをしばらく見た。
窓の外では、秋の空が広がっていた。
来年の春、三度目の訪問になる。
カイルの言う通り、年に三度は多くない気もしてきていた。
そのことを、認めるつもりはまだなかった。
ただ、引き出しを閉める前に、もう一度だけ中を見た。
重かった。
悪くなかった。
その頃、ヴァイス村では。
エルザがマティアスへの返事を書きながら、フワンに聞いた。
「ねえ、カイルさんって、どんな話をしてたの。男の話って言ってたじゃない」
フワンは少し考えた。
「秘密です」
「フワン」
「男の話は男の話です」
「何それ」
フワンはにやにやした。
「マティアスさんが、士官学校の時に一度だけ盛大に道に迷った話とか」
「え、聞きたい」
「秘密です」
「フワン」
「でも」とフワンは言った。「カイルさんが最後に言ってたのは——マティアスさんは昔から人に頼ることが苦手で、全部一人で抱えようとする男だったって」
エルザは少し黙った。
「そうね」と彼女は言った。
「でもエルザの前では少し違うって、カイルさん言ってた」
「どう違うって」
「引き出しに手紙を入れるようになった、って」
エルザはしばらく何も言わなかった。
それから、手紙を書く手を再開した。
口の端が、少し上がっていた。
窓の外で、秋風が吹いていた。
白い花の散った後の、静かな秋だった。
つづく




