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マティアス・クロイツァーその人。  作者: Kentarou Theater
第二章 古い友人は、だいたい最悪のタイミングで現れる

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20/50

第二話「シュトラール卿、ヴァイス村に現れる」


手紙が届いたのは、マティアスがカイルの訪問から十日後のことだった。

差出人はカイル・フォン・シュトラールだった。

封蝋は鷹だった。翼を広げた、細部まで彫り込まれた鷹だった。エルザの犬とは、格が違った。

マティアスは封を開けた。

筆跡は流麗だった。一文字一文字が、書道の手本のように整っていた。

読んだ。


マティアス

先日の訪問の折、失礼があったとすれば詫びよう。なかったとすれば、詫びない。

ヴァイス村への訪問を検討している。お前が年に一度しか行かないというのは、友人として見過ごせない怠慢だと判断した。

犬九匹については、了解した。

カイル・フォン・シュトラール

追伸 穴の話は、しばらく笑いが止まらなかった。記録に留めておく。


マティアスは手紙を読み終えた。

もう一度読んだ。

それから便箋を取り出した。


カイル

行くな。

マティアス


三日後、返事が来た。


マティアス

行く。

カイル

追伸 お前の制止を振り切るのは、士官学校以来の恒例だ。今更やめる理由がない。


マティアスは返事を書かなかった。

書く意味がなかった。

カイルが行くと言ったら行く。それは十五年来の事実だった。

マティアスはエルザへの手紙を書いた。


エルザ

近いうちに、厄介な人物がそちらへ向かうかもしれない。

名前はカイル・フォン・シュトラール。私の古い友人だ。

背が高く、赤い服を着ていて、「オッホン」と言う。

関わらない方がいい。ただし、関わらずにいられないかもしれない。その場合は、適当にあしらってくれ。

あとフワンには、犬を全員別の部屋に隔離しておくよう伝えてくれ。

マティアス


エルザからの返事は、一週間後だった。


マティアス

来た。

「オッホン」と言う人が来た。

赤い服だった。

馬から降りる時の姿が、絵本の王子様みたいだった。フワンが「すごい」と言って三回くらい同じ場所をぐるぐる歩いた。犬は隔離できなかった。九匹全員で出迎えた。カイルさんは一匹一匹に挨拶した。「オッホン、よく肥えている」とルドルフに言った。ルドルフは尻尾を振った。

それからカイルさんは私に言った。「エルザ・ヴァイスとお見受けする。マティアスの話は聞いている」と。

私は「どんな話ですか」と聞いた。

カイルさんは「穴の話だ」と言った。

なんで最初に穴の話をするの。

またね。

エルザ

追伸 カイルさん、シチューを三杯食べた。褒め方が大袈裟すぎてコック長みたいだった。


マティアスは手紙を読み終えた。

もう一度読んだ。

「穴の話だ」という一行のところで、少し止まった。

便箋を取り出した。


エルザ

迷惑をかけた。詫びる。

穴の話は流してくれ。

マティアス

追伸 カイルが三杯食べたとのこと。あの男は食に関してだけは正直だ。シチューが旨かったということだ。


返事は四日後だった。


マティアス

迷惑じゃなかったわよ。

カイルさん、面白い人ね。全然迷惑じゃなかった。

二日いた。

一日目の夜、カイルさんとフワンが二時間話してた。何の話か聞いたら「男の話だ」とフワンが言った。フワンが「男の話」をする年になったのかと思ったら、少し変な気持ちになった。

二日目の朝、カイルさんが村を散歩していた。一人で。白い花の前で立ち止まって、しばらく見ていた。

私が「知ってますか、この花」と聞いたら、「知らない」と言った。

「毎年咲くんです」と言ったら、「そうか」と言った。

それだけだったけど、なんか、あなたみたいだなと思った。

またね。

エルザ

追伸 帰り際、カイルさんが言った。「マティアスのことを、よろしく頼む」と。「オッホン」と言ってから言った。なんで「オッホン」を前につけるの。


マティアスは手紙を読み終えた。

三回読んだ。

「あなたみたいだなと思った」という一文のところで、少し長く止まった。

それから、窓の外を見た。

夏の終わりが近かった。空の青が、少しだけ深くなっていた。

引き出しを開けた。

手紙が増えていた。

カイルからの手紙も、今や引き出しの中にあった。

鷹の封蝋と、犬の封蝋が、同じ引き出しの中に並んでいた。

マティアスはそれを少し見た。

それから便箋を取り出した。

二通書いた。

一通はエルザへ。

もう一通は——


カイル

余計なことをした。

だが、詫びない。

マティアス


三日後、返事が来た。


マティアス

正しい判断だ。

彼女は良い人間だ。犬に懐かれていた。

オッホン。

カイル

追伸 フワンという少年は将来大物になる。断言する。根拠は私の目だ。


マティアスは手紙を読んだ。

「犬に懐かれていた」という一文のところで、少し止まった。

それから、ごく小さく、口の端が上がった。

カイルが正しいことを言う時は、だいたい腹が立つ。

それは十五年来、変わらなかった。

引き出しを閉めた。

窓の外では、夏の空が続いていた。

秋になったら、また手紙が来るだろう。

エルザから。フワンから。

そして、おそらくカイルからも。

鎧は、今日も着ていた。

ただ——引き出しの中が、また少し、重くなっていた。

悪くなかった。


つづく


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