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マティアス・クロイツァーその人。  作者: Kentarou Theater
第二章 古い友人は、だいたい最悪のタイミングで現れる

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第一話「カイル・フォン・シュトラール現る」


春から夏になった。

マティアスの引き出しには、手紙が三通あった。エルザからが二通、フワンからが一通。フワンの手紙には「ミミがまた太った」と書いてあった。理由は不明だとも書いてあった。

マティアスは報告書を書いていた。

ドアが叩かれた。

「入れ」

入ってきたのは、部下ではなかった。

背が高かった。肩幅が広かった。軍服の襟元が、この暑さの中でも一分の乱れもなかった。そして何より——見るからに面倒くさそうな顔をした男だった。いや、正確には、面倒くさいのはこちらの方であって、その男自身は至極満足そうな顔をしていた。

男は部屋に入るなり、大きく息を吸い込んだ。

「オッホン」

マティアスはペンを止めた。

止めたが、顔は上げなかった。

「……カイル」

「久しいな、マティアス」

カイル・フォン・シュトラール。階級は中佐。マティアスとは士官学校時代からの知己であり、おそらくこの世界で最も厄介な部類の人間だった。

カイルは部屋を見回した。整頓された机。窓の外の夏空。そして引き出し。

引き出しを見た。

少し長く見た。

「オッホン」

「何が言いたい」

「何も」

「二回鳴いた」

「気のせいだ」

マティアスはペンを置いた。ようやく顔を上げた。カイルは椅子を引いて、誰に断るでもなく腰を下ろした。足を組んだ。袖を直した。その一連の動作が、舞台の上の俳優のように様になっていた。

「用件を言え」

「用件」とカイルは繰り返した。「友人の顔を見に来るのに、用件が必要か」

「お前が用件なしに人を訪ねたことは一度もない」

「それは偏見だ」

「事実だ」

カイルはしばらくマティアスを見た。それから、口の端を上げた。

「お前、少し変わったな」

マティアスは返事をしなかった。

「目が、前より柔らかい」

「そんなことはない」

「ある。私の目は確かだ」

「お前の目は余計なものを見すぎる」

「それが私の美点だ」とカイルは言った。まるで褒め言葉を受け取るように。「それで——」

カイルは引き出しを顎でしゃくった。

「誰だ」

マティアスは少し間を置いた。

「何の話だ」

「引き出しの中に手紙がある。お前が引き出しを持つようになったのは、いつからだ」

「引き出しは昔からある」

「中身が入るようになったのは、いつからだ」

マティアスはカイルを見た。カイルは澄ました顔で返した。

長い沈黙だった。

窓の外で、夏の風が木の葉を揺らした。

「……エルザという」

カイルは動かなかった。

動かなかったが——目が、わずかに輝いた。

「エルザ」

「そうだ」

「どこの」

「王国の東、ヴァイス村という小さな村だ」

「どうやって知り合った」

マティアスは少し間を置いた。

「……穴に落ちた」

カイルが固まった。

「……穴」

「そうだ」

「お前が」

「そうだ」

カイルはしばらく黙った。それから、ゆっくりと、腹の底から笑い始めた。声を上げて笑った。士官学校以来、マティアスが一度も見たことのない種類の笑い方で笑った。

「オッホン、オッホン——失礼、しかし——お前が——穴に——」

「笑うな」

「笑わずにいられるか——お前が穴に落ちて——敵国で——」

「笑うな」

カイルは笑い続けた。一分ほど笑い続けた。

やがて落ち着いて、目の端を拭いた。

「……それで、今はどういう状況だ」

「手紙のやり取りをしている。年に一度、会いに行く」

「年に一度」

「そうだ」

「それだけか」

「それだけだ」

カイルはしばらくマティアスを見た。それから、深くため息をついた。芝居がかったため息だった。

「マティアス」

「なんだ」

「お前は本当に、昔から」

「なんだ」

「鎧が厚すぎる」

マティアスは返事をしなかった。

カイルは立ち上がった。窓の外を見た。夏の空が広がっていた。

「私が行こうか」

「どこへ」

「ヴァイス村とやらに」

「なぜお前が行く」

「様子を見てくる。エルザという人物が、本当にお前の引き出しを埋めるに値する人間かどうか」

「余計なことをするな」

「余計ではない。友人の幸福を確認するのは、友人の義務だ」

「そんな義務はない」

「ある」とカイルは言った。「私が今決めた」

マティアスはカイルを見た。

カイルは満足そうな顔をしていた。

「……行くな」

「行く」

「命令だ」

「私はお前の部下ではない」

「そうだったな」

カイルは踵を返した。ドアに向かった。

「オッホン。では近いうちに」

「待て」

カイルが振り返った。

マティアスは少し間を置いた。

「……フワンという弟がいる。犬が九匹いる」

カイルは目を細めた。

「それは警告か」

「情報だ」

「犬が九匹」

「懐かれると面倒だ。覚悟しておけ」

カイルはしばらくマティアスを見た。

それから、また口の端を上げた。

「お前、本当に変わったな」

「そんなことはない」

「ある」

ドアが閉まった。

廊下に、足音が遠ざかった。

マティアスはしばらく、閉まったドアを見ていた。

それから引き出しを開けた。

手紙が三通あった。

四通目が、近いうちに来るかもしれなかった。

カイルからの手紙が。

それは——少し、面倒だと思った。

少しだけ、だが。

つづく

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