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マティアス・クロイツァーその人。  作者: Kentarou Tou
第十六章 エルザと、フワンと、なかった妹

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第三話「血の繋がらない、二つの家族」


「それなら」とマティアスは言った。「エルザとイレーネの間には、血の繋がりがないということだ」

「そうなる」

「私の母とイレーネが、同一人物かどうかは、まだ分からない」

「分からない」とカイルは言った。「だが、もし同一人物だったとしても」


マティアスは、カイルを見た。

「お前とエルザは、血が繋がらない」とカイルは言った。「エルザは、そのイレーネの実の娘ではないのだから」


風が吹いた。

夕日が、少しずつ沈んでいった。

橙色が、赤に変わりつつあった。


マティアスは、しばらく、何も言わなかった。

それから、ごく小さく、息を吐いた。

安堵という言葉が、その息に、一番近かった。


「カイル」

「なんだ」

「エルザに、話すべきか。母親の話が、作り話だったと」

カイルは、少し考えた。

「難しい問いだ」とカイルは言った。「本当のことを知ることが、必ずしも、その人を救うとは限らない」

「そうか」

「エルザは、十九年間、いないはずの妹を探しながら、生きてきた」とカイルは言った。「その時間の全部が、無意味だったとは、私は思わない」


マティアスは、押し花を見た。

白くて、小さな花だった。

名前を知らない花だった。


「話す」とマティアスは言った。

「そうか」

「エルザには、知る権利がある。作り話でも、真実でも、それを決めるのは、エルザ自身だ」

カイルは、しばらくマティアスを見ていた。

それから、静かに笑った。

「それは、正しい判断だ」

「お前の許可を求めてはいない」

「求めていないことは、分かっている」とカイルは言った。「ただ、賛成しているだけだ」


夕日が、沈みきった。

星が、一つ、また一つと、出始めていた。


「オッホン」

「何が言いたい」

「何も」とカイルは言った。「今度こそ、本当に何も」


つづく


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