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マティアス・クロイツァーその人。  作者: Kentarou Tou
第十六章 エルザと、フワンと、なかった妹

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第二話「ヴァイス村への道」


マティアスは、手紙を、しばらく見ていた。

「亡くなった、もう片方の子供」という一文を、二度読んだ。

「これは」とマティアスは言った。「エルザの村の話か」


カイルは、頷いた。

「東の村。双子。片方が連れ去られ、もう片方が亡くなった」

「エルザの母親が、五歳のエルザに語った話と、似ている」

「似ているのではない」とカイルは言った。「同じ話だ。ただし——語られた側から見た話と、外から見た話とでは、内容が違う」


マティアスは、しばらく黙っていた。

「つまり」

「つまり」とカイルは言った。「エルザの母イレーネが産んだ本当の双子は、二人とも、エルザが五歳になる前に、失われている」

「では、エルザは」


カイルは、手紙をもう一度指さした。

「拾われた子供だ」とカイルは言った。「イレーネの実の子ではない」


マティアスは、動かなかった。

窓の外で、夕方の風が吹いていた。


「なぜ、イレーネは、エルザに『妹がいた』と話したんだ」とマティアスは言った。

カイルは、少し考えた。

「本当のことを、そのまま話せなかったんだろう」とカイルは言った。「お前は拾われた子だ、実の親も、実の兄弟もいない、とは、五歳の子供には言えない」

「だから」

「だから、自分の失った双子の記憶を、エルザに重ねて語った。『あなたには、妹がいた』と。エルザに、一人ではないという何かを、持たせたかったんだろう」


マティアスは、窓の外を見た。

夕日が、複雑な色になり始めていた。

「エルザは、それを、ずっと本当のことだと思って、生きてきた」

「そうだ」

「妹を、探しながら」

「そうだ」


つづく


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