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マティアス・クロイツァーその人。  作者: Kentarou Tou
第十六章 エルザと、フワンと、なかった妹

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第一話「グレーテの手紙」


カイルの父が亡くなったのは、それから半年後のことだった。

遺品の整理は、カイルが一人で行った。

書斎の、あの小箱の奥に、もう一枚、紙が入っていた。

今度は、父の字ではなかった。

古い、丸みのある字だった。


カイルは、それをマティアスに見せた。

「乳母のグレーテという女性を、覚えているか」

「覚えている」とマティアスは言った。「私を育てた人だ」

「彼女が、お前の伯爵に宛てて書いた手紙の写しが、父の手元にあった。なぜ父が持っていたのかは、分からない。ただ、内容が——」

カイルは、言葉を切った。

「読んだ方が早い」


マティアスは、手紙を受け取った。

読んだ。


伯爵様へ

お聞きいただきたいことがございます。

マティアス様の母君について、風の噂で耳にしたことがございます。

東の村で、女が一人、赤子を拾ったという話です。

その女は、以前、双子を持っていたが、片方は何者かに連れ去られ、もう片方も、その後、間もなく亡くなった、と申しておりました。

拾った赤子を、亡くなった方の子供の代わりとして育てている、とも。

真偽のほどは分かりません。

ただ、マティアス様の母君を探す上で、何かの手がかりになるかもしれず、お耳に入れておきます。

グレーテ


つづく


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