表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マティアス・クロイツァーその人。  作者: Kentarou Tou
第十五章 マティアスと、カイルと、カイルの父の独白

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
123/132

第四話「引き出しの中の、もう一つの手紙」


三日後、カイルはマティアスの部屋を訪ねた。

ノックをした。

「入れ」

入った。

マティアスは、机で報告書を書いていた。

顔を上げた。

「珍しいな。手紙も出さずに来るとは」


カイルは、椅子に座らなかった。

立ったまま、しばらくマティアスを見ていた。

「どうした」とマティアスは言った。「オッホンも言わずに」


カイルは、懐から、押し花を出した。

机の上に置いた。

マティアスは、それを見た。

表情が、止まった。


「これは」

「ヴァイス村の花だ」とカイルは言った。「見れば分かるだろう」

「なぜお前が持っている」

「私の父の書斎にあった」


マティアスは、押し花を見たまま、動かなかった。

「話がある」とカイルは言った。「長い話だ」

「聞こう」

「その前に、一つ聞いていいか」

「なんだ」

「お前は、母親の話を、伯爵からどこまで聞いている」


マティアスは、少し間を置いた。

「楯の国の元・妃殿下だと聞いた。それ以上は、聞いていない」

「双子だった、とは」

マティアスは、動かなかった。

「……なんだと」


カイルは、椅子を引いた。

今度は、座った。

「長い話だ、と言った」

「聞く」

「オッホン、という前置きは、今日は省く」

「省け」


カイルは、話し始めた。

父の書斎で見つけた押し花のこと。

若い頃の父が、山中の一軒家で出会った、名乗らない女のこと。

二つの揺り籠のこと。

片方を、父が引き取ったこと。


マティアスは、最後まで、何も言わなかった。

話が終わった後も、しばらく、黙っていた。

窓の外で、夕方の風が吹いていた。


「つまり」とマティアスは、ようやく言った。「お前が」

「そうだ」

「私の——」

「双子の片割れだ、ということになる」とカイルは言った。「証拠はない。ただ、状況が、そう示している」


マティアスは、押し花を見た。

白くて、小さな花だった。

名前を知らない花だった。

ヴァイス村の花と、同じ花だった。


「なぜ、今まで黙っていた」

「知ったのが、三日前だ」とカイルは言った。「黙っていたわけではない」


マティアスは、しばらく、窓の外を見ていた。

それから、ごく小さく、口を開いた。

「……道理で」

「何がだ」

「お前が、士官学校の頃から、理由もなく私の隣を歩いていたことに」

カイルは、少し笑った。

「私も、同じことを、三日前に思った」


つづく


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ