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マティアス・クロイツァーその人。  作者: Kentarou Tou
第十三章 リゼットと、白鷺の国王

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第二話「即答する理由」


謁見の間は、思ったより質素だった。

椅子も、装飾も、最低限だった。

玉座に座っていたのは、まだ若い男だった。

灰色がかった髪。表情は、ほとんど動かなかった。


「礎の国より参りました、リゼット・ハウゼンと申します」

「ヴィルヘルムだ」


それだけだった。

肩書きを名乗らなかった。

リゼットは少し驚いた。


「……陛下、と、お呼びしてもよろしいでしょうか」

「好きに呼べ」

「では、陛下と」


王は、机の上の書類に目を落としたまま言った。


「検問の緩和について、提案があると聞いた」

「はい」


リゼットは書類を差し出した。

王は受け取って、目を通した。

速かった。

一枚ごとに、数秒しかかけなかった。


「これで全部か」

「はい」

「分かった。受理する」


リゼットは、一瞬、止まった。


「……お考えになる時間は、必要ないのですか」

「必要ない」

「理由を伺っても」


王は、ペンを止めた。

珍しく、間が空いた。


「迷っている時間が、長く続いた時期があった」とヴィルヘルムは言った。「迷っている間に、決まってしまうことがある、と知った」

「決まってしまう、とは」

「人が死ぬ。立場が動く。取り返しのつかないことが、迷っている間に、勝手に進む」

「それで」

「だから、決められることは、すぐに決める。迷う価値のあるものだけ、迷う」


リゼットは、その答えに、少し驚いた。

即答の速さの裏に、これほど具体的な理由を持つ人間を、リゼットは知らなかった。

似ているようで、違う即答だった。


「失礼ながら」とリゼットは言った。「以前、似たように即答する方を、存じておりました。その方は、もう決まっていることを確認しているだけだ、とおっしゃいました」

「私とは違うな」

「ええ」とリゼットは言った。「陛下の即答は、決まっていることの確認ではなく——」

「先に決めなければ、間に合わないものへの、対処だ」

「そうですね」


リゼットは、その違いを、丁寧に胸の中にしまった。

似ているように見えて、根が違う人間を、見誤らないようにする癖が、リゼットにはあった。


つづく


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