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マティアス・クロイツァーその人。  作者: Kentarou Tou
第十三章 リゼットと、白鷺の国王

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第一話「使者の務め」


馬車が国境を越えたのは、雪が解け始めた頃だった。

リゼット・ハウゼンは、窓の外を見ていた。

楯の国の景色は、礎の国とは少し違った。家々の屋根が、急な勾配を持っていた。雪が多い土地だと、聞いていた。


「ハウゼン殿」と、対面に座る文官が言った。「国王陛下への目通りは、明日の朝の予定です」

「分かりました」

「緊張なさいませんか」

「任務ですので」


リゼットは短く答えた。

緊張という言葉は、もう長いこと、自分のものではなかった。


楯の国の王城に着いたのは、夕方だった。

案内された部屋は、簡素だったが、整っていた。

窓から見える庭には、雪がまだ残っていた。雪の下に、何かの芽が、わずかに頭を出していた。


その夜、リゼットは書類に目を通した。

今回の使者の務めは、国境の検問緩和についての交渉だった。

礎の国の文官として、ここに一人で送られた。

責任者として。

また、責任者として。


「いつも、最後に残るのは私だな」


誰にともなく、呟いた。

窓の外の雪が、月明かりに白く光っていた。


つづく


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