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『戦闘力5の三十路ギャンブラー、異世界で「命の代償」を強いる――最強の騎士も魔王も、俺の賭場からは逃げられない』  作者: 仁胡 黒


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第41話:不運の射線、三矢の虚実

霧の中から現れたのは、白亜の塔へと続く道を断つ最後の門番、ナンバー10・慎羅。

彼は弓を引く手を休め、古風な礼法とともに、欠けた視界を持つエイトへある「遊び」を提案します。

それは、身体能力でも魔力でもなく、ただ「言葉」と「気配」の裏を読み合う、博徒に相応しい心理博打でした。

「……失礼した。聖域の静寂を乱す不届き者かと思えば、その眼、その気配……ただの迷い人ではないようだな」


青年は静かに弓を戻すと、エイトを射抜いていた鋭い視線をわずかに和らげ、居住まいを正した。


「我が名は慎羅。フォルトゥーナ・ナンバー10。白亜の塔、その第一の門を守護する『静謐の射手』なり。……なるほど、貴殿がナンバー8であったか」


「……慎羅、か。随分と礼儀正しいお出ましだな。……そんなご立派なナンバー持ちが、俺みたいな博徒(クズ)に何の用だ?」


エイトは三奈の肩に体重を預けたまま、左目で相手の胸元に刻まれた『10』の数字を睨みつける。


「用があるのは、貴殿の『眼』だ。片方の視界を失い、均衡を欠いた貴殿が、果たして『真実』を射抜く力を持っているのか……。門を通したくば、我が提供する『遊戯』にてそれを示していただこう」


慎羅は懐から三本の銀色の矢を取り出し、それを扇のように広げて見せた。


「遊戯の名は『三矢の虚実スリー・アロー・ブラフ』。ルールは至って単純。我はこの霧の向こうにある十の的に向け、一本ずつ矢を放つ。我は着弾の後、自分が『何点の的に当てたか』を口にする」


「……それを、俺が『本当』か『嘘』か当てるってのか」


「然り。貴殿の右目の死角、そしてこの深い霧……視覚情報は無に等しい。頼れるのは我の声、呼吸、そして放たれる矢の風切り音のみ。……三本のうち二本を正解すれば、門を開こう」


エイトの頬を冷たい汗が伝う。片目では、慎羅が弓を構える角度さえ正確には測れない。情報の八割を遮断された、極限のブラフゲームだ。


「マスター。……不公平。データの収集が不可能。……あいつ、嘘を吐く時に眉一つ動かさないタイプ。私が代わりに、あいつの心拍数を物理的に停止させる?」


三奈が淡々と、しかし物騒な提案を耳元で囁く。


「あらぁ、三奈さん。そんなことをしたら、旦那様の『勝負』が汚れてしまいますよぉ? ……慎羅さん。もしイカサマをしたら、その綺麗な弓と一緒に、あなたの指を一本ずつお煎餅のように美味しく砕いて差し上げますからねぇ?」


樹がにこにことした笑顔のまま、背後にある巨大な岩に手をかける。パキッという乾いた音と共に岩に亀裂が入り、慎羅の頬がわずかに引き攣った。


「……三奈、樹、下がってろ。……こいつはリハビリには丁度いい」


エイトは不自由な体を引きずり、慎羅の正面に立った。


【天の声8】

[ 解析:対象の表情および音声パターンからの嘘発見確率は、霧による減衰を考慮すると48%……。直感に頼る比率が極めて高い数値です。 ]


(……上等だ。五分五分ハーフあれば、博打には十分すぎる)


「……いいぜ、慎羅。その勝負、乗った。……ただし、俺が勝ったらイチカのところまで最短距離で案内してもらうぞ」


「承知した。……では、第一射。……参る」


慎羅が静かに弓を引き絞る。

霧の向こう、見えない的を見据える彼の背中が、エイトの左目に巨大な壁となって立ちはだかった。

第41話、お読みいただきありがとうございました。


ナンバー10・慎羅しんらが登場し、エイトに心理博打を挑みます。

三奈の「物理的な排除」と、樹の「笑顔の脅迫」が入り混じる中、エイトは片目のハンデを抱えたまま、見えない矢の行方を読み解くことになります。


次回、第42話。

第一射の宣言は……。

慎羅の完璧なポーカーフェイスを前に、エイトの博徒としての嗅覚が火を吹きます。


どうぞお楽しみに。

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