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『戦闘力5の三十路ギャンブラー、異世界で「命の代償」を強いる――最強の騎士も魔王も、俺の賭場からは逃げられない』  作者: 仁胡 黒


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第35話:鉄錆の檻、十一番目の審判

鼠との死闘を終え、エイトが手に入れたのは「法典」の断片。

軍事区『鉄錆の監獄』。そこは自由を象徴するフォルトゥーナの中で唯一、絶対的な規律が支配する場所。

三奈と樹を突き放し、孤独な潜入を選んだエイトの前に、集団の意志を束ねる執行官バルトロが立ち塞がります。

エイトは「天の声8」と契約し、自らの精神をダイスに変えて、鉄の門を抉じ開けます。

モノレールを降りたエイトを待っていたのは、巨大な歯車が空を削り、蒸気が街を覆う「鉄錆の監獄」だった。

右目の視界を走るノイズは、鼓動が速まるたびにその領域を広げていく。


【天の声8】

[ 警告:『因果の法典』の権限行使準備完了。……これよりあなたの意思は、この領域における『ダイス』となります。……判定ジャッジのたびに、あなたの精神リソースを直接消費します。 ]


(……上等だ。三十さんじゅうの博徒に、今更「安全な道」なんて選択肢はねえよ)


エイトが検問所に足を踏み入れた瞬間、一糸乱れぬ動きで十数人の重装兵が銃口を向けた。

「11」の刻印を胸に宿した兵士たち。個人の感情を排し、一つの意志で動く集団兵器。


「不法侵入者。即時、処刑を開始する」


一斉に引き金に指がかかる。その刹那、エイトの脳内に「天の声8」の無機質な選択肢が突き刺さった。


【天の声8】

[ 判定発生ジャッジ・スタート:敵同時掃射。……回避策を選択してください。 ]

[ 選択 A:跳弾による自滅(難易度:極高。消費精神力:大) ]

[ 選択 B:弾薬の同時不良(難易度:高。消費精神力:中) ]


「……『A』だ。……ジャッジを回せ!」


エイトが叫ぶ。虚空に現れた黒いダイスが火花を散らして回転する。

エイトの鼻から一筋の血が垂れた。頭蓋の内側を直接火で炙られるような激痛。だが、エイトの瞳は冷徹にその結果を見つめていた。


「……ここだッ! クリティカルを引き当てろ!」


――ガチリ。


ダイスの目が『8』を刻む。

放たれた十数発の弾丸。本来ならエイトを蜂の巣にするはずの鉛の礫が、不自然な角度で空中の鉄パイプに跳ね返り、その全てが放った主たちの装甲の隙間へと吸い込まれた。


「ガ、アアッ!?」


跳弾によって自爆した兵士たちが折り重なって倒れる。

エイトは膝をつき、荒い息を吐いた。一回の雑魚戦で、視界がチカチカと明滅する。


「……フゥ、ハァ……。……毎回この痛みかよ、ったく、勘弁してくれ……」


【軍事区・中央広場】

広場へ辿り着いたエイトを待っていたのは、数千の兵士を背に従えた、巨漢の執行官だった。

身の丈ほどもある処刑斧を肩に担ぎ、冷徹な黄金の瞳でエイトを射抜く男。ナンバー11、バルトロ。


「……鼠の法典を無理やり書き換えたか。……だが、我が軍事区に『個』の奇跡は不要。……あるのは、確定した死の規律だけだ」


「……規律、ね。……その窮屈なルールに、一つだけ『遊び』を混ぜてやらねえか」


エイトはふらつく足取りで、バルトロの前に一枚のチップを投げ出した。

バルトロは斧を地面に突き立てた。地響きと共に、広場の石畳が凄まじい勢いで組み替わり、空高くそびえ立つ二本の「鉄の塔」へと変貌する。


「……いいだろう。貴様の寿命が尽きるのが先か、我が軍の規律が崩れるのが先か。……十一番目の審判――『これ』で決着をつけるとしよう」


広場の地面が、巨大なルーレット盤を兼ねた9×9のグリッドへと姿を変える。

兵士たちが駒となり、盤上を埋め尽くしていく。


【天の声8】

[ 解析:爆裂バースト陣取りビンゴと判明しました ]

[ こちらに不利なゲームです。撤退を推奨します]


「……心配ねえ。…バルトロ、アンタのその冷てえつら、絶望で書き換えてやる」


エイトの瞳に、極限状態の博徒だけが宿す漆黒の炎が灯った。

第35話、お読みいただきありがとうございました。


エイトの新能力「ジャッジ」を駆使して精神力を削りながら進む緊張感を描きました。


そしてナンバー11・バルトロとの決戦。

軍隊(集団)を配置してラインを作るバルトロに対し、エイトがどうやってその「規律ライン」を爆破し、足場を崩していくのか。


次回、第36話。

『爆裂・陣取りビンゴ』、開演。

エイトの「8」と、バルトロの「11」。

数の暴力に、エイトは相棒と立ち向かいます!


どうぞお楽しみに。

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