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『戦闘力5の三十路ギャンブラー、異世界で「命の代償」を強いる――最強の騎士も魔王も、俺の賭場からは逃げられない』  作者: 仁胡 黒


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第30話:博徒の呼吸、死神の五連葬

満身創痍の一行が辿り着いたのは、砂塵舞う荒野に突如現れる不夜城――博打都市『フォルトゥーナ』。

そこは、人々の運命を「投機」のチップとして磨り潰す、天界公認の巨大なゴミ捨て場でした。


第30話では、シリーズ最大級の勝負となる『統治権ドミネーション・ポーカー』が開幕します。

単なるカードの役作りではなく、盤面に具現化する軍勢を操り、相手の「統治権」を物理的に粉砕し合う、血と因果のギャンブル。


最弱の戦闘力を持つエイトが、いかにして天界の絶対的な「期待値」を裏切り、盤面を支配するのか。

そして、新ヒロイン・樹が加わった一行の、騒がしくも危うい道中にもご注目ください。

断崖の先に広がる博打都市『フォルトゥーナ』。そこは天界が「投機」という名の強欲を吸い上げるために用意した、巨大な因果のゴミ捨て場だ。


「……ようやく着いたか。ニカの野郎、とんでもねえ場所に席を用意してやがったな」


エイトは額の包帯をなじり、唾を吐き捨てた。隣では三奈が、いつきの腕を必死に剥がそうと躍起になっている。


「ちょっと! 離れなさいよ重戦車!マスターの腕がが折れるでしょ!」

「あらあら。エイトさんは私の旦那様になる方ですから。これは愛の重みですよぉ」


エイトは呆れ顔で、背中のイチカを背負い直した。彼女の中に眠る『1』と『13』の鼓動が、カジノのネオンに呼応するように速まっている。


地下カジノ『天蓋の底』。そこは血と金が混じり合った、腐った臭いのする特等席だった。


「……遅ぇんだよ、エイト。テメェの葬式に遅れる博徒がどこにいる」


ソファーで紫煙を吐き出すニカが、低く濁った声で笑った。裏社会の泥水を啜ってきた男の、獲物を射抜くような鋭い視線。


「ニカ。状況を教えろ」

「ハッ、相変わらず可愛げのねえ野郎だ。今夜の勝負は『統治権ドミネーション・ポーカー』。カードは軍勢の召喚触媒だ。勝てば嬢ちゃんの隠れ家。負ければテメェの魂はシステムの歯車に磨り潰される。……ゾクゾクするだろうが?」


エイトは無言で席に着いた。対面には黄金の仮面を被った天界の「審判官」。


『――天の差配のもと統治権・ポーカー、開戦してください――』


最初のドロー。手札は5枚。

エイトの手元には、役にも立たないバラバラの数字。対して審判官は、様子見とばかりに【スペードの10、J】をオープンした。卓上に、二人の「光の重装兵」が召喚され、剣先をエイトに向ける。


エイトはあえて手札を見ず、不敵に笑ってチップを積んだ。


「……レイズ。この街の『投機』ってやつを教えてやるよ」


「ほう……。そのクズ手札で、私にブラフを仕掛けると?」


審判官の背後の騎士が殺気を放つ。エイトは無表情のまま、一枚のカードを裏返して卓に叩きつけた。


「さあ?…どうだろうなあ?。この『伏せカード』が、テメェの軍勢を全滅させる罠だとしても……突っ込んでくるか?……まあ、ブラフかもしれねな?」


「……チッ」


【 心理解析……相手の困惑度40%。……ブラフの成立率は現在62%です。 】


審判官は、エイトの背負う『13(リボル)』の不吉な気配に一瞬だけ怯んだ。


…なんだ、あの自信は…、相当な手札が?……いや、ブラフだ。…だがこちらも手札は良くない。

「……ドロップだ。このターンは貴様に譲ろう」


審判官がカードを捨て、騎士が消える。

エイトは手元のクズ手札を伏せたまま、鼻で笑った。


「……ハッ。チキったな? あんた、終わりだぜ?」


「……テメェ、いい度胸してやがる」

ニカが面白そうに目を細める。


そして、勝負の最終ターン。

審判官の手元に、奇跡的な光が宿った。


「終わり?…その言葉そのままお返ししますよ?、野蛮人。――ダイヤの10、J、Q、K、A。ロイヤル・ストレート・フラッシュですよ! ハハハっ貴様の負けだ!!」


カジノ全体が揺れ、卓上に「天界の軍勢」が溢れ出した。まばゆい光の壁が、エイトたちを押し潰そうと迫る。完全無欠の勝利宣言。


「あらあら……これは少し、お行儀が悪いですねぇ」

樹が前に出ようとするが、エイトは血を吐きながら笑った。


「……この勝負に必要なのは『運』じゃねえ。……『因果』の強さが勝負を決めるんだよ!」


エイトは、手元に揃った【4枚の8】を晒した。

だが、それではロイヤル・ストレート・フラッシュには勝てない。


「4カードか。惜しかったな、だが私の軍勢には届か――」


「……まだだ。俺の『8』は、循環メビウスの数字だ。1枚ドローだっ!!!」


エイトが、左手でデックの束から強引に「ありえない一枚」を引き抜いた。

【 因果律の強制介入。……ジョーカーの生成を確認しました。 】


引き抜かれたのは、どのスートにも属さない、漆黒の道化師が描かれたカード。

【ジョーカー】。


「な、……52枚のデックに、ジョーカーなど入っているはずが――!」


「……天界(システム)には縛られねえ。俺のナンバーはただの8じゃねえんだよ!(インフィニティ)……それが、無限の可能性だ!」


エイトがジョーカーを叩きつける。

4枚の『8』と、1枚の『ジョーカー』。

ポーカーにおける絶対の禁手。


『――エラー。役:【因果不変の五連ファイブ・オブ・ア・カインド】。勝利者は、黒田栄人――』


漆黒の衝撃波がカジノを包み込み、天界の軍勢を塵へと変えた。審判官の黄金の仮面が粉々に砕け散り、彼はその場に膝をつく。


「……ふぅ。……ショーダウン。悪いな、俺の勝ちだぜ?」


エイトは、山積みになった「運命のチップ」を引き寄せ、不敵に笑った。

ニカは紫煙を吐き、感心したように、だがどこか突き放すように言った。


「……ハッ。ジョーカーを無理やり捻じ込みやがったか。……だがエイト、本当の『ババ抜き』は、今始まったばかりだぜ」


ニカの視線の先。

モニターが激しくノイズを走らせ、一人の女性が映し出された。その胸元には、傲慢に輝く『7』の刻印。

第30話、お読みいただきありがとうございました。


今回はギャンブル作品の醍醐味である「ブラフの心理戦」と、それを踏みにじる「圧倒的な力ロイヤル・ストレート・フラッシュ」、そしてさらにその上を行く「因果の書き換え」を描きました。


エイトの持つ『8』という数字。

それが単なる順列ではなく、(インフィニティ)としての可能性を秘めていることが、今回の「ジョーカー」召喚によって証明されました。システム側の想定を「エラー」でねじ伏せるカタルシスを感じていただけていれば幸いです。


また、裏社会の凄みを漂わせるニカの警告が、勝利の余韻に冷たい影を落とします。

ラストに映し出された、傲慢な輝きを放つ『7』の刻印を持つ女性。

彼女がエイトにとっての幸運ラッキーセブンとなるのか、あるいは最悪の死神となるのか。


物語は、天界の根幹を揺るがす更なる激闘へと加速していきます。

次回の展開も、どうぞお見逃しなく。

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