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『戦闘力5の三十路ギャンブラー、異世界で「命の代償」を強いる――最強の騎士も魔王も、俺の賭場からは逃げられない』  作者: 仁胡 黒


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第18話:指先の詐術(ペテン)、場外の理(ことわり)

第18話をお読みいただきありがとうございます。

スキルに頼らず、ただの「経験」と「洞察」で異世界の洗礼を跳ね返したエイト。

しかし、その勝利の代償として、新たなナンバーズの存在が…。

「……ふっ、いい度胸だ。……いくぜ、旅人さん」

男がニヤリと笑い、三つの木杯をシャッフルし始めた。

流れるような手さばき。杯がテーブルを叩く乾いた音が、酒場の喧騒の中にリズミカルに刻まれる。

イチカが身を乗り出し、瞬きもせずにその動きを追っている。

だが、その速度は常人の動体視力を遥かに超えていた。おそらく、この男も微弱ながら魔力で身体能力を底上げしているのだろう。

「……ねえ、エイト。……見えないよ、全然」

「……ああ。……目で追うだけ無駄だぜ、イチカ」

俺はあくびを噛み殺しながら、男の「手」ではなく「肘」と「視線」をぼんやりと眺めていた。

どんなに指先が速くても、物を動かす以上、骨格の動きは嘘をつけない。そして何より、この手の博徒は、石が「入っていない」杯を最も大切そうに扱う癖がある。

ガッ、と最後の一振りが終わり、三つの杯が静止した。

「……さあ、どれだ? ……外せば、あんたの腰にあるその綺麗な銀貨の袋、半分貰うぜ?」

男の視線は、右側の杯を僅かに誘導するように向いている。

三奈が俺の耳元で「……マスター、魔力の残滓から推測するに、左です」と囁いた。

だが、俺はふんと鼻で笑い、真ん中の杯――ではなく、男の閉じた左手を指差した。

「……そのだろ。……出せよ」

一瞬、酒場が静まり返った。

男の顔から余裕が消え、頬が引き攣る。

「……何言ってんだ、あんた。……石は杯の中にあるに決まって――」

「往生際が悪いぜ。……あんた、杯を伏せる直前、中指の第二関節で石をパーム(隠し持って)して、左手に移した。……杯の中は、全部『空』だ。……だろ?」

俺はテーブルの下で、こっそりと自分の銀貨を弄んだ。

「……もし俺が間違ってたら、銀貨を全部くれてやる。……だが、もしあんたの手の中に石があったら……この町で一番美味い酒と、隠し事なしの情報を貰うぜ」

男は沈黙した。

やがて、彼は深く溜息をつき、握りしめていた左手をゆっくりと開いた。

そこには、鈍い光を放つ魔石が転がっていた。

「……チッ。……食えないヤツめ。……戦闘力一桁の奴が、俺の『瞬速クイック』を見破るとはな」

「……戦闘力なんてのは、単なる出力の数値だ。……『勝ち方』を知ってるかどうかってのとは、別の話だよ」

周りで見ていた荒くれ者たちが、どっと沸いた。

「おい、詐欺師のジャックが負けたぞ!」「兄ちゃん、やるじゃねえか!」

殺気立っていた空気は一変し、俺たちは一躍「面白い旅人」として受け入れられた。

「……負けたよ。……約束だ、店一番の酒を持ってこい!」

男――ジャックは、店主に合図を送ると、身を乗り出して声を潜めた。

「……で、あんた。……何が知りたい? ……この町ガイルの裏事情か、それとも……この先にある『鉄錆の迷宮』で幅を利かせてる、『奇妙な数字ナンバー』を持つ連中の話か?」

俺の背筋を、冷たい風が吹き抜けた。

やはり、この先にもいる。

 俺や、フォルシアン王子のような、規格外の権能を背負った奴らが。

第18話、いかがでしたでしょうか?

「戦闘力は単なる出力」という、エイトのスタンスが明確になった回となりました。

たとえ身体能力で劣っていても、ギャンブルのことわりを知っていれば、世界は御せる。

しかし、次なる敵はただのイカサマ師ではないようです。

次回、第19話。ジャックから語られる『鉄錆の迷宮』の支配者。

そして、エイトたちを待ち受ける「新たなゲーム」の幕が上がります。

お楽しみに!

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