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向日葵をあなたに  作者: 宇多良 和笹
アイビーを土蜘蛛に

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31ページ目 見逃してしまった少女

襲撃の対処も終え、私たちはちょうど合流したところだった。


「お疲れ様、何か情報あった?」

「えぇ、こちら側はおそらく原点連合の魔法使いでしたわ」

「そうだなマダム・レッド。連中、原点が〜と叫んでいた。それに来た方角も原点連合の拠点がある方角と一致する」


アイアンズの過激派に加えて原点連合の介入も出てきた。おそらく観測としては順調に進んでいるのだろう。しかし、情報がなさすぎる。未だにマキナの根幹に関わる情報が少ない。彼が兄に固執しているのか微塵もわからない現状に少しずつ焦りを感じていた。


「困ったな。全くわからん」

「何がっすか?」


焦りからかつい観測のことを話しそうになる。慌てて私は話を逸らす。


「いや、相手の動きが急だなぁって」

「確かに、今までは爆破予告とかで陰湿なものだったのに急に過激になったっす」

「なんか心当たりとかないの?」

「さっきも話したっすけど、ファイヤーマニスの人も原点連合の奴らも俺が改造人間な上に技術力があるのが気に入らないんだと思うっす。それに、俺はいつも一人っすから」

「それってどういう…」


質問をしようとしたときに鋭い殺気を向けられる。

見てみると大きなアンドロイドとローブを着たアンドロイドがいた。


「・・・?」


アンドロイドが何かを構えているのが見える。そしてこちらに何かを飛ばしてきた。

楕円型、後方には羽らしきものが付いている。

小さなロケットのようななにか―――ロケットランチャーだった。


「神里!」


急いで叫ぶ。神里も理解したのか抜刀の構えを取る。そして目にも見えぬ速度で弾を跳ね返す。軌道がそれた弾は隣のビルに直撃、そして跡形もなく砕け散る。

唖然としているところ、ビルに隠れていた複数の人間とアンドロイドの伏兵がマシンガンで狙撃してくる。寸前のところで弾は止まりパラパラと落ちていく。どうやらシャルが魔法で防いでくれたようだった。

私はとりあえず、コンバージ・レーザーガンでマシンガンを持った複数の敵を撃ち抜く。最後にロケットランチャーをもつアンドロイドの方をスコープで覗くがいない。


「神里はロケランの弾を防ぎつつ、二人の護衛。シャルは追加の伏兵を警戒しつつギロチンで遮蔽物を作って。私は敵を見つけ次第狙撃する」


全員に指示を出しつつ、ロケットランチャー持ちのアンドロイドを探す。あの巨体のことだそう簡単には移動できないはず。それにロケットランチャーの射程距離的にも100から400メートル圏内にいるはず。そう思いながら周辺のアンドロイドを探すが、一向に見つからない。


「マキナ、これの装弾数ってどのくらい?」

「単発式で30発ほどっす。一様予備のマガジンは1つ持ってるっすけど」

「了解」


現在の残弾数は予備も含めて40発程度。それに比べて敵の数はどんどん増えていく一方。これでは狙撃しようにも伏兵が邪魔で探すこともままならない。

私が狙撃できないのを知ってか再びロケットランチャーを発射させる。神里は再び跳ね返す。鳴り響く銃声音、ビルから発火し徐々に隣のビルへと燃え移る。下の人々は逃げ回り、阿鼻叫喚の地獄絵図とかしていた。


「シャル、魔法は使えそう?」

「ギロチンの維持で精一杯ですわ」


ギリギリのところで食い止めてるとはいえ打開策がない状態だった。このままではもっと関係ない人が巻き込まれていく。早くこの場をなんとかしなければと焦りが募る。滲み出る汗、焦りからか思考もままならない。


「せめて、伏兵の足止めさえできれば」


心の中の声が出てしまう。そんな中、打開策を出したのはまさかのマキナだった。


「琴音!俺に任せてくださいっす」

「何かあるの?」

「これでもこの工房の技術者っすよ」


そう言ってマキナは真ん中の手で一拍手を叩く。するとビルの下から何かが這いずる音がする。そこから出てきたのは大小さまざまな蜘蛛の機械だった。


「いいっすか?俺達に危害をもたらすものの捕縛をするっすよ。残った子たちから周りの避難誘導も忘れないでくださいっすね」


マキナが命令を下すと蜘蛛達はどこかに言ってしまう。一つ、また一つとマシンガンの伏兵が消えていく。しばらくするとあんなにうるさかった周りの音が徐々に小さくなっていく。どうやら一つ問題は解決したらしい。

私は急いでロケットランチャーのアンドロイドを探す。すると、それらしき影を見つける。腕が筒状に変形した大きなアンドロイドとローブを着た…人間?


―――なんで、人間とアンドロイドが手を組んでいるの?


予想外の組み合わせに一瞬引き金を引くのをためらってしまう。アンドロイドはこちらにロケットランチャーを放とうとする。


私は冷静になりアンドロイドに向けて引き金を引く。

まっすぐと放たれる一筋の光。

相手のロケットランチャーが発射される直前こちらの稲妻が命中する。


隣りにいた人間にも続けて引き金を引く。

急に狙撃されれば誰だって動けなくなる。

そのまま頭が弾け飛ぶ。

あっけなく、きれいに、赤い血を吹き出しながら力なく倒れる。


あたりを確認し敵がいないことを認識する。ずっと緊張していたせいか、体の力が抜ける。死なずに済んだ。大丈夫今日も生きている。その安心したのもつかの間最後に撃った人の光景がフラッシュバックする。最後に自分が命を奪ったという事実に押しつぶされそうになる。心のドロドロが溢れ出しそうになる。ただひたすらに気持ち悪い。冷や汗が止まらない。背中に伝う嫌な汗、体内から溢れ出しそうになる何かを必死に手で抑える。


「琴音!ありがとうっす。琴音のお陰でみんな無事っすよ」


マキナの言葉で現実に引き戻される。ああ、そうだ私はこの人たちを守ったんだ。私、正しいことをした。必死に自分に言い聞かせ、心の中の不穏なものを無理やり抑え込み笑顔を作る。ただひたすら他人に悟らせないように笑う。


「良かった、怪我がなくて」


無理やり貼り付けたような自然な笑顔とその場に合う一言を絞り出す。不自然さを吐き出すように呼吸をする。それでも人を殺した事実は消えなかった。


だいぶ、呼吸が楽になった頃改めてみんなを見る。峠は超えた。この場にいる全員がそう思い安堵する。そう思い、笑いながら談笑をする。しかし、その中で一人不満そうな顔をするものがいた。

表面上、笑顔のつもりらしいが私にはわかる。あれはなにか隠しているときの笑顔だ。少し、嫌な考えが頭をよぎる。


「まぁ、考えすぎか」


あんなに仲が良さそうな二人に限ってそんなことはないだろう。私が言った一言で二人の仲を引き裂くわけにもいかない。そう思い、出てきた考えを無理やり引っ込める。


「ねえ、マキナ」

「ん?どうしたの虎兄さん」


ごく普通の会話。虎兄さんが普通にマキナに近づき、そして抱きしめる。


「わわ!急にどうしたんっすか?」


戸惑うマキナ。そんなマキナをよそに虎兄さんは話し始める。


「君は天才で、優しく、明るくて」

「虎兄さん…」


虎兄さんはニッコリと笑った後呟く。


「本当に、馬鹿な子だ」


そう言って虎兄さんはマキナのお腹を突き刺す。この場にいる全員が虎兄さんを見ることしかできなかった。ただ、虎兄さんは微笑む。目の前の友人に向かってただひたすらに。


文字が世界を綴る。

世界は崩壊し、新たな運命が刻まれていく。

私たちはまたマキナを救えなかった―――その事実だけがこの運命に刻まれるのだった。

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