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向日葵をあなたに  作者: 宇多良 和笹
アイビーを土蜘蛛に

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30.5ページ目 とある軍人の栞

少年と別れ、私たちは任された魔法使いとやらの殲滅に向かっていた。険悪な雰囲気が私たちの間を漂う。せっかくの空の旅もこれでは台無しだ。私は理由を知るべくマダム・レッドに話しかけた。


「ところでマダム・レッド、魔法使いとやらはどんなやつなんだ。知識がない私からしたら、魔女と魔法使いの区別がつかないのだが」

「・・・」


より一層殺意が深くなっていく。どうやら地雷を一発で踏み抜いたらしい。しかしこのままでも困る。なにせこれでは場所が割れてしまう。


「だんまりなのも構わないが、そろそろ怒りの理由ぐらい教えてくれないか」

「・・・」

「そうやって関係のない我々に怒りをぶつけられても困るんだが…」

「・・・はぁ」


マダム・レッドがため息を付く。少しだけ殺意が収まる。私の言うことに少し納得してくれたらしい。そのおかげか理由を少しずつ話してくれる。


「魔法使いと魔道具を使って魔法を使用する人物のことを指しますわ」

「魔女は確か悪魔とかと契約して魔法を使う女性のことだったよな。同じ魔法を使うものだと思うのだが」

「全くの別物ですわよ。性別の違いもありますが、一番の違いは魔女になる資格の有無ですわ」

「魔女になる資格?」

「魔女の資格は3つありますの。1つ目は女性であること、2つ目は魔法を使うためのエネルギーが人間より多いこと。そして3つ目は人間への危害を加えないと確約できること」

「なんでそんなことを」

「・・・人間から身を守るためですわ」


意外な返答に少し言葉が詰まる。魔女が人間に負けるわけない。いや、マダム・レッドの境遇を考えたら当たり前のことなのだろう。彼女は人間から魔女狩りを受けている。そのことを考えれば人間との軋轢を生まないための防衛策なのだろう。


「魔女の資格を持っているものは魔女から招待状が送られますの。だからこそ、その資格がない魔法使いは魔女にとっては嫌悪の対象ですの」

「なんでそんなに嫌っているの」

「魔法使いが使う魔道具の殆どは魔女狩り時代に狩られた魔女から奪ったもの、その殆どが盗品ですの」

「もしかすると魔女の素質があるだけの人も…」

「ないですわ」


きっぱりと答えるマダム・レッド。その赤い目は怒りで満ちていた。


「魔道具は魔女の力を調整するためのもの、だから本来人間程度のエネルギーをもつ者が扱えるはずがありませんの」

「だから、使える人というのは男性か、3つ目の条件を満たしてない者ということか」

「納得いただけましたか?」

「わかった。こっちも失礼な質問をした。許してほしいマダム・レッド」

「いえ、こちらも少し大人げないことをしてしまいましたわ」


空気が変わる。どうやらマダム・レッドは落ち着いたらしい。いや、それだけではない。どうやら目的地に着いたらしい。魔法使いはこちらに気づくと魔道具だと思われる本やランプ、あと杖などを構える。


「ごきげんよう、魔法使いのみなさま。わたくしは…」


マダム・レッドの話も聞かず、鋭い氷がマダム・レッドの横をすり抜ける。どうやらお相手の魔法使いは礼儀というものをどこかに捨ててしまったらしい。私は即座に刀を抜き臨戦態勢に入る。


「あら、お話は好きではなくて?悲しいですわ」

「・・・」


稲妻、水の球体、ツタ、様々な魔法がマダム・レッドに向かう。私は彼女の前に立ちすべて刀で受け流す。魔法使いは魔法の一切が効かず、とても驚いている様子だった。


「もう終わりですの?」

「・・・何者だ貴様」

「あら、わたくしをご存じない?これは失礼しましたわ。わたくし原初の魔女ファム・シャル・ロッテといいますの。以後お見知り置きを」


そう言ってマダム・レッドは優雅にお辞儀する。しかし魔法使いは彼女に無礼な態度で彼女を見る。


「わたくしも名乗ったのだから、あなたたちも名乗るのが礼儀ではなくて?」

「・・・原点から外れた汚れた魔女ごときに名乗る無などない!」

「おい、それは流石に女性に失礼じゃないか」

「いいですわ」


マダム・レッドは私を静止して前に出る。どうやら私の出番はあまりないらしい。


「消え失せろ、原点から外れし汚れた魔女」


魔法使いはランプを構えると巨大な炎を生成する。あたりを燃やし尽くさんとする炎。マダム・レッドに放つ。しかし片手でそれを止める。限界だったのか、マダム・レッドは抑えていた怒りが爆発する。


「黙れ三流、わたくしたちが気づき上げたものをお前らのような下賤な下等生物が使うな」


戦場でも感じることが少ない殺気が向けられる。魔法使いもそれを感じたのか逃げようとする。しかし、それをマダム・レッドは許さなかった。


「裁きをお前らに下す。地獄の業火に焼かれて死ね」


そう言って指を鳴らすと魔法使い10名が火柱に燃やされる。その威力は魔法使いが放った炎なんかの比ではない。それどころか炎のレイピアよりも熱がある。どうやら私が思っていた以上に怒っていたらしい。


「あ、あの〜マダム・レッド?まともな魔法が使えないって話じゃ」

「それは、威力の調整が難しいという意味ですわ。今回だって時間をかけて調整した結果があれです」

「なるほど、確かにまともな魔法は使えそうにないな」


なんやかんだで人間のことを思っているのだろう。彼女の優しさに触れながら自分の人生を振り返る。私は戦場で憎んでいた相手をそう簡単に許せるだろうか。私はそんな清く正しい人間になれるだろうか。その考えを()()()()に教えれただろうか。


「さて、戻りましょう」


そう言ってほうきを取り出し私を乗せて空を飛ぶ。私は答えのない問いに思考を巡らせる。


少し機嫌が治った魔女と上の空の軍人を乗せて差別と嘘の交じる繁華街を飛ぶのだった。

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