第9話 魔法使い(別ジャンル)
「改めて、おいらはイーグレット警察のリリルル・ウルフェン・ギャンバルクだよ。どうぞよろしく」
「ど、どうも~。私はF・E・T・Sのオペレーター山野花だぁ……って、リリルル、んん?」
花は険しい顔を浮かべて首をひねった。
今目の前にいる獣人をアナハイドはポチータと呼んでなかったか?
本名を聞いた今、どこにもポチータなる文字は入っていないのだが——
「長いだろ? ポチータでいいって」
「ちょっ!? アナハイド! 君はまたおいらの名前を——」
つまらなそうに煙草を吹かしているアナハイドに、ポチータはぽかぽかと可愛く殴りかかっていた。
それをはいはい、とあしらっている。
「覚えられねぇんだよ。大体お前は犬っころだろ? だったらポチ。あとはロリータだから——」
「あー、なるほどぉ。だからポチータなんだべな。組み合わせてるわけだぁ」
納得した花がぱぁっとした顔で頷いていると、心外とばかりにポチータは吠える。
「人を犬と一緒にするだけじゃなくロリータって不名誉な呼び方を組み合わされて気分良くなると思う?」
「…………すんません」
花は謝った。
たしかに自分が田舎出身のオペレーターだから田舎ッペーターとか呼ばれたら腹が立つ。
きっとそれと同じなのだろう。
そう考えた花は素直にポチータに謝ったのだが。
「いいよ。もう慣れたしね。ポチータが呼びやすいならそれでいいよ」
「んだよ。だったらキレんなよな。ポチータ」
「きみの所為だろ! 君が謝るべきだろ!」
わんわんとアナハイドに吠えるポチータ。
そんなやり取りをしつつ、自己紹介を終わらせつつ。
アナハイドと花はポチータからここで調べていた薬について話を聞くことにしたのだが。
「結局、こいつはなんだったんだよ」
「結論から言うと麻薬の部類に違いなかったね。地球側にもハイネル側にも。つまりこれは本当にホール内物質を加工したものに違いなかったよ」
「まあ予想通りだな。なら次はこの薬を流してた売人を探すとこから始めるとして……。花?」
「な、なんですか!?」
アナハイドとポチータのやり取りをほげーっと眺めていたところ、いきなり名前を呼ばれたからか、ビクッと体を跳ねさせていた。
「ドンパチは得意か?」
「戦闘が得意かって話だか? ……好きではないけんども……。苦手でもねぇなぁ」
「売人。つまりこの薬物を扱ってた犯罪者を今からとっ捕まえる。確実に戦闘になるはずだ。花の装備、戦闘スタイルについて聞いておきたいけど、別にいいよな」
「あ、んだ。問題ないっぺ」
別に花の戦闘技術は隠すようなものではない。
なにせ指導教官から教わった戦闘技術は元々異世界にあるグリデンガルド魔装軍の戦術なのだ。
国を半ば追放された彼女たちが教えてくれたこの技術は、もうすっかりF・E・T・Sの基本戦闘技術に組み込まれているので、別に話してしまっても構わないのである。
花は装備が杖であること、ハイネル製の魔法とは別系統の魔法を使用する旨を伝えた。
感覚的には銃と同じだとも。
そんな花の説明を聞いたアナハイドとポチータは目を点にしていた。
「異世界がそこらにあるって時代だから、まあ驚きは少ないけどさぁ」
「それにしても魔法を銃のように扱えるって便利すぎやしないかい?」
そんな感想が花に返ってきたのである。
「だべなぁ。でもあんたらの魔法もすんごいべ。まさに本物の魔法使いって感じでさぁ」
目をキラキラさせた花。
昔彼女は魔法少女のアニメにはまっていた時期がある。
ステッキを振って魔法の呪文を唱える。
そんな夢のような存在に微かな憧れを抱いていた。
「そんな良くはないぞ? 覚えるのはクソ面倒だし、加減を間違えたら自爆するしで……なぁ?」
「うん。それだったら断然花の方の魔法が便利だって。魔法回路とか考えなくていいんだよね?」
「まほうかいろ……ってのがワタシには分からねぇけんど。そんな複雑なもんはないっぺ」
いいなぁ……と二人はうらやましげに言った。
なんだか居心地が悪くなった花は、話を強引に切り上げてこれからについて話を切り出す。
「んで? 戦闘になるにしてもそこからはどうするっぺ?」
「そうだなぁ……。まずはボコボコにして体力を減らすだろ? そんでもって捕縛。あとは尋問に掛けて洗いざらい吐いてもらうってわけだ」
「そんな上手くいくかなぁ」
まるで某育成ゲームのような工程に、花は甚だ疑問だった。
だがアナハイドとポチータはそれでいいと頷く。
「ってなわけで早速いくか」
アナハイドに付いて行き病院を出ると、アナハイドとポチータが病院の玄関に立てかけられた箒を手に取る。
「ちょ、ちょっと。それって人のじゃ——」
きょとんとするアナハイドとポチータ。
何かおかしなことを言っただろうか? いや、どこからどう見ても他人の箒を盗んだようにしか見えないが……。
「ああ。そっか。花はまだこの国の常識を知らないんだっけか。こいつはレンタル箒だよ。他所様がここに置いてった箒は誰でも好きに使っていいって決まってんだよ」
「そうそう。ただの箒だしね。多少無くなった程度で辛くなるような物じゃないし」
言いながら二人は箒に跨る。
まるで魔法使い……。いや、れっきとした魔法使いなのだが——
箒が徐々に浮かび上がっていくのを、花は下から見上げるのみだ。
「んあ? もしかして飛べないのか?」
「だったらおいらの後ろに乗る?」
「い、いや大丈夫」
花は杖を取り出しマガジンを装填。
そして杖を抱くように構え、徐々に浮遊し始める。
「まあ飛べるよな」
「種類は違っても魔法使いだしね」
二人の視線を一身に受けつつ、同じ高さまで飛び上がった花。
そんな3人は次の目的地、薬物を押収した組織まで飛んで向かうのだが——
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