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ファンタジーアース〜変わってしまった地球の片隅で〜  作者: ギトギトアブラーン
第2章 異世界と混ざり合う地球、そして魔法少女
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第26話 エンカウント

「リベリオンブラスター着弾! 効果絶大です! 敵軍の大半が今ので消滅しました!」


 おー! と委員会作戦指令室に感嘆の声が上がった。

 アイリスとクリシュは直哉の戦果に誇らしげにハイタッチをし合う。

 二人が作り上げた三世界のMEを融合させた拡張兵器の効果は絶大だった。

 巨大スクリーンに投影されているホール内の映像からして一目瞭然といえる。

 カリギュラの大軍は姿を消し、残されたのはグリデンガルド魔装軍と委員会の戦闘部のみ。


「ぶっつけ本番でしたが、なんとかなりましたね、主任」

「そうだね。でも本番はここからだよ。雑魚は倒せても、まだ親玉が姿を現していないんだからね」


 それに、リベリオンブラスターはもう撃てないだろう。

 エネルギー的には問題はない。だが、莫大なエネルギーを三種類融合、放出するには、あの装備の耐久性が低すぎる。撃ててもあと一度が限界だろうし、チャージに時間がかかりすぎる。

 本来は初見でネクロウィザードにぶつけるのが一番効果が見込めたはずだ。

 だが、あの戦況では直哉の判断は仕方ないといえる。

 あのまま何もせずにいたら、こちら側の戦力は削られ、陣形は崩れ、敵に戦力を補給させてしまうだけになっていただろうし。


「ここからが、本当の闘いだよ」

「そう、ですね」


 アイリスとクリシュは息を飲む。

 当然、その二人の前で委員会戦闘部全軍を指揮していた如月も、まだ気を抜いてはいない。

 彼女も一瞬は頬を緩ませたが、依然、作戦は継続している。

 

「気を抜かないで。敵の次が来るはず。総員、備えて! それとダメージコントロールを急いで!」

「「「了解!」」」


 オペレーター各員が作戦区域で生き残っている魔物たちに呼びかける。

 生きている者、負傷した者、または戦死した者。その全てを把握し、支援、援軍を派遣する必要があるのだ。

 如月は険しい目でモニターを見つめる。

 親玉は、まだ姿を見せていない。始まりにすら立てていない。


 ***


「高井さん!」


 両手から黒煙を上げる直哉にシエルが飛び寄った。

 あれだけの攻撃をしたのだ。もしかしたら彼は肉体的限界を迎えた可能性がある。

 シエルとてマナが尽きれば、ただの少女に成り下がるのだ。

 エネルギーの切れ目が命の切れ目。そう言って差し支えないのが、戦場の常であり常識だ。


「シエル。問題ない。全然動けるぞ」

「そんなわけないでしょう。あれだけのエネルギーです。高井さんの体力も——」

「大丈夫だ」


 直哉はシエルの肩を押して、大丈夫だと言い張った。

 実際、彼に疲労はない。エネルギーが尽きて活動限界を迎える様子もない。

 どうやらアイリスたちはこの装備自体にエネルギーを充填していたらしく、直哉はただそのエネルギーをコントロールし、どう扱うかだけ考えればいいようだった。

 要は装填された銃がこの装備で、直哉はその銃のトリガーを引くだけ。

 そんな感覚だった。

 だから直哉は心配そうなシエルに笑顔を向けて、ガッツポーズを取ったのだ。


「俺のことよりも、みんなは。無事か?」


 気になったのはそっちだ。

 あの攻撃は間に合ったのか。

 味方は巻き込まれていないか。

 どれだけ被害が出ていた。

 いったいどれだけの人が死んで——


「大丈夫です。被害は多少出ているようですが、壊滅的なほどではありません」


 シエルは通信機から得た答えを直哉に告げた。

 被害は全体の八%。先の闘い、グリデンガルド魔装軍の経験が生きていたようだ。

 敵との距離を一定に保ち、地上部隊は一切投入せず、航空部隊のみで固めた今作戦は全体の被害を抑えてくれた。

 魔物たちはというと、しぶとく酒を飲みながら、味方同士でどれだけ敵を倒したかを競い合っていると、直哉の通信機から情報が届いた。


「なら、あとは親玉だけだな」

「はい、おそらく今ので出てくるかと……」


 前はシエルが砲撃魔法で敵を一掃した後、すぐに出てきた。

 ならば今すぐにでも出てきてもおかしくはないと、シエルは周りに目を凝らす。

 緑色の苔で彩られた大地、白い山に暗黒の谷間。

 あれはネクロウィザードの肉体の一部ではないのだろうか。


(以前の奴はあれが体で——)


 だが、動く気配はない。体ではないのだろうか。

 なら違う場所にいる? だとしても、手下の多くを失った今、出てこない理由がないはず。

 何か見落としていること、何か、何かあるかもしれない。


「にしても冷えるな。あれだけあっつい攻撃をぶっ放したってのにさ」

「冷える?」

「え? 冷えてないか? って、あぁ、俺の体が機械だから気づいたのかもな。さっきよりもちょこっとだけ温度が下がってるぞ?」

「……まさか!」

 

 温度の変化に気づかなかったのは、恐らく直哉の攻撃の熱量で急激に温度が上がった弊害だろう。奴はこの瞬間を狙っていたのかもしれない。


(私が砲撃魔法を使うのを前提に潜伏していたのなら)


 以前は大地に扮していた。

 てっきりシエルは、このホール内に見える大地そのものがネクロウィザードの本体だと思っていた。思い込まされていた。

 頭上を見上げる。彼女たちのはるか上空が白い霧に包まれていた。濃霧だ。霧の先が全く見えない。この先には空が広がっているのか、あるいは広がっていないのかもしれない。

 だが、これだけは言える。奴は……そこにいると。


「高井さん、後退を!」

「え?」


 瞬間、それは現れた。

 直哉を飲み込もうと大口を開けた巨大な骸骨が、霧をかき分け迫ったのだ。


「なっ!?」


 あまりに急なことに直哉は反応ができず、ただそれを見つめるのみだ。

 シエルは急ぎ杖を構え、射撃魔法を放つ。が……大して威力のない魔法で奴を倒せるか? それどころか、怯ませることすらできるだろうか。

 結果はすぐに出た。着弾してもなお、直哉を飲み込もうと迫る巨顔は留まることを知らないようだ。


「逃げて!!」

「くうっ!!」


 シエルの叫びと目の前の脅威で、直哉の反応がようやく戻る。体をすぐさま動かすが——


「駄目だ、間に合わな——」

「アクセル!!」


 シエルの体当たりを直哉が受けた。

 彼女の体が加速したのだ。

 青い光をまとった彼女の体当たりで吹き飛ばされた直哉。

 ネクロウィザードが飲み込もうとしたその場所には、直哉の代わりにシエルが——


「シエ——」


 手を伸ばし叫んだ瞬間、見たのはシエルの笑顔。

 儚いと思った。そう思った瞬間、次の光景はまるでギロチンが下ろされたかのように、ガチンと髑髏の顎が閉まった。

 シエルはいない。あるのは敵の顎、顔、そしてぎょろりとした緑色の眼光が直哉に向けられているだけだった。

 シエルは……いない。

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