↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファンタジーアース〜変わってしまった地球の片隅で〜  作者: ギトギトアブラーン
第2章 異世界と混ざり合う地球、そして魔法少女
58/63

第25話 兵器として

『花壇より各部隊へ。現在右翼が壊滅的被害を受けている模様。至急手の空いている部隊は援護に回れ。至急援護に——』

『そんな余裕はないっての! こっちだってギリギリ持ちこたえてる状況なのよ! もっと増援を送りなさい! 本国は何をやってるの!』

『すまないが本国からの増援は早く着いても30分は掛かる。その間に右翼は完全に崩壊するぞ。敵にケツを掘られたくなかったら何としてでも現状の戦力で援護に回ってやれ。以上だ、花壇アウト』

『勝手な! あーもうっ! これよりハイビスカスは右翼に援護に向かう。頼むから今度はこっちが壊滅寸前なんて言わないでよっ!』


 どうやら戦況は逼迫しているようだ。直哉は各方面に援護に向かい、シエルと共にカリギュラを蹴散らして回っているが、敵は単体で見ればさほど脅威ではない。

 だが物量が圧倒的だ。1部隊6人編成が5つ。左翼、中央、右翼に展開し、後方にもいくつもの部隊が続いているのだが、目の前から迫るカリギュラの数は、まるで海の津波のように見える。


 雑魚がどれだけ集まっても雑魚は雑魚。

 かつて日本でゲームを楽しんでいた直哉は、レベリングのため飽きるほど雑魚狩りに勤しんでいた時はそう考えていた。

 まさか現実になると、その考えを改める必要があるとは微塵も思わなかったが。


「倒しても倒してもキリがないぞ! なあシエル。お前のあの、砲撃魔法だっけか? あれでどうにかできないのかよ!」

「無理です! あの魔法は準備に時間がかかる上、消費マナも多いんです。まだネクロウィザードが姿を現していない以上、無駄に力を消費するわけにもいきません! 地道に、倒し続けるしかないんです!」


 怒鳴りながらレイスを殴り飛ばす直哉は舌打ちする。

 分かってはいた。分かっていたのだが、現状、このままではネクロウィザードと交戦する前に全滅する可能性だって考えられた。


(だけどそうだよな、冷静に考えてみりゃ、向こうがこっちの戦力を削ぐためにこんな耐久戦を仕掛けてきてるんだとしたら、むやみに力を見せるのは悪手か)


 聞いた話では、シエルは以前、ネクロウィザードに砲撃魔法を見られている。

 それに奴はほかのカリギュラと違い、知能があるようだ。

 もしかすれば、シエルたち魔装軍が砲撃魔法を使い、マナが消耗したところを突いてくるかもしれない。

 だとすればシエルの否定にも納得できる。できるが——


『こちらフローラ! もう持ちません! 撤退許可を!』

『だめだ! 撤退は許可されていない。ここで退けば次はないのだ。今作戦にアルデバランのすべてを投じている。貴様が死んだとしてもこの作戦に変更はない!』

『そんな!』


 耳から入ってくる無線。無情な異世界将校の命令に、嘆く魔法少女の声。怒り。

 慟哭の数々が直哉の胸をチクチクと刺してくる。

 自分には力があるのに。


『メーデーメーデー!! 落ちる、落ちる!! うわああああーーー!!!』

『くそっ! くそぉ!! 後続部隊前へ! 空いた穴は味方で埋めろ! 決して敵をこちら側に渡らせるな!!』


 力があるのに、使えない。敵はその油断を待っている。

 だがこうしている間にも少女たちの命は失われ続けている。

 このままじゃ、このままでは。

(どのみち持たない……だったら!)

 直哉は無線のチャンネルを戦闘区域からアイリスへの直通チャンネルへと、ダイヤルを弄って切り替える。


「アイリス! アイリス! 聞こえてるか!」

『感度良好だよ直哉くん! でもすまない。こっちも手が空いてないんだ。要件は手短に頼むよ!』


 無線の向こうから慌ただしい動きと声が聞こえる。

 アイリスたちも委員会戦闘部の面々のオペレートに手を焼いているようだ。


「大丈夫だ。一個だけ聞いておきたい」

『それなら大丈夫。なんだい』


 直哉は拳に装着された新たな装備を握りしめる。

 アイリスとクリシュから渡された時、こいつの使い方を聞いてはいたが、最後に確認だけがしたかった。


「お前が作ってくれたこの装備、本気で使っても壊れないんだよな」


 向こう側でアイリスが息を飲んだのが聞こえた。

 だがそれも一瞬のこと。

 そのあとすぐに彼女は吐き捨てるように笑い、答えてくれた。


『当たり前じゃないか。それを作ったのは誰だと思ってるんだい。君の体を、最強の兵器を作り上げた天才科学者ドクターアイリスの傑作だよ。最強の兵器の拡張パーツ。その性能はこの僕が保証する。絶対に壊れないってね』

「サンキュー。それだけ聞いておきたかったんだ」

『うん。気を付けてね。生きてこの苦難を乗り越えよう。勝ってみんなで祝杯だ!』


 それだけ聞いて、直哉はチャンネルを元の戦闘区域に切り替えた。

 耳からは今も仲間たちの混乱している様子が窺えた。

(だがそれもこれで終いだ)

 力がある。それに新たに強化された力もある。

 ここで力を消耗するわけにはいかないシエル。そして圧倒的な物量に苦戦を強いられている状況を打開するには、やっぱり力が必要だろう。


「シエル。全軍を少し下がらせてくれ」

「高井さん?」


 敵をまた蹴散らしながら、シエルが直哉に目を向けた。

 その目は『何を言ってるの?』と言いたげだ。


「一瞬でいいんだ。俺が、あの雑魚共を消し飛ばしてやる」


 腕にはめた篭手がスライドし、内部からエネルギーを充填する光が発光し始めた。

 この装備は直哉の意志によって稼働する。まるで自身の体の一部のように。


「わ、わかりました」


 シエルはコクリと頷き、インカム越しに全軍へ通信する。今すぐに後退せよと。

 将校が否定する声が響いたが、シエルはそれをバッサリと拒否して仲間に叫び続けていた。

 

 直哉はリーデリッヒ最強の兵器だ。

 兵器という物は、圧倒的な攻撃を一つは持っているものだろう。

 攻撃手段に乏しい兵器など兵器と呼べないのだから当然だ。


 なら自分がはどうだろうかと直哉は考える。


 拳を振るえば空気の壁を穿ち、暴風を巻き起こせるほどの威力がある。

 地を蹴れば銃弾よりも速く移動することができるし、空だって空気を蹴って飛ぶことができる。

 それに今は拡張装備で浮遊も可能だ。

 だが、自分には足りないものが一つだけあった。

 

 圧倒的な火力だ。

 目の前の大軍を一瞬で焼き払えるだけの、最終兵器としての火力。

 それが自分にはなかった。

 過去形だ。

 現在形に言い換えれば——


 今はその火力がある。


「全軍撤退完了! いつでもどうぞ!」

「ありがとよ! こっちもチャージ完了だ!」


 長いチャージの末、直哉は両手を前に、津波のように押し寄せる敵の大軍へと向ける。

 掌部が開く。

 中から白く発光する熱が煙を立て、甲高い音を発し始めていた。


「ターゲットロックオン! 見せてやる。俺が最終兵器たる所以をなっ!」



「リベリオンブラスター!」

 直哉はそう叫んだ。

 掌部から放たれた光は膨大な熱を辺りに振りまきながら敵軍へと向かう。

 巻き込まれたスケルトンやレイスは一瞬にして融解し、生を終える。

 破滅の光。されど救いの光。

 この破壊の限りを尽くす光を、直哉は救いのために放った。


 敵軍が密集している辺りに着弾すると、白濁した爆炎が広がり、目に見える大地をすべて焼き払っていく。


「す、すごい……」


 シエルはその光景を呆然と眺めていた。

(高井さんが委員会の切り札だということは聞いてたけど、まさかここまでなんて)


 シエルとてアルデバラン最強の強国グリデンガルドの英雄だ。

 彼女だって自身の持つ力がどれほどの物か理解しているつもりだ。

 だがこれは、そんな自分の力を遥かに超えている。

 まさしく兵器……。そんな文字が彼女の脳裏をよぎった。


「は、ははっ。どうだ、やってやったぞ」


 光が途絶える。

 大地が焼けるどころか、綺麗さっぱり跡形もなく、敵もろとも消失していた。

 これが委員会の最終兵器。

(高井、直哉さん……)

 恐怖。そして後から追いかけてくる希望。

 彼の力があれば、今度こそネクロウィザードを倒せるかもしれない。

 気づけばシエルは笑っていた。

 だが彼女自身、今自分が笑っていることに気づいていないようでもあった。

ここまで読んで頂きありがとうございます!

もし面白いと思って頂けたら

評価とブックマークをして頂けると励みになります。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。