第16話 魔法少女VS魔物+直哉
異世界と異世界の精鋭同士の戦いになぜ参加しなければならないのか。直哉はとても重たい息を吐く。
(たしかに体は鈍ってるけどさぁ、もうちょっと順序ってもんがあるでしょうが)
パワーはとてもあります。素晴らしく卓越したほどにあります。ですが肝心の体力がありません。
なのでもう少し持久力をつけてから模擬戦に臨むのがよろしいのでは? と隣にいた百鬼夜行部隊のお気楽者であり、賑やかし担当の剛力海堂に聞いてみたのだが。
「んなもんどうだっていいじゃねぇか。喧嘩だぜ喧嘩! 相手が強けりゃその分腕が鳴るってもんだろ! 直哉さんよぉ」
ガシッと肩を組まれて困り果てる。
砕華の同郷なのだ。話が通じないのは理解していたが、もう少し自分と同じ境遇を理解してくれる仲間が欲しいものだ。
ちなみにこの剛力、今の見た目はスキンヘッドの眩しい、名前の通り筋肉ムキムキの人間であるが、実際の彼は腕が4つある阿修羅という種族らしい。
魔法で見た目を変えているらしいが、そこはやはり魔物。恐ろしいことこの上ないが、まあ昨日の飲み会で少し絡んでみたあたり、気の良い男であるには違いない。
「はぁ、で? その喧嘩にウキウキの剛力さんはこの模擬戦勝てると思う?」
「ん? 愚問だな! 喧嘩する前から負けることを考える魔物がこの世にいると思うか?」
(俺は魔物じゃなくてヒューマノイドだけどな)
「つっても楽に勝てるとも思えないな。なんせこのプレッシャーだ。さすが異世界の英雄様が率いる小隊だけあるぜ」
「プレッシャー。ねぇ」
今の直哉には何にも感じない。きっと剛力の言うそれはどこぞの少年漫画に出てくる『気』のような物なのだろう。
だが残念、直哉はヒューマノイドだ。その手のオカルトでファンタジーな物を捉えるためには機能を追加してもらわないといけない。
つまり『アイリスお願いします』だ。
「はいはい、無駄話しない」
「姐さん。すいやせん」
直哉と剛力の間に割って入ったのは、これまた大きな背丈の女性だ。
砕華よりは低い身長180センチほどの背丈だが、筋骨隆々で、片目に大きな傷跡が残された青いポニーテールが似合っている。
「えー、確か……ナズナさんだっけか?」
「おっ。覚えてくれたんだね。嬉しいよ直哉」
ゴン! と肘打ちを喰らった直哉。
軽く小突いたつもりなのだろうが結構痛かった。
どれだけ美人でも魔物は魔物であるということだろう。
「まあお前らの心配も分かるよ。あたしから見てもあいつらは異常だからねぇ」
「やっぱりですかい」
「魔力、いやマナ……だっけ? まあ似たようなMEだからあたしらには分かっちまうんだろうけどさ。まるで大きな山が目の前に連なってるみたいに見えるんだよねぇ」
「分かりやす! その通りなんすよね!」
(マナってそんなふうに見えるの!?)
「中でもあの隊長は特にヤバい。まじヤバい。正直ここが戦場だったら身に付けてる物全部脱ぎ散らかして逃げるね、あたしは」
そこまで言わしめる隊長ことシエル。そんな彼女たちが苦戦する次の目標のネクロウィザードは、一体どれほど強いのだろうか。
直接戦うことが決まっている直哉はブルリと震える。
「んじゃ、模擬戦のルール説明なー」
砕華がルールを説明し始める。
内容は簡単だ。
隊長であるシエルか砕華が撃破されたらその時点で終了。
もしくはどちらかが全滅しても同じ。
「以上だ、質問は?」
「あ、あのー」
手を上げたのは直哉だ。
「模擬戦って本気じゃないよ……な?」
怪我したら怖いし、数日後には作戦もあるし。
と思ったのだが——
「本気でやるに決まってんだろ。死ぬ気でやれ死ぬ気で」
「ですよね……」
(分かってましたよ、そんなことぐらい。でもさ、でもさぁ! 俺起きたてホヤホヤなんだぜ? 封印から目覚めたキャラってもっとゆっくり大事に扱わねぇ? 俺は例外なの?)
例外だったのであろう。
無情にも模擬戦は開始され、シエルたち魔法少女は空へ舞い上がる。
対する直哉たちはというと、地上に足をつけたままだ。
「まああんなふうに飛べないしね」
「っすね〜」
ほえ〜。良いな〜。と見上げる直哉、剛力、ナズナの3人。
「そこボケっとすんな。各自散開して各個撃破だ。いつも通りにやるんだよ」
ドンッと地を蹴って空に飛び上がる砕華。
(ってかあいつ当然のように空気を蹴って動いてるんですけど。あれを真似しろと? いやいやまさか……)
と思ったが、できるのではないだろうか。
実際、今の砕華は魔法の類を使用していないのだ。
つまりあれは素の力。
であれば……。
(試してみるか)
直哉も同じように空へ飛び上がり、空気を思い切り蹴ってみる。
ビュンと前へ加速した。
できた、できてしまった。まあ思えばだが超パワーがあるのだ。これぐらいできて当然と言えば当然かもしれないが。
「高井さん。行きますよ」
「シエル!?」
そんな直哉に迫ってくるのは、魔法少女たちの隊長であるシエルだ。白いコスチュームは本物の魔法少女のようであるが、手に握られた魔法の杖はどこかアサルトライフルのようで、デンジャラスな雰囲気を醸し出していた。
そんなシエルが杖を直哉に向ける。
もちろん直哉にはそれが攻撃の予備動作だと理解できた。
「アサルトシューター展開……シュート!」
放たれた青い魔弾が迫る。空を飛ぶ(空気を蹴って飛ぶというなんとも不思議な飛び方)直哉はなんとか躱すが——
ドン!
背中に衝撃を感じ、肺の中の息をこぼしてしまう。
「な、なにが!?」
背中からは煙が上がっている。躱したはずの魔弾が当たったのか? 振り返れば残りの魔弾が迫ってくるではないか。
「さあ勝負です」
「追尾魔法を使って一方的な状態に持ち込んどいて勝負とかズルじゃん!」
だがこれは実戦を模した戦闘。模擬戦だ。
ネクロウィザードは魔法使いの死体を利用すると聞いた。
つまりシエルのような攻撃をする死体も中にいるということ。
(文句ばっか言ってられないよな)
だから直哉は意識を切り替える。
さっきまでの俺不幸は一旦さよならだ。
なにせ直哉は誓ったのだ。シエルが趣味を探せる平和な世界を取り戻してみせると。
アイリスたちをもう悲しませないと。
だから拳を握る。
力を込める。
たとえ模擬戦であっても、全力でこの世界の役に立つことを証明するために。
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