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ファンタジーアース〜変わってしまった地球の片隅で〜  作者: ギトギトアブラーン
第2章 異世界と混ざり合う地球、そして魔法少女
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第13話 合同作戦会議

 大妖帝国大和と旧ロシアの間にある空間の穴の先は、異世界アルデバランと繋がっている。

 ただし穴を抜けた先に世界がある訳ではなく、世界と世界の狭間に次元間生物カリギュラが生息する歪んだ空間——ホールが存在する。


 そこに目標であるネクロウィザードが、ファンタジーアースとアルデバランの両方の世界へカリギュラを解き放っているらしい。


 浮島『春風』はそのホールを目指して現在航行中なのだが、運悪くゲルルンギラスと遭遇してしまったのだ。因みにだが、ゲルルンギラスはまた別のホールから出てきたカリギュラであり、今回のホールとは全く関係がない。

 どうやら今の世界は、直哉が想像しているよりもひどい状況らしい。


「そんな訳で、今作戦はグリデンガルド魔装連隊と僕ら委員会による合同作戦なわけだね」


 アイリスと如月が話した内容はこうだ。

 ファンタジーアースとアルデバランの両側のホールから侵攻を開始。道中のネクロウィザードの配下を討伐しながら、最奥の本体を叩くと言う流れだ。


「合同作戦って……俺たち必要あるのか? この間の戦いでシエル達の戦いを見たけど、俺たちよりも遥かに戦闘技術が発展してそうだったけど……」


 単純な疑問。

 直哉達委員会勢力は確かに戦闘力はあるが、空を自在に飛ぶことは出来ない上、グリデンガルド魔装連隊のように統率された軍隊行動なんて皆無と言える。

 多少の連携はあるが、この数日訓練を共にして感じたのは『個の力による暴力の押し付け』だ。

 そんな委員会と合同作戦する必要があるのか? と思ったのだ。


「ホールの中って言っても結局空は飛べるんだろ? だったら道中の敵なんて無視してシエル達がビューンっと飛んで行けば——」

「もちろん試しましたよ。試した上で不可能だと思い知らされたんです」


 アイリスの隣、シエルが気難しい顔を直哉に向けた。


「さっきも言いましたが、ネクロウィザードは魔法使いを使役するカリギュラです。我々が束になって討伐に臨んだ前回の攻略作戦……。総勢500人を投入した作戦ではその七割が壊滅。結果、ネクロウィザードに戦力を与えるだけの形で終わってしまいましたので……」


 そこから聞かされた凄惨な話。

 最初は予定通りネクロウィザードに辿り着けたものの、圧倒的な力で長期戦を余儀なくされ、配下であるカリギュラ、並びに死体となって操られる事になった魔法使いが魔装連隊を徐々に殺していくという……。


「最初からあのカリギュラの目的は戦力拡大。自身を囮にして誘い込んだ外敵を戦力に加える事だったようです」


 悔しげに、口を一文字に結んだシエル。

 きっとその作戦にも参加したのだろう。そんな怒りと無力感に震える拳を見て、直哉は言葉が出てこなかった。


 あの魔法を扱うシエル達が圧倒されるほどの敵……。

 だがそんな奴を相手に、尚更委員会側が相手になるのか? 甚だ疑問だ。


「直哉くんの言いたいことも分かるよ。なにせ僕らの戦力はここ数年で確立されたハリボテの軍隊だ。連携も戦術もあったものじゃない。だけど——」


 ニッと笑うアイリスは告げる。


「ここにいる本地獄出身の魔物達には純粋な個の力がある」

「個の力?」


 直哉はキョトンとした。

 確かに一人一人の力、魔法には目を見張るものがあった。砕華は個の世界の誰かが酒を飲んでさえいれば魔力は尽きる事はないし、舞台のメンバーだって炎を手足のように操ったり、スーパーヒーローのような大立ち振る舞いまで可能にする奴だっている。だがそれだけだ……。

 それだけなのだが、アイリスは頷き——


「単純にタフなんだよ。なにせ魔物には再生能力が少なからず備えられているしね」

「再生能力だって?」

「何を不思議がっているんだい。砕華だってどれだけひどい怪我をしても一瞬で元通りになったのは、君も見たはずだろう?」


 言われて五年前、ナイトイルミネーションで戦った時のことを直哉は思い出す。確かにあの時、直哉は砕華の顔を文字通り吹っ飛ばしたが、数分後には何事もなかったように現れていた。


「だけどそれは砕華だけじゃないのか? だってこいつは酒呑童子なんだし」

「おいおい直哉。私たち魔物を舐めてもらっちゃ困るぜ。確かに私の再生は魔物の中でもダントツだけどよ、あいつらの再生能力だってすげぇんだぜ? 暴力が全てを支配する地獄の魔物にとっちゃ、大体の怪我なんざ唾つけりゃ治るレベル程度にな」

「まじかよ……」


 羨ましいと直哉は思った。今の自分には再生能力はない。もしこの作戦で負傷しようものなら、一体どうやって肉体を回復させられるかわかったものではない。まあ人間をベースにはしていると聞いたが、機械の体であるのは違いないのだし、何かしらの回復手段はアイリスも持っていそうではあるが。


「ん?」

「なんでもない」


 直哉の視線に気付いたのか、アイリスが首を傾げていたが、今その話をするのはよそうと目を逸らす。

 シエルは直哉達の話が終わったのを見計らったように口を開く。

 

「アイリス主任と高井教導官の話の通りです。私たちグリデンガルド魔装連隊には魔物ほどの耐久性はありませんので、機動力に特化した我々と、防御力に特化した委員会。そして攻撃力に特化した私と直哉さんでネクロウィザードを叩く。これが今回の作戦という訳です」

「俺が!?」


 直哉はギョッとした。そりゃそうだろう。今の話の流れで、何がどうやって攻撃力に特化した自分の名前が上がるのだ。


「ちょっと待ってくれ。この作戦って何日か前から立案してたんだよな」


 頷く皆。


「だったら俺を戦力に数えてるのはおかしい話だろ! 俺が目覚めたのは三日前だぜ?」

「あー……それはね……」


 直哉が顔を向けた先。そこにはなんとも気まずそうに指をチョンチョンと合わせているアイリスの姿があった。


「ほら……君の力、完全には元通りじゃないだろう? それは、その〜……」

「お前、まさか——」


 直哉はアイリスが出そうとするその言葉の先が大体予想出来た。過去にはあったはずの再生機構に飛行機能。それが失われて残ったのが超パワー。そしてオマケと付け加えられた人間性。それが意味する事はつまり——


「ごめん! 事態は急を要していたから、君に超パワーだけ備えさせた不完全な状態で目覚めさせる事になったんだ!」


 パン! と手を合わせて謝ったかと思えば、すぐさま土下座を披露してみせたアイリス。

 鮮やかすぎる一連の流れから察するに、このアイリス、直哉が眠っている五年の間で土下座を常習的に行なっていたのかもしれないと、ヒクヒク顔面が引き攣る。


「アイリス主任を責めないでください、直哉さん。急ぎ戦力を求めたのは私たちの方なんですから」


 庇うようにシエルが間に入り——


「五年前の次元崩壊を引き起こした異世界兵器である直哉さんの力の記録。あれを拝見してしまい、それさえあればあのカリギュラを倒せるはずだと、グリデンガルド軍上層部が判断してしまったのが、あなたの不完全な目覚めの原因なのですから」


 周りもこれには仕方ない事だと頷き、直哉を説得してくる。

(つまり、俺の力は負の歴史として記録されただけじゃなくて、頼り甲斐のある戦力として見られてるってことか? おいおいそれって——)

 まるで都合の良い兵器……。と言えるだろう。

 

 だがそれを口に出すのは気が引けた。

 アイリスが付けてくれた人間性。それは恐らくこれからの世界、自分が兵器として幾つもの戦場に駆り出される事に対して、少しでも人間らしく生きてほしいと思ってのことだろう。

 兵器としてではなく、高井直哉として生きていけるように……。


「ばっかやろうが……」


 直哉は小さく吐き捨て、地べたに額を押し付けるアイリスの肩に手を置いた。


「この世界の状況は俺の不手際で起こしてしまったって言ってただろ。別に能力の大半がなくなったところで怒ってなんかいねぇよ」

「直哉くん……」


 立ち上がり、直哉はシエルに手を差し伸べる。


「話は理解した。俺の力が世界を救う兵器になれるんなら、なんだってやってやるぜ」

「高井さん、ありがとうございます」


 シエルは直哉の手を取った。

 すでに失ったはずの命なのだ。多少都合よく扱われようが、それが第二の……いや第三の人生を歩むことが許される為の条件というのなら、安いものだろう。


(それにアイリスと砕華を連れて海に行くって約束も果たさないといけないしな)

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