第12話 テラ級カリギュラ『ネクロウィザード』
訓練を終えて本部の建物に戻った直哉達、百鬼夜行部隊に館内放送で作戦司令室への呼び出しがかかった。
汗ダクダクの状態だからシャワーを浴びたいと思ったが、皆急ぎ駆け足で司令室を目指し始めたので、一人子供みたいにわがままを言うわけにはいかないと、息をゼェゼェと切らしながら直哉も後に続く。
ゲルルンギラス討伐作戦を如月から聞いたあの部屋、司令室に入ると、中では如月、シエル達魔表少女達(今は黒い軍服? を着ている)、そしてアイリスが話し合っているようだった。
「おいっす。高井砕華並びにクソ野郎ども現着したぜっと」
全く酷い報告だと直哉は呆れたが、そんな砕華の発言にも寛容な如月は「ご苦労様です」と丁寧に返した。
「訓練終わりに申し訳ありませんね、高井教導官」
「良いって。ってか高井教導官はやめねぇか? ここに高井は3人いるんだしよ」
「確かにそうですね」
ふふふと上品に笑った如月は、直哉の知っている中学2年生の姿とは違って、大人びた雰囲気が感じ取れた。
正統派美人に育ったと言える。
まあ、それを口に出す時ではないから心に留めるのだが。
「こほん。えー。皆さんをお呼びしたのは次の作戦、ここにいらっしゃるクロッカス執行官並びにグリデンガルド魔装軍との共闘作戦の目処が立ったからなのです」
「おっ。ようやくか」
と言われても直哉には分からないことばかりだ。
目を点にしてアイリスに顔を傾けて「なんの話?」と呟くように聞いた。
「前に言ったろ? 共同作戦だよ、共・同・作・戦。クロッカス執行官の世界とファンタジーアースを繋ぐホール。その中に巣食うテラ級カリギュラの討伐作戦のこと」
「あー。そういえば言ってたな」
話は直哉が初めてこの場所で目覚めた時に遡る。
この世界の現状、どうやら今の地球、ファンタジーアースでは新たな自然災害、空間断裂なるものが発生するようで。
空間に亀裂、最悪の場合は空間が割れて大穴が開くらしい。
その大穴、通称ホールはこことは別の世界、異世界と繋がっているのだが、ファンタジーアースと異世界の間には両方の世界特性を取り込んだ異空間が広がっているらしい。
なんでもその異空間からカリギュラなる化け物が両方の世界に現れるらしいのだが。
「テラ級って? ゲルルンギラスの時も砕華が言ってたけどなんだ?」
「強さのレベルだよ。現状最高レベルの単位がテラで、それより下にキロ、メガ、ギガがあってね」
容量かよ……。と突っ込むのは野暮だろう。
直哉はアイリスの説明になるほどと頷いて、脳みそにしっかりと刻み込む。
「そのテラ級カリギュラが彼女達の世界、グリデンガルドを追い詰めてるらしくてね。こことも繋がってる異世界だから放っておくわけにもいかないと、国連の上層部は協力を受け入れたんだよ」
「なるほど……」
アイリスと話していると、シエルが「そうなんです」と直哉になんとも申し訳なさそうな笑顔を向けてくる。
「アイリス主任の説明通り、現在私たちの世界はテラ級カリギュラ『ネクロウィザード』による攻撃に手を焼いていましてね〜」
「ネクロ、ウィザード。ってことは魔法使い、なのか?」
「ん〜、魔法使いではないんですが……なんと言えばいいんでしょう」
困った顔を浮かべるシエルに代わり、なんともキツそうな目をした赤髪の少女が直哉の前に立ち——
「ネクロウィザード。我々が別名『死体漁り』と呼ぶそれは、同僚であるハイウィザードの死体を配下に加えるのです。魔法は使えないにせよ、魔法使いを使う化け物と言うわけです」
魔法使い使い? これまた厄介そうな、と直哉はゲンナリする。
「リーンの説明通りなんですよ。ハイウィザードである私たちは、ネクロウィザードが出現した10年前から戦争状態でして……どの戦闘も敗戦……それどころか戦力を与えるといった最悪の道を辿ってましてね」
シエルは悲しげに——
「私の仲間も多く失いました……」
「そんな……ってか10年前? 10年前ってまだ地球とアンタらの世界は繋がってなかったはずだよな?」
「直哉くん、それはね」
とアイリスが——
「砕華くんの時と同じだよ。リーデリッヒでの君と奴の戦いが、クロッカス執行官の世界にも影響を及ぼしたらしい」
「なっ……」
直哉は絶句した。
まさかまたもあの忌々しい男の名を聞くことになろうとは思いもしなかったのだ。
「だからこの世界だけじゃない、全次元の問題は僕らの責任ってことに繋がるんだよ。分かったかな?」
だから罪滅ぼしなのか、だからテロリスト扱いなのか。
リーデリッヒでの戦いの影響は全時空に及び、地球での戦いでギリギリの均衡が完全に崩れた。
直哉はようやく理解したのだ。自分がしでかした過ちに。
ただ戦って勝てばいいと当時は思っていた。
それで確かにリーデリッヒは救われたのだから。
だが現実は違う。壊したのだ。
(俺が、もっと慎重に力を扱っていれば……)
いつだったかリーデリッヒの王様が言った言葉を思い出す。これからは平和な時代を築きたい。だからお前のような生きすぎた力は不幸を招くのだと……。
全くもってその通りだった。
追放されて当然、そう直哉は思い——
「だからって落ち込んでる暇はないよ。やってしまったものは仕方ない。それに悪気があって壊したわけじゃないんだ。だからこれから全ての問題に向き合うべく、僕らはこの問題に対処しなければいけないんだよ」
アイリスの真っ直ぐな目と言葉に……。
(そう、だよな……。落ち込んでたって何も変わらないよな)
だったら、全部解決するまで力を尽くすだけだ。
「説明サンキューな。ようやくこの世界の現状を完全に理解できたわ」
「はは。その顔、それでこそ直哉くんだよ! それじゃあ気を取り直して——」
アイリスはこの場にいる全員に目を向けて——
「世界を救う話をしようじゃないか」
と、ニッと笑って告げるのだった。
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