第4話 帰還から5年後の生活 3
翌朝。自宅のリビングでアイリスが作ってくれたほかほかと湯気立つ朝食に直哉はありついているわけなのだが。
今日のメニューは焼き鮭に味噌汁に炊き立ての白米、そしてジャンバリア漬だ。
ジャンバリア漬、直哉も初めて見るが……どうやらリーデリッヒ由来の漬物らしく、ジャンバリアと言うシャキシャキお野菜を使うのが常らしいが……ここは日本でそんな不思議お野菜は存在しない。
だから小皿に乗せられているのは普通の塩漬けきゅうりだ。味付けは……まあ独特だが……。それを美味い美味いと直哉はジャンバリアをバリバリ咀嚼する。
「なあアイリス。お前の学校に如月って女子はいるか?」
「な、なんだい、いきなり……」
何を警戒しているのやら味噌汁のお椀を傾けながらじとっと見てくる。
昨日あんな事があったって話はアイリスには話していない。変なことに巻き込みたくないから。
とは言ってもやっぱ気になるものは気になるわけで聞いてみたのだが。
「いやぁ。ちょっと昨日の職場でお前の学校の話になってさ。そこの先輩がお前の学校の如月さんって生徒? の知り合いだとかなんとか」
「ふ、ふーん。そういうことね。なんだ君がロリコンに目覚めたのかと思って心配したじゃないか」
(失礼な。俺のどこがロリコンだっていうんだ。俺の好みはナイスバディーのお姉さんがタイプなんだ、中坊なんかに興奮する訳ないない。ないのは性欲もなんだけどな……ロボとになった時に三大欲求そのものが欠落してるし)
「まあ居るには居るね。僕の学校に如月って人は1人だけ、上の学年だけど、風紀委員を勤めてる人じゃないかなぁ」
「風紀委員ねぇ。上の学年ってことは友達でもないんだろ? だったらなんで知ってんだ?」
「話で聞かなかったのかい? 彼女はうちの学校では知らない人はいないほどの有名人なんだよ。学力は常に学年上位、運動に関しても右に出るものはいない。それに見た目も綺麗だ。なんでもモデルにスカウトされたとかなんとか聞いたよ」
「へぇ〜。モデル、ねぇ」
まあ確かに中坊にしては綺麗だったと記憶している。
制服を着てなかったら女子高生かと思うぐらいの身長で凛とした顔つきのザ・大和撫子って感じの子だった。
「なんだい、その反応からしてやっぱり君も彼女に魅力を感じてるのかな……僕だってこれから……」
っとなんだかアイリスの気分が落ち込み始めた。
「大丈夫大丈夫。お前も十分可愛いって。自信持てよ天才マッドサイエンティスト」
「あのね。マッドサイエンティストって言葉は褒め言葉に入らないんだよ? どうせなら天才美少女Dr.とか言ってほしいね。もう」
言いつつもなんだか嬉しそうなアイリスを直哉は見逃さない。
アイリスから聞き出せる如月の話はこれだけみたいだ。
まあそうだろう、大っぴらに『日本を影から守ってます!』なんて如月が公に痛い発言するはずない。もし居るとすれば頭のおかしい厨二病だけだろう。
「直哉くん。今日の午後は暇かい?」
アイリスが頬を赤くしながら聞いてきた。
「ん? 暇だけど……それが?」
「いや……その……ここ最近、君は働いてばかりで最近一緒にお出かけもしてないな〜って思ってさ」
「そういえばそうだな」
向こうから帰還してから金も住む場所もない状態だったんだ。
必死に働いてアイリスが悲しまないように、セカンドライフを楽しめるように必死だった直哉は最後に一緒に出かけたのっていつだったか考える。
「も、もし良かったらなんでけど、一緒に買い物なんかに……」
買い物……。そういえばアイリスの服って制服か部屋着しか見たことない。
(くそっ。俺としたことが、アイリスにまともな服を着させてあげることが出来てないじゃねぇか)
「くっ!」
だん! とテーブルを叩くと「なにをそんなに悔しがってるんだいや!?」とアイリスが立ち上がった。
それは悔しいだろう。こんな子に苦労させてばかりなのだから。
「ご、ごめんよ! 俺が鈍感なばかりに、お前だってもっとオシャレしたいよな、女の子だもんな。よっしゃ! だったら明日は一日暇にしておいてやる! 欲しいものなんでも買ってやるぞ! 服でもぱんつでもブラジャーでもなんでもござれだ!」
「ぱ、ぱんつとブラジャーは1人で買えるよッ!! この変態!」
ガンっと茶碗を投げつけられて頭に白米が乗っかる。
はっはっは。そうですか。アイリスもどうやら思春期に入ったみたいだ。と直哉はちょっぴり寂しくなる。
「ま、まったく! 君はどうしてそうデリカシーがないかなぁ! 僕はもう大人だよ!」
「はいはい。大人ですね〜」
直哉の中ではまだまだちっさな命の恩人のアイリス。
少し大きくはなったがまだ14の子供だ。
「で、買い物だけでいいのか? せっかくの外出なんだし、もっとやりたい事とか言っていいんだぞ?」
「ほんとうかい?」
「ああほんとほんと。俺、嘘つかなーい」
「な、なら!」
ドタドタドタと自室に走り出して一枚のチラシを持って戻ってきた。
「これ!」っと見せてきたチラシの内容は――
「ナイトイルミネーション?」
「そう! どうやら明日の夜、街の中央でやるみたいなんだよね。ちょっと気になってたっていうか……でもこういうのって1人で行くものじゃないっていうか」
(なるほどな。わかる。わかるぞ〜。1人で焼肉に行きづらいとかそういうもんだな)
一度1人で行けた経験があれば気にはならないが、アイリスはまだ異世界から来て1人でイベントに行くなんてことは怖くて仕方ないはずだ。
だったらここは、命の恩人を助けるべきじゃないだろうか。
「いいぞ。なら明日はそれも見よう」
「う〜。やったぁぁーー!!」
(飛び跳ねるほどか? まあ嬉しいんだろうけどさ。こうやって子供みたいにはしゃいでくれるなら俺はなんだてしてやるさ。だってそうだろ? 可愛い子にはいろんなことを体験してほしいじゃん)
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