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ファンタジーアース〜変わってしまった地球の片隅で〜  作者: ギトギトアブラーン
第2章 異世界と混ざり合う地球、そして魔法少女
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第4話 ゲルルンギラス

 急いで委員会本部へ戻った直哉はアイリスに連れられるままなんとも作戦司令室のような場所にやって来たわけだが、大学でよく見るような階段教室を暗くした大部屋で、席の全てにモニターと1人のオペレーター達がインカム越しに何か話してたりキーボードを叩いてたりしていた。


「ん? 高井さん」

「やあ如月さん戻ったよ」


 そんな部屋の真ん中、大きなモニターを眺めていたスラットスーツ姿の女性がアイリスの声に振り返る。

(如月って……まさかあの!?)


「如月ちゃん? またこりゃ随分と大きくなって……」

「おや? そちらは……」

「直哉くんだよ。覚えてないかい? おかしいなぁ、姿形は当時のまま復元したはずなんだけど……」

「えっ!? お兄さんですか!? あの砕華さんと1人で戦って勝ったあの……」

「まあその直哉だけど……覚えてない?」


 まるで何年かぶりに再開する親戚のおじさんの気分を味わいつつ会釈する直哉。

 にしても目の前の如月も随分と綺麗に育ったと見える。

 長い黒髪は一つに束ねられていてクールビューティーなシゴデキ感が出ている。なんだったら束ねられた髪の下から覗くうなじがなんともセクシーだなぁと鼻を伸ばしてしまう直哉。

 そんな彼の顔を見たアイリスはムッとして彼の足に踵を踏みつける。ちなみに今のアイリスが履いているのはヒールブーツだ。当然ヒールは直哉のつま先を踏み抜き——


「痛ってッ! なにすんだ!!」

「いやらしい顔を浮かべていたから緊張感を呼び戻してあげたまでだよ」


 なんでそんなに怒ってるんだ? とは聞く間もなくコホンと如月が咳払いをした。


「お兄さんが何故ここに居るのかは後で聞くとして……現在委員会は敵の襲撃を受けつつある状況です」


 言いながら如月はデスクに置かれていたタブレットを手に操作しながら直哉達の目の前にある巨大モニターに一つのタブを反映させた。

 そこに映るのはムカデのようで、ウツボのような直線上の巨大生物。

 ご丁寧に名前まで記載されていてこの化け物はどうやら『ゲルルンギラス』と呼ぶらしい。


「『春風』の進行上、旧ロシア領内に存在するホールから大型カリギュラ『ゲルルンギラス』が出現。真っ直ぐこちらに向かっているとの観測隊からの報告がありました」

「おぉ……なんともSFファンタジーな展開……」

「しっ。黙るんだ」


 とアイリスに叱られた直哉は直立姿勢で上顎を上げる。


「今までホール内から出てくる様子がなかった『ゲルルンギラス』ですが何故今になって活動し始めたのかは不明ですが、現状分かっているのはこのままこの個体を放置すれば『春風』は愚か大和までも壊滅的な被害を受けることは必至。なので、我々体ホール対策委員会は『ゲルルンギラス』の討伐ないしは撃退作戦を決行することにしました」

「当然だね。このまま野放しにしておいて何が委員会だって話だよ」


 こくりと頷く如月。

 どうやら今からこの化け物と戦うことになるんだなぁと直哉はごくりと息を呑む。

 心臓がバクバク跳ねるように煩くなるのはきっと彼が人間に近い体を得たからだろう。


「ですが我々は実に運が良い」


 如月はニコッと笑って——


「今この本部にはグリデンガルドから派遣された魔装連隊が居ます。彼女達に協力を願い出たところこれを許諾してくれました」

「おー。それは実に良いね。『ゲルルンギラス』に取っては実に残念な日だよ」

「魔装連隊? 彼女達?」


 って誰だ? と首を傾げているとアイリスが一言。

 

「シエル執行官達の事だよ。彼女達は委員会所属のハイウィザードじゃなくてね。さっき君に話した問題に取り組むための会議を本部で話し合ってたわけなんだけど……。まあ彼女達は強いよ〜。なにせ魔装連隊は一個小隊でホールを一つ制圧できるだけの戦力があるんだからね」


 と言われても目覚めたばかりの直哉にはしっくりこないので——

 

「へぇ〜。なら大丈夫ってことか」


 としか反応できない。


「何を呑気なことを言ってるんだい。君も戦いに出るんだよ」

「お、俺も!?」


 ビクッと体が跳ねる直哉。

 まさか目覚めたばかりでそんな化け物と戦わされると思っていなかったので当然の反応である。


「当然だろ? なに人任せにしようって考えるんだ。ホールに関する問題は本来僕らで対処しなきゃいけないんだ。君も委員会所属の戦闘員なんだからしっかり働きたまえよ」

「マジっすか……」


 モニターの映像が切り替わる。

 そこには空を優雅に泳ぐ『ゲルルンギラス』の姿が——


「俺、空飛べないんじゃなかったっけか?」

「大丈夫。今の世界じゃ空なんて飛べる手段は無限にもあるからね」


 安心したまえよ、はっはっは。と笑うアイリス。

 直哉は不安だ。目覚めたばかりでこの化け物相手に生き残ることが出来るのかと……。


「私からは以上です。詳しい作戦は高井教導官……砕華さんに聞いてください」

「はっ!」


 アイリスが敬礼してるのを見て直哉もそれに倣う。

「それじゃ行くよ」とアイリスに手を引かれるまま司令室を後にする直哉だったが、そんな彼を如月は見つめ——


(お兄さんが帰って来た今、もしかしたら例のカリギュラも討伐できるかもしれない)


 そう考えてデスクに置かれた資料を持ち上げる。

 そこに書かれた化け物——グリテンガルドと大和の間に存在するホールの中に生息し両方の世界を蝕む世界の膿。

 それを討伐できるのはあの砕華を単身撃破した高井直哉しかいないと考えたのだった。

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