第1話 遅咲きの魔法少女
地球とは別の異なる世界には魔法少女という概念が存在する。
その世界はマナで満ちていた。
空に浮かぶ大地、厳しい城に、魔学院と呼ばれる学舎。
この世界に生を受けた者ならばハイハイから掴まり立ち、掴まり立ちから二足歩行、二足歩行から飛行と飛行自体が当たり前の世界であった。
それがこの世界に生まれたものが初めて触れる魔法だ。
そんな世界に1人の少女が居た。
魔学院きっての無能、落ちこぼれ、ドロップアウトガールなど散々な言われようの少女。
彼女の名はシエル・クロッカス。
6歳から通う事になる魔学院なのだが、入学する頃には飛行以外にも、それぞれの家庭で魔法を習得しているのが普通なのだが。このシエルは飛行しか習得していない。
寧ろ飛行を習得したばかりだったのだ。
3歳で皆が空を飛ぶ中、シエルは掴まり立ちが出来るようになる程の2段階遅れて成長していた。
当然周りからはノロマだの、未熟だの呼ばれるのだが、シエルの両親はそんな謗りも気にせずシエルを大切に育てた。
『お前は才能ある子なのだから自分のペースでゆっくり成長すれば良いよ』
両親の温かな言葉と支えのおかげでシエルは魔学院でいじめを受けようが、馬鹿にされようが耐えられた。
耐えて耐えて学んで学んで培い培い……。
人より劣るシエルは人の10倍努力した。
時間が足りないのなら寝る時間すら削って鍛錬を積み重ねた。
ただ実直に……基本に基本を重ねて……。
全で劣るのならまず個を伸ばせ。
シエルが見出した言葉だ。
最初から劣っているのだから全てを一気に学ぶのは愚かだ。
まずは一つ極める。それが極まったら二つ目……。
そうして10年継続したある日。
シエルの国とは別の国と戦争が起こった。
この世界での戦争は魔法を使った航空戦闘が基本だ。
高速で飛行し相手の後ろを取り、魔弾を飛ばして穿つ。
地球で言う所の戦闘機同士のドッグファイトのような戦闘。
シエルも勿論徴兵され戦争に参戦していた。
誰もがシエルの死を予感していた。
あの落ちこぼれが生き残れるはずがないと。
あのノロマが戦果を上げるはずがないと。
あの未熟が英雄になれるはずがないと。
だれもがそう思っていた。思い込んでいた。
だがシエルは生き残った。
仲間が次々に散っていく中、彼女は戦果を上げる。
努力が華開いたのだ。
一つ目に極めた飛行で敵の追随を許さず、二つ目に極めた魔弾で確実に敵を仕留める。
出会えば死が確定するそんなシエルはいつしかこう呼ばれる事になる。
『蒼ノ凶星』と。
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