表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファンタジーアース〜変わってしまった地球の片隅で〜  作者: ギトギトアブラーン
第1章 高井直哉とアイリス。全ての始まり
13/20

第13話 Dr.サイコ・クルーエル 1

 場所は変わって自宅。

 直哉はアイリスと部屋に大柄な鬼人女性の砕華がリビングを招いたのだが、なんだか一気に部屋が狭くなったような気がしていた。


 砕華はというと2人と向き合うように座るや、いきなり頭を勢いよく下げたはじめて2人は目を丸くした。

 ただ、角が机に突き刺さってポカリと穴を開けたのは後で弁償でもしてくれるんだろうか……と直哉は顔を引き攣らせる。


「まさか私が喧嘩に負けるなんて思いもしなかったよ。その上でさっきまでの舐めた発言を許してほしい」

「舐めた……発言?」

「おいおい、さっきの私の言葉だよ。お前は強者だってのに、生意気言っちまったろ?」

「あ、あ〜。別に気にしてないからいいって。で? 如月ちゃんに聞かせたくない話ってなんだ?」


 あの後、砕華が如月を気絶させるや、話しづらいから静かな場所に案内してくれと言われてここに案内したわけだが、アイリスがいる手前女性を家に招くのは気が引けたが、「全然構わないよ」とアイリスは目をキラキラさせて許可したのだ。

 

 珍しいと直哉は思った。アイリスが大人の女性を歓迎する事実に。そしてその疑問は砕華のおでこから生えた角、それを真っ直ぐ見ていたアイリスの姿で納得する。


 リーデリッヒに鬼人どころか魔物なんていなかった。

 それに魔力だって聞き覚えのない未知の力だ。

 魔物と魔力、この2つがアイリスの知的好奇心に火を着けたらしく許可されたということだろう。

(まさかとは思うけど解剖とか考えてないよな?)


「なんだい直哉くん」

「別にぃ?」


 まだ14の子供ではあるがアイリスはリーデリッヒでは人体解剖学と人造兵器を専門に扱魔導科学者……マッドサイエンティストだ。

 だから、きっと、おそらく、多分。砕華に『体を開いて中身を見せて貰いたんだよ』と言い出すと直哉は考えたのだが——

 

「まあいいや。それで砕華さんと言ったね。話してくれたまえよ」


 茶を片手で、横綱かのように啜って——「じゃあ、さっそく」と砕華は話し始める。


「お前らって私たちのことなんて聞いてる?」


 なんてって言われても。と直哉は考える。

『人間の魂を喰らう魔物』と如月と狛割は言っていた、気がする。

 だから直哉は素直にそう答えた。そしてアイリスもきっと如月から話を聞いてたんだろう「直哉くんと同じだね」と答える。

 砕華は、はぁぁ……と思い思いため息を吐いたが超酒臭くて、直哉とアイリスは思わず顔を下に逸らす。


「はぁ、やっぱそう聞いてるかぁ」

「なんだ違うのか? 如月ちゃんは魂を喰らいにきたとか言ってたけど」

「誰が魂なんか食うかよ。私は言ったろ? 飯を食いにきたって」

「それは人間じゃ……」

「生の人間を食うかッ!」


 そう怒鳴らんでもええやないか。と直哉は思った。

 砕華ドンと机を叩いて立ち上がると部屋中が揺れた。

 深度3ぐらいはあっただろう。それぐらいの揺れだというのにアイリスは平然として茶をのんびり飲んじゃっていた。

 地震大国出身でもないのに肝が据わってるなぁ。と直哉は見つめていると。

 

 砕華は椅子に座り直りながら「すまん、つい力が入ってしまった」と申し訳なさげに「お前らは自分と同じ見た目の存在を生で食うか?」と聞いてきた。


 答えは簡単だ。

 直哉はアイリスと首を横に振った。

 食うわけがない。人間と同じ存在を、しかも生でだなんて。猿を食うことはまあ世の中にはあるにしても人間を食うなんて文化はイカれた部族ぐらいなものだろう。


「だろ? しかも魂だなんてさ、腹に玉らねぇ文句って何になるってんだよな。大体魂ってなんだよ。空気か? そんなフワフワしたもんどうやって喰ってんだよ」

「た、確かに……」


 魂の存在は直哉とアイリスは把握している。

 直哉自身は見たことはないが、アイリスはその目で見たことはあるらしい。

 アイリスから聞いた話ではあるが、もちろん魂は肉とか魚みたいに胃袋にドカンとたまるようなものではないし、それを見たことがないだろう砕華はどうやって食うかも知らないというわけだ。


「じゃあお前らは何を食いにきたってんだ?」

「決まってんだろ、旨い酒とツマミだよ」

「晩酌じゃねぇかッ!」

「だから飯を食いにきたっつっただろ!」


『飯を食いに来た』と言った……。言ったのか?

 よくよく思い出せば砕華自身から『人間の魂を食う』なんて言葉は聞いていないと思い出す。

 彼女が開口一番発した言葉は『飯を食いにきた』だったはずだ。

 

『魂を食いにきた』て言ったのは如月だ。

 何も知らない直哉は勝手に人間である如月の言葉を信じたわけだ。

 だがそれは仕方のないことだろう。同じ日本人で陰から日本を守ってるって機関のエージェントなのだ。


 それに対して砕華は魔物で鬼だ。酒呑童子だ。どっちを信じるかなんて100対0で如月だろう。


「なんで勘違いしてんだろうなぁ」砕華は頬杖をつきながら気だるげに、窓の外に目を向けて「なんでだと思う?」と目だけを直哉に向けて聞いた。

 なんで、と言われれば……そうだなぁ。と唸り。


「お前が鬼だからじゃね?」


 古来より妖怪とかもののけの類は神隠しとか生贄と称して人間の子供を攫ったとか、食ったとかおとぎ話でよく聞く。だからじゃないか? と考えたが。


「偏見だ! 鬼だからって、見た目が違うからって酷い言い草じゃないか!」

「ぐっ」


 時代が時代だから砕華のこの発言には困ったものがある。どうやら直哉が知ってる昔話は会食が違って伝わってるのかもしれない。


「鬼の主食は肉だ。猪肉とか兎肉とかそんなのだ。あとは酒。おかしいな、私は人間たちに酒を持ってくれば手出しはしないって伝えてたはずなんだが……」

「よっぽど怖かったんだろうな……」


 見た目が普通の人間とは違うんだ。

 それだけで人間からしたら恐怖の対象だろう——

 

「たまに喧嘩してぶっ飛ばしあうぐらいには仲良く知ったつもりなんだが……」

「それが原因じゃない!? 喧嘩でぶっ飛ばすってあの力を人に向けんなよ! そら人間を食うとか悪い話を広められるわ!」

「えぇ!? 喧嘩ってのは遊びじゃないのか!?」

「ちげえよ!? 互いに譲れない時があったりムカついた時に手が出てしまう現象が喧嘩だよ!?」

「まじか……鬼の間じゃ喧嘩は遊びなんだがなぁ」


 カルチャーショックを受けているようで初めて砕華が女の子らしく両手で口を隠して驚いていた。まあ女の子ではあるが……ムッキムキの。


「食事をしにきたって言ったけど、君はビルを倒そうとしてたじゃないか、あれはなんでかな?」

「そ、そうだそうだ。あれはどう説明すんだよ。あれでみんなが死にかけてたんだぞ」

「そ、それは——」


 砕華は目を泳がせて、口をモゴモゴとさせて、小さく何か呟いた。

 終えとアイリスは聞き取れず「「え?」」と聞き返すと——


「久々にパァーッとしたくて……その、はしゃぎすぎたって言いますか……」

「はしゃぎ過ぎたぁ〜!?」

「す、すまん! 宴会だったんだ! 今日は5年に一度の屍鬼達との約束の宴だったんだよ!」


(だからゾンビが湧いてたってのか……)


「でもなんであそこで宴会なんか……」

「明るかったんだ。ほら祭りって賑やかで華やかであるべきだろ? あそこは丁度いい宴会場だったんだ……」

「あー……」


 つまりはこうだ。

 砕華はあのゾンビ達と久しぶりの宴会をしようと、賑やかなイルミネーション会場にやってきたわけだ。

 それで酒を飲んでたこいつはテンション上がってビルをぶっ壊したと……。いや普通に迷惑じゃん。場所を考えろよ場所を。と言いたげに直哉とアイリスは砕華を睨みつける。


「俺たち人間の姿が見えなかったのか?」

「見えてました……」

「迷惑を考えなかったのか?」

「お酒が入って……つい……」

「つい。で殺されかけりゃ誰だってキレるわ!」

「ご、ごめんなさい!!!」


 だん! とテーブルにトドメをさすように直哉は叩いて立ち上がってしまった。

 砕華は涙目になりながらビクビクしてそんな彼を見つめる。

 その姿はさっきまでの貫禄は無い。

 ただの気弱い少女のようだ。いや……酒呑童子……『童子』は『子供』って意味もあったはず。

 まさかとは思うが昔の人はこいつの気弱な性格を知っててそう名付けたんじゃないだろうか。と直哉は少し考えた。


「まあお前が俺たちを食いに来たわけじゃないならもういい」

 

「許してくれるのか?」と説教された子犬のように上目で見上げてくる。か弱い見た目であればそそられる光景、だが可愛いのは顔で体はどこぞのプロレスラー並みだ。ギャップが半端ない。


「まあな。怪我人も出たわけじゃないし」

「そうだね。僕たちは別に君の言う機関の人間でもないからどうだっていいよ」


 だからさっさと家に帰りな。と直哉は言ったのだが——


「帰る家はもうないんだ……」


 と……——なんて?


「帰る家が……ない?」

「そうだ、私たちは本来、地獄って別次元の世界に住んでるんだが、今から5年前か……突然地獄の空間が破れて、行き場を失った私たちは昔交流してたこの世界にやって来たんだ……」


 空間が破れた? いや、5年前……。

 そこで直哉はハッ!? とアイリスに顔を向けた。

 どうやらアイリスも同じ考えに至ったようで俺を見るその目は『アレだ』と答えを知っているようだった。

 だから同時に言った。


「「クルーエルの仕業か!」」

ここまで読んで頂きありがとうございます!

もし面白いと思って頂けたら

評価とブックマークをして頂けると励みになります。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ