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第31話:才能(スキル)のダウンロード販売と、魂すら独占する大公閣下の絶対肯定

「……アリス。人間という生き物が、自らの価値を高めるために費やしている『最も無駄なプロセス』とは何だか分かるかしら?」


 超巨大・魔導豪華客船『A&Lグランド・リヴァイアサン』。

 天候も、時間も、世界中のあらゆるインフラを完璧に支配し、私たちの魔導商会A&Lが神すらもひれ伏す絶対的経済圏を確立している昼下がり。

 最上階のCEO執務室にて。ルミアは、ヒマ端末から空中に投影された『騎士や魔導師の生涯訓練時間とコスト』のグラフを見つめながら、氷のように冷徹な声で問いかけた。


「無駄なプロセス? うーん……失敗すること? それとも、移動時間?」

 私が空間転送で取り寄せた『旧クシャーン領産・完熟マナ・マンゴー』を頬張りながら首を傾げると、ルミアは美しい顔で盛大なため息をつき、バインダーで机を叩いた。


「違うわ。『努力(修練)』よ」


「努力……。素振りを一万回するとか、魔法の呪文を何年もかけて暗記するとか、そういうこと?」


「ええ。いいこと、アリス? 一流の剣士になるために十年、高位の魔法を習得するために二十年……。人間は『才能』を開花させるために、途方もない時間と労力を消費しているわ。でも、経営学的に見て、これほど非効率で不確実な『投資』はないのよ!」


 ルミアは、空中のグラフを忌々しげに赤く塗りつぶした。


「十年修行したからといって、必ず一流になれる保証はない。途中で怪我をして挫折すれば、それまでの投資(時間と金)はすべてゼロになる! 才能の壁、努力の限界……。人間という不完全なハードウェアに依存した成長システムなんて、資本主義の視点から見れば『ただの不良債権』よ!!」


「あー……。まあ、みんながみんな天才ってわけじゃないしね。努力しても報われないことはあるわ」


「報われないなら、私たちが『確実な結果』だけを売ってあげればいいのよ」

 ルミアの瞳が、狂気と強欲のゴールドの輝きを放ち始めた。


「人間の経験、技術、そして才能……。それらすべてをデータ化して、ヒマ端末から脳と肉体に直接インストールさせる! 努力という過程プロセスを物理的にスキップし、お金さえ払えば誰でも一秒で『最強の剣士』や『最高の芸術家』になれる世界を創り出すのよ! ……名付けて、超感覚・才能移植ビジネス……【A&L スキル・ダウンロード】計画の始動よ!!」


 ルミアの口から飛び出したのは、人間の魂に刻まれるべき経験や努力の結晶すらも、サブスクリプション(定額制課金)の商材に変えてしまおうという、恐るべき生命倫理のハッキング計画だった。


「なるほどね……! 脳のシナプス結合と、筋肉の記憶マッスルメモリーを、外部から強制的に書き換えるのね!」

 技術者としての私の脳髄に、またしても強烈なインスピレーションの電流が走った。

 私はマンゴーのフォークを置き、白板の前に立ってガリガリと新たな魔法陣と、一つの『ティアラ(ヘッドセット)』の計算式を書き殴り始めた。


「いい、ルミア。これを実現するためには、人工月『アストラル・ルナ』のネットワークを利用して、人間の『脳波』と『生体魔力』を完全に同期させるわ! この【A&L ニューラル・ティアラ】を頭に装着してヒマ端末を操作すれば、アストラル・ルナのサーバーから『達人の経験データ』が脳と筋肉に直接ダウンロードされるの!」


「素晴らしいわ! つまり、剣を握ったこともない素人が、一秒で『剣聖』の動きを完全に再現できるようになるのね!」


「ええ! 剣術だけじゃないわ! 語学、料理、楽器の演奏、さらには『カリスマ的な話術』まで! ありとあらゆる才能スキルを、アプリをインストールする感覚で自由自在に着脱できるようになるわ!!」


「…………ッ!!」

 ルミアの瞳孔が、限界まで拡大し、美しい三日月の形に歪んだ。


「あはははは!! えげつない! えげつなすぎるわアリス!! これぞ究極の錬金術! 才能の定額制サブスクリプションよ!!」


 ルミアは歓喜の声を上げ、猛烈な勢いでヒマ端末にビジネスモデルの構築を始めた。


「いい、アリス! まず富裕層向けには【マスター・スキルパッケージ(月額十億ゴールド)】を売りつけるわ! 彼らは努力など一切せずに、あらゆる分野の達人として社交界でチヤホヤされる優越感に浸れる。……でもね、支払いを一秒でも滞納すれば、即座にサーバーからの『同期』を打ち切るわ!」


「えっ? 同期が切れたらどうなるの?」


「当然、ダウンロードしたスキルは一瞬で脳から消去されるわ! もしダンジョンで強力なモンスターと戦っている最中に課金が切れたら、その瞬間に剣の振り方を忘れてモンスターの餌食になるってことよ!! 命が惜しければ、絶対に我が社への支払いを止めることはできないわ!!」


「うわぁ……。相変わらず命を人質に取ったえげつない集金ね……。でも、その『達人の経験データ』自体は、どうやって集めるの?」


「あら、こっちの方がもっとえげつないわよ」

 ルミアは、極上に邪悪な笑みを浮かべた。


「スラム街や没落貴族の中にいる『才能はあるが金がない者』や『血の滲むような努力で技術を身につけた者』から、【A&L タレント・バイアウト(才能の買い取り)】を行うのよ。彼らに大金を渡す代わりに、彼らの脳から『その技術に関する記憶と神経回路』を完全に抽出デリートする!」


「ええっ!? じゃあ、天才ピアニストの才能を買い取ったら、その人は二度とピアノが弾けなくなっちゃうの!?」


「その通りよ! 貧者は自分の『才能と努力の結晶』を切り売りして、一生を無能として生きる! そして私たちは、その買い取った一つしかない本物の才能をコピー(複製)して、世界中の富裕層に何万倍もの値段で無限にダウンロード販売するの! 究極の超高効率・才能搾取工場タレント・ファームの完成よ!!」


 才能を買い叩き、努力を売り飛ばす。

 富裕層はカネの力で全知全能の天才となり、貧困層は自らのアイデンティティすらも切り売りして空っぽの抜け殻となる。

 もはや人間の尊厳や個性を『データ効率』という名の狂気に飲み込む、惑星規模の悪魔のビジネスだった。


「さ、最高ねルミア社長! じゃあ、今すぐこのティアラの試作機を起動して、私が『完璧な社交ダンスのスキル』をダウンロードするテストを――」


「――私の許可なく、君の『魂の形』を、一ミリでも書き換えるなど、許されると思っているのか?」


 ふいに、執務室の空気が物理的に凍りつき、絶対零度の冷気と、極上の威圧感が部屋中を満たした。

 重厚な扉が開く音すらなく、漆黒の軍服に身を包んだ帝国の影の皇帝、ユリウス大公が私の背後に立っていた。


「ゆ、ユリウス様! お疲れ様です! どうですか、私たちの究極の才能支配ビジネス!」


 しかし、ユリウス様のアメジストの瞳は、これまでに見たことがないほど剣呑で、ドロドロとした独占欲と過保護な光に満ちていた。

 彼はスタスタと白板に歩み寄り、私が描いた『ニューラル・ティアラ』の図面を鋭く睨みつけた。


「アリス。君はこのティアラで、他者の経験や技術を自分の脳にインストールできると言ったな。……それはつまり、君のその美しく完璧な思考回路に、どこぞの馬の骨とも知れない他人の『不純な記憶や感情』が混入するということではないのか?」


「えっ? あ、いや、感情は省いて純粋な『技術データ』だけを抽出する設定ですから、人格が変わったりはしませんよ? 例えば、私が『完璧な淑女の作法』とか『無敵の護身術』のスキルをインストールすれば、ユリウス様の隣を歩く妻として、もっと完璧になれるかなって……」


 私が上目遣いでそう言うと。

 ユリウス様のアメジストの瞳が、狂おしいほどの熱と、圧倒的な『絶対肯定』の光を帯びて輝いた。


「……愚かなことを言うな。アリス」


 ユリウス様は私の腰をグッと引き寄せ、彼の手袋越しの冷たい指先で私の顎をすくい上げ、至近距離から私を見下ろした。


「君が私以外の誰かの技術や作法を真似る必要など、この宇宙のどこにも存在しない。……私は、君のその無邪気で常識外れな発想、たまにドジを踏む可愛らしさ、そして、私だけに見せる不器用な愛情表現のすべてを、魂の底から愛しているのだ」


 彼の極上の低音が、私の耳元で甘く響く。


「君の脳に、一ビットたりとも他者のデータを入れることは絶対に許さん。君の欠点すらも私にとっては至高の宝だ。……もし君の魂の形を一ミリでも歪めようとするシステムがあるなら、私はこの星のネットワークを物理的に消し炭にする」


 それは、常軌を逸した、魂レベルでの絶対隔離ストーキングと全肯定だった。

 妻のありのままを愛しすぎるあまり、彼女が努力をショートカットすることすら「不純だ」と切り捨てる男など、世界中のどこを探してもこの魔王パトロンだけだろう。


「ゆ、ユリウス様……っ。でも、私が護身術を持っていれば、少しはユリウス様の負担が減るかもしれないし……」


「私の負担だと? 舐めるな」

 ユリウス様は、私の唇を親指でそっと撫でた。


「君を守ることは、私の生きる意味であり、最高の快楽だ。君が剣を持つ必要など永遠にない。……君はただ、私の庇護下(うであの中)で、君自身の才能(魔法)だけを純粋に輝かせていればいいのだ。君に危害を加える世界のすべては、私がこの手で物理的に消去する」


「ひゃっ……!? ゆ、ユリウス様、それはもう愛の告白というより、私を完全にダメ人間にするための極甘な呪いじゃないですかっ!!?」


 私が顔から火が出るほど真っ赤になって抗議するが、もはや暴走した大公閣下の愛の暴力を止めることは誰にもできない。

 私の純粋なスキル革命は、彼の手によって「妻の魂の純潔を守り、絶対に自立させずに一生過保護に飼い殺すための絶対防衛システム」へと完全に組み込まれてしまったのである。


「(……ほんと、どこに行ってもこの二人のイチャイチャには頭が痛くなるわ。まあ、大公閣下の魔力がシステムにリンクしたことで、他者の記憶が混入するバグ(精神汚染)のセキュリティが神の領域まで跳ね上がったから、ビジネスとしては最高ね)」

 ルミアは、呆れ顔でヒマ端末を叩きながら、悪びれる様子もなく新たな事業計画書を完成させた。


 ◆◆◆


 それから数日後。

 『アストラル・ルナ』の通信網を通じて、世界中のヒマ端末に【A&L スキル・ダウンロード】のサービス開始が通知された。


 旧クシャーン帝国の領地だった、とある貴族の屋敷にて。

 無能な息子を後継者に据えようと焦っていた大貴族が、月額百億ゴールドの『マスター・スキルパッケージ』を契約した。


「おお……! 息子よ、この【A&L ニューラル・ティアラ】を被るのだ! これで今日から、お前は一国の軍を率いる『天才軍師』にして『剣聖』だ!!」


 息子がティアラを被り、ヒマ端末からスキルをダウンロードした瞬間。

 それまで剣すらまともに握れなかった青年の肉体が、突如として歴戦の猛者のような完璧な構えを取り、目にも止まらぬ速さで神業の剣舞を披露し始めた。


「素晴らしい……! 努力も修行も不要! 我が家の権力はこれで安泰だ!!」


 しかし、その翌月。

 大貴族がA&L商会への支払いを『一日だけ』滞納してしまった、その時だった。


『ピロロン! A&Lペイの残高不足により、スキル・サブスクリプションの同期を解除します』

 無機質な電子音と共に、ティアラの青い光が消えた。


「あ……あれ? 父上、剣ってどうやって持つんでしたっけ? 身体の動かし方が、全く分からない……!」

 昨日まで最強の剣士としてチヤホヤされていた息子は、完全に元の『ただの無能』に戻ってしまったのだ。


「ば、馬鹿な! すでに息子は近衛騎士団長の座に就いているのだぞ! 明日は御前試合だというのに、今スキルを消されては困る!!」

「払え! 今すぐ領地を売り払ってでも、A&L商会に課金するんだ!! 息子の『才能』を維持しなければ、我が家は破滅だぁぁぁ!!」


 文字通りの『才能の定額制サブスク』。

 自らの努力で身につけた技術ではないため、彼らは「課金」という名の生命線を握られたまま、永遠に魔導商会に資産を吸い上げられ続ける奴隷と化したのである。


 一方、スラム街の貧民たちは、自らの持つ『歌の才能』や『絵の才能』を数万ゴールドという端金でA&L商会に売り渡し、二度と歌を歌うことすらできない抜け殻となって路地裏に転がっていた。

 才能を買う者と、才能を売る者。

 世界中のすべての人間は、自らの『魂に刻むべき経験』という最後の尊厳すらも、魔導商会A&Lのシステムに完全に組み込まれ、吸い上げられ続ける軍門に降ったのである。


 ◆◆◆


 その恐ろしい才能支配の真実を、文字通りの『地獄の底』で支えている者たちがいた。

 グランド・リヴァイアサンの地下最下層、魔力自家発電プラント(懲罰房)。


「ぜぇ……はぁ……!! ぎ、ギルバート先輩!! なんですか今日のペダルの異常な重さはぁぁぁ!! 足が! 足の筋肉が千切れそうですぅぅぅ!!」

「知るかぁぁぁ!! 世界中の人間の脳波を書き換えるための『超・大容量マナ通信』の電力を、俺たちだけで賄ってるんだぞぉぉぉ!!」


 巨大な鉄の回しハムスター・ホイールの中で。

 ギルバート元王子とザイード元王子は、全身の筋肉を悲鳴を上げさせながら、滝のような汗を流して走り続けていた。


 彼らの目の前に設置された巨大モニターには、現在彼らの電力で処理されている『世界中のスキル・ダウンロード状況』がリアルタイムで表示されている。


『あらあら、元・殿下たち。随分と足取りが重いわね』

 頭上のスピーカーから、ルミアの冷酷な声が響く。


『いいこと? 貴方たちが走るのを一秒でもサボって魔力出力が落ちれば、スキルの同期が乱れて、剣聖のスキルをダウンロード中の客が【スライムの動き】になってしまうかもしれないわ。……もしそんな事態になれば、彼らからの【人生崩壊の損害賠償(数百兆ゴールド)】を、すべて貴方たちの借金に上乗せするからそのつもりでね』


「な、なんだとぉぉぉ!? なんで俺たちが、顔も知らない連中が努力をサボるための、チートエンジンのモーターにならなきゃいけないんだぁぁぁ!! そんなもの自分で練習しろぉぉぉ!!」

 ギルバートが絶望の血涙を流しながら叫ぶ。


『他人の才能を背負うなんて、王族にとって素晴らしい経験じゃない。……さあ、ここで貴方たちにお知らせよ』


「な、なんだ!?」

 ギルバートとザイードの顔が、恐怖で完全に蒼白になった。


『貴方たちは腐っても元・王族。だから、幼い頃から叩き込まれた【王族の完璧なマナー(礼儀作法)】や【基礎剣術】のデータが、まだ脳の片隅に残っているはずよね?』


「そ、それがどうした! これは俺が血の滲むような努力で身につけた、王族としての最後の誇りだぞ!!」


『ええ。だから、それを【A&L タレント・バイアウト】で強制的に買い取らせてもらうわ。……貴方たちの脳内から、礼儀作法と剣術の記憶を完全にデリート(消去)して、そのデータを富裕層に売り飛ばすのよ』


「なっ……!!? や、やめろぉぉぉ!! それを奪われたら、俺は本当に……ただの筋肉質なハムスターの獣に成り下がってしまうぅぅぅ!!!」


『あら、回し車を回すのに、高貴なマナーなんて必要ないでしょう? むしろ無駄な思考回路プライドが消えて、より効率的に走れるようになるはずよ。……データ抽出、開始!!』


「ひぃぃぃっ!! あ、あああぁぁぁぁぁっ!!!」


 無慈悲な光が懲罰房を包み込み。

 かつて私を無能と嘲笑い、自らの地位にあぐらをかいていた愚かな男たちは、その脳裏から「ナイフとフォークの美しい使い方」や「剣の素振り」といった【過去の努力の結晶】すらも物理的に消去され、完全に知性を失ったただの動力源(獣)として、無限の労働を強いられる運命にあった。


「アァァ……! ウガァァァァ……ッ!!」


 もはや言葉すらまともに発せなくなったギルバートたちの悲痛な獣の咆哮は、永遠に等しい時の牢獄の中で無限に反響し、誰の耳にも届くことはない。

 彼らの失われた誇りと才能は、最強のエンタメ帝国と才能支配を支えるための極上の商品として、今日も一滴残らず吸い尽くされていくのであった。


 ◆◆◆


 その日の夜。

 グランド・リヴァイアサンの最上階、ペントハウス。

 世界中を狂乱の才能支配で支配した熱狂など一切届かない、絶対不可侵の静寂の中で。


 私は、ペントハウスのバルコニーで、ユリウス様の広い胸の中にすっぽりと収まり、彼の鼓動を聞いていた。


「……アリス。世界中の人間が、努力を放棄し、他者のデータに依存するようになった。……だが、君だけは違う。君がその狂った頭脳から紡ぎ出す魔法の数々は、誰のデータでもない、君だけの美しい魂の結晶だ」


 ユリウス様は、私の銀髪を愛おしそうに撫でながら、極上に甘く、そして狂おしいほど熱い声で囁いた。


「ゆ、ユリウス様……。私、たまに失敗作のガラクタも作っちゃいますけど、それでもいいですか?」

 私が顔を上げて彼のアメジストの瞳を見つめると、彼は私の頬を優しく包み込んだ。


「君の失敗作すら、私にとっては愛おしい愛玩物だ。……アリス、君はそのままでいい。君に足りないものはすべて、私のこの手と、私の全存在をもって埋め合わせてやろう。君の才能は、私という絶対の防壁の中でのみ、永遠に純潔のまま輝き続けるのだ」


 帝国最強の影の皇帝からの、魂(才能)すらも囲い込む、逃げ場のない独占と愛の誓い。

 彼の言葉はどこまでも重く、狂気じみているのに。私はその圧倒的な庇護と熱に、完全に心を奪われ、ただ彼に寄り添うことしかできなかった。


「……はい。私、ユリウス様が守ってくれるこの腕の中で、ずっと私だけの魔法を作り続けますから」


 私が彼のアメジストの瞳を見つめ返し、そっと口付けを交わすと、彼は限界まで理性を吹き飛ばされたような瞳で私を抱き上げた。


「ああ。君のすべてを、今夜も骨の髄まで愛し尽くしてやろう」


 世界中の人間の努力と魂をビジネスに変えたえげつない計画の裏で。

 私たち二人の、誰にも邪魔されない、そしてどんなデータでも再現できない甘すぎる愛の時間は、果てしなく深く、無限に続いていくのだった。


(第31話 終わり)

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