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線香
主人なく
香炉を満たす
青雲の
灰から煙る
夏の残り香
父方の祖母の三回忌が過ぎ、七回忌の方が近くなってしばらく経った。
祖父の方はしばらく前に亡くなっているので、父の実家にはいま、誰も住んでいない。
それでも父と叔父が交代で掃除しに行ったり、盆や命日には親戚が集まったりもするので、しっかり管理はされている。
久しぶりに父の実家を訪れた。
庭の木が色づき始めており、遠くからも綺麗に見えた。
玄関の引き戸を開けると、小さい頃はあれだけ強く香った仏壇の線香の匂いが、全くと言っていいほど感じられなかった。
これはきっと匂いに慣れたからとか歳をとったからとか、鼻を悪くしたからとか、そういうことではないだろう。
仏壇に手を合わせ目を瞑る私を、香炉の灰の、煙たいような残り香が包み込んだ。
歳を食ってシワが取れることもあるのだな、と、手を合わせながらクスリと笑ってしまった。




