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カジロウは無意識に目を開けてテントの天井を眺めていた。
「あれ……ここ何処だ?……」
「起きました?シナガワの砦ですよ?」
ゼスタに支えられながらベットの上で上半身を起こすとお茶を渡された。
「いらない……」
「駄目ですよ?ヒールで出来たばかりの内臓は赤ちゃんみたいな物です……それにカジロウさんは人一倍ひ弱なんですから……」
暖かいお茶をすすりながらゼスタに聞いた。
「あれから何日経ってるの?」
……変な味、はぁ……お腹痛い……
「まだ5時間位しか経ってないですよ?」
そうか……じゃあクロダイポン、ダボハゼの4名くらいの隊長は作っておくか……
「待ってください!まだ傷が……」
「大丈夫……ちょっと骨にするだけだから……」
暖かいお茶を一口含み、勢いを付けてベットから降りた……
右肘と腹が突っ張る……新しい皮が若干小さいみたいだ……早速動きたくなくなった……
「そんな焦らなくても……」
「いや、シナガワもミナトも、結構ていたかったはずだ……攻める余裕があるならすぐに動いた方がいい……供養は終わってる?」
「終わってませんし……じゃあ骨にする対象をここに連れてきてください、供養をすぐにやりますから、カジロウさんが動く必要はないでしょう?」
「確かに……」
『クロダイとダボハゼ、それにクロポンを連れてこい!』
……さぁもう少し寝るか……
カジロウは反転し、ヨロヨロとベットに向かった。
「さぁ!はやく眠ってください!」
「いたたたたたたた!痛い!」
ゼスタは乱暴に腹を腕でロックして持ち上げてきた。
「痛い!止めろ!離せ!」
「そんな、大袈裟な……それだけ叫べれば大丈夫ですよ?」
ゼスタは乱暴にベットの上に放り投げてきた……こんな仕打ちひでーな……まぁ良いか……何故か怒る気力も起きない……心身共に疲れた……
骨達はテントに注文した死体を持って来てゼスタは供養している。
……生魚の匂いだ……懐かしいなぁ……スーパーの鮮魚コーナの風景……かなり昔の様に思える……いつも流れてる『お魚が天国』
「なんとか♩かんとか♩マーグロ♩サンマが食べられた」
「……サンマ?……マグロ?」
ゼスタが一々見てくるので布団を被って遮り、自分の世界に入る。
醤油とワサビで刺身と……サンマを塩で食いたいな……
味噌汁と……醤油か……ラーメン食べたい……
「カジロウさん!終わりましたよ!」
「了解!」
シータクとパワック達を隊長にすると情報が流れ込んでくる……
「おえ……」
「なんです?」
不必要な情報を最初からガード出来ないものか……
自分の肘と腹がどんな食感でどんな味だったかなんて知りたくなかった……
それとパワック達はお喋り過ぎだ。
『すまねぇな!食っちまってよぉ!あれ?俺の斧は何処だい?』
『兄貴!カジロウ様に一矢報いたみてぇだな!俺の武器もねえな……』
『二人共……カジロウ様が呆れていますよ?黙りましょう……カジロウ様、我らダボハゼは忠誠を誓います、何なりとお命じください』
『そりゃあよ、俺ら兄弟だって忠誠は誓ってるぜ!』
『まぁ……調子が良さそうで何より……お前達の国は後どれくらい戦力が残っている?兵隊を強行させようと思うんだが……』
『ミナトは今回の援軍で兵の大部分が失われました……この敗北で、民衆の心も離れて徴兵も間に合わないでしょう……今強行出来るならするべきと考えます』
『シナガワも似た様なもんだなぁ……今城まで歩を進めて周辺村を取り込めば余裕だろ』
『わかった……クロダイとハゼ……クロポンとダボはそれぞれ強行軍を編成し、城の包囲を命じる……他隊長は両軍をバックアップし、適当な捕虜と共に周辺村の懐柔を進めろ……将軍は砦で待機だ!』
『了解!』
「ゼスタ、骨達にはシナガワとミナトの城をすぐに攻略させる、人間達は周辺村の懐柔部隊に加わるまで、砦を防衛する様に伝えてくれ」
「良いでしょう」
ゼスタや骨達はテントから出て行き、しばらくしてロビンスが訪ねて来た。
「カジロウ様!」
「何の用か……大体わかるよ……強行軍に編成してくれってのか?」
「そうです!」
「まだ城を取り囲むだけだ……シナガワとミナト……両方攻めるが、どれ程の戦闘になるのかわからないぞ?
功を焦る気持ちを少し抑えて……激戦になった時に駆け付けた方が良いだろ……」
「わかりました……」
『シナガワ強行軍、ミナト強行軍、準備完了した様ですぞ?』
『出撃!』
強行軍一気に城まで歩を進めたが、情報通り大した抵抗もない……
後から追う懐柔部隊が次々に村を懐柔していく……
シナガワもミナトも悪政が続いた後に戦争が起こり、
民衆は腹ペコだったらしく、捕虜に通訳をさせて食糧を分け与えたら直ぐにウダゼ教の信者になった。
『よし!ミナト城についたゼェ!突撃だ!』
『待ってください、クロポン殿……今守っているデビルフィッシュの事はよく知っています……ここは私に任せてください』
『けっ!仕方ねぇな!』
ミナト城にダボフィッシュの意思を懐柔されたシータクが城に近づき代弁する。
「デビルフィッシュ殿!」
城の塀からタコのような髭を蓄えた魚人が顔を出す。
「誰だ?お前の様なものは……」
「私はダボフィッシュ様の代弁者です」
「おお!生きていたのか!して、ダボフィッシュは何処だ?」
代弁者の隣のスケルトンがデビルフィッシュに合図を送った。
「私の隣に居るのがそうです……」
「む?……どういう事だ?」
「デビルフィッシュ……私は死んでメグロの兵になった……しかしそれはどうでも良い……お前には戦況はどう見えている?
無駄な虐殺は好んでいない……」
「ふむ……確かにダボフィッシュの面影はある……だが、戦況が悪いからといって武将としては……」
「メグロの指揮者は人格者だ……それは保証する……お前は悪政に悩む民が不憫だと語っていたではないか……
お前は今、網の前にいるエビの様な物だ……少し波に揉まれて方向を変えて、背後に進めば良いのに……
意固地になって流されずに背後に進み、網に自ら飛び込むのか?」
デビルフィッシュは髭を触りながら叫んだ。
「しかし……ミナト国民の幸せを約束出来ると言うのか!」
「私が保証する、兵を指揮するカジロウ様は人格者だ……そしてウダゼ教の司祭……
メグロ国内では王以上の影響力を保持している……
お前もウダゼ教の噂は聞いているだろう?……
実際、弱小だったメグロの軍勢はこうしてミナト城のを取り囲んでいる……
私は生き生きとしたメグロ兵達を見た……
メグロの貴族と農民は互いに余裕があり、笑って語り合っていた」
「うーむ……しかし信じられんな……」
「わかった……じゃあこうしよう……
明日、メグロの援軍が来る……
その様子を見てお前が判断してくれ……明後日に色よい返事がない場合は武力によってミナトを討ち取る」
デビルフィッシュは翌日、双眼鏡片手に敵の援軍を眺めた。
メグロ兵とミナト国民が一緒に進軍してくる。
一部のメグロ兵の腰には魚の塩漬けをぶら下げられているのを見た。
「参ったな……人間には我らの食を理解出来ないと思っていたが……」
「デビルフィッシュ様……」
「副将……少し待て……」
副将に指示をしたデビルフィッシュは王の元へ向かう。
「フフフ……む?……
デビルフィッシュ……何故きた?敵は殲滅したのか!」
「国王……こんな時にまで女を……」
「ハハハ!儂は王だぞ?戦争はお前の仕事!私は遊ぶのが仕事だ!……ギャハハハハハ!……デ、デビルフィッシュ!何をする!血迷ったか!」
「時代は変わりつつあります……国王は最後の仕事を……」
「わ、わかった!剣を収めろ!……何をすれば良いのだ?」
『おい!ダボ!無理なんじゃねぇか?もういいじゃねえか!突撃だ!』
『クロポン殿……明日まで待つ約束でしょ?……む?』
ミナト城の門が開いて、デビルフィッシュが歩いて来る。
『よっしゃ!突撃だ!』
『やめなさい!』
「ダボフィッシュ……カジロウ様にミナト国の誠意を伝えてくれ……」
「……もう伝わってます……貴方の英断でミナトはより良い国になるでしょう」
デビルフィッシュはダボフィッシュにミナト国王の首を手渡した。
こうしてミナトは特に大きな戦闘もなく滅び去る。
……ミナトは上手くいったが……
「ミナトは降伏しましたよ?」
「うるせぇ!人間共!俺は絶対降参しねーぞ!死んだ方がマシだ!」
カジロウは城を取り囲んでも、抵抗するシナガワ国王に手を焼いていた。




