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神のペット  作者: 森羅 白夜
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第五話:紅楓渓谷の裂け目

 オフロード巡行は七日目の夕暮れ、紅楓渓谷の奥地に到着した。


 ここの「紅楓」は、旧人類の盆栽の植物とは何の関係もない。それらは高放射線と高酸素環境のもとで異化した超巨木であり、高さは概ね百メートルを超え、樹皮はひび割れた青銅の鎧のように粗く、樹冠は蒼穹の下に広げられた血色のドームのようであった。樹体の内部には高濃度で揮発しやすいテルペン系の油脂が流れているため、そよ風が渓谷を渡るたびに、山林全体が松脂と強い蒸留酒を混ぜたような、鼻をつく甘い香りを放った。


 車列は渓谷の奥、花崗岩の突き出た断崖絶壁の上で止まった。


 夜の帳が下り、微小な機械市民たちは焚き火を必要とせず、睡眠はなおさら不要であった。カシとヴィーナは車体の底から、針ほどの太さしかない微小合金アンカーを数本ねじ出し、浮上車を岩の隙間にしっかりと固定すると、続いて四台の小巧な高周波超音波獣除け装置を起動した。


 獣檻のゲートが物理スライドレールで引き上げられた。


 四人の背の高い巨人は、狭い鉄の檻から出ることを許され、断崖のプラットフォームの内側で手足を伸ばした。


 彼らの足首は依然として、親指ほどの太さの真っ黒な合金の鎖で固く留められていた。鎖の長さは精密に計算されており、彼らの活動半径をちょうど主人の防衛圏内に制限していた。


 アホは崖の縁にある風化した巨岩の上に座っていた。彼の右肩にはカシが自ら縫った革製の鞍座が載せられ、身長わずか四十二センチの象牙白の機械学者が、その鞍座の精巧な高分子背もたれに優雅に座っていた。


「マスクをきちんとしなさい、アホ」カシは人工発声器を開き、その声は渓谷の清く冷たい夜風を貫いた。「夜に入ると渓谷の冷気は乾いて重い。君の肺胞はその急な冷えには耐えられない。暖められていない寒気を吸いすぎると、粘膜が充血して腫れるよ」


 アホは太い右手を伸ばし、顔に巻いた粗い麻のスカーフを少し不器用に引っ張った。


 彼の視線は主人に留まらず、崖の下で幽かな青い月光に照らされた茫漠たる林海を越えていった。


 深い谷底の古い河道の傍らでは、体長三十メートル近い巨大な板歯サイが、重い足取りで水を渡っていた。その太古のタイタンが一歩踏み出すたびに、跳ね上がる水しぶきは数メートルの高さに達し、広く平らな背の上には鳥の巣さえいくつか作られ、大きな発光する蛾が数匹、その硬い甲の周りを旋回していた。


 アホの両目にはその巨獣の輪郭が映り、胸の中からは極めて微かな、ほとんど聞き取れないうめきが漏れた。


 その大きな体躯、そして何の鎖にも繋がれることのないあの歩みは、焼けた鋼の針のように、彼の混沌として未開の知覚神経を激しく刺した。彼は無意識に手を伸ばし、自分のうなじにある小さな金属の硬片に触れてみようとした――それは伴生神経リングのある場所である。


「触るな」折よくカシの声が響き、抗いがたい冷たさを帯びていた。


 アホの指は電撃を受けたように引っ込み、おとなしく膝の上に垂れた。


 しかし、大自然の暴力は、微小文明の余裕に何の余地も残さなかった。


 深夜一時二十三分、空は暗くなるどころか、心を戦慄かせる深い墨緑色へと変わった。極めて高濃度の酸素と複雑な地磁気放射が、紅楓渓谷の上空で、旧時代の人類が見たことのない超強対流嵐を醸成していた。


 空気は瞬時に、凝固した水銀のように重くなった。渓谷の狂風は岩の隙間で激しくうねり、鬼の哭き声のような鋭い唸りを立て、濃い松脂の甘い香りは極端に低い気圧のもとで窒息するほど鼻を刺した。


【最高レベル災害警報:雲底の電荷蓄積が臨界値を超過!】【警告:富酸素引火閾値を突破!直ちに資産を収容し、地表拠点を放棄、深層の岩の裂け目へ退避せよ!】


 老学者モールの緊急無線データパケットが、カシの中枢チップの中で、ほとんど警報の赤文字で画面を埋め尽くした。


 カシのレンズの絞りは瞬時に収縮し、直ちに発声器を通して鋭く叫んだ。「アホ! 伏せろ! 今すぐ檻に戻れ!」


 しかし、アホがしゃがむ動作をする間もなく、空は完全に裂けた。

「カッ――シャァ――ゴォォン!!!!」


 直径三メートル近い暗紫色の樹状の落雷が、神罰の槍のように一万メートルの上空から轟然と貫き下り、断崖の縁にある最も高い百年の油脂紅楓をまっすぐに打ち据えた!


 それはもはや旧時代の引火ではなく、酸素濃度38%の環境下で完全に制御を失った空気燃料の爆轟であった!


 巨樹全体が百分の一秒のうちに気化して爆裂し、粘ついて熱い燃油は空一面の灼熱の火の雨となって唸りを上げて席巻した! 狂暴な衝撃波は耳を聾する轟音を伴って断崖全体を横なぎにし、崖の縁にあった数トンもの重さの花崗岩の巨石はその場でひっくり返され、二台の微小浮上車は脆いブリキのおもちゃのように狂風に巻き上げられて半空へ舞い、微小な防弾外殻は千度の火海の中で耳障りな歪みの音を立てた!


 痛覚受容体を持たない珪素系生命にとって、これは機体の応力過負荷という物理的出来事にすぎなかった。


 しかしアホにとって、これはこの世に生を受けて以来、最も純粋な破壊の地獄であった。


 狂暴な轟音はアホの両側の鼓膜を直接震わせて裂き、鮮紅の血がその首筋を伝って奔放に流れた。四方へ飛び散った熱い油が露出した背に降りかかり、皮膚と肉は瞬時に焦げ黒い水疱を浮かべ、鼻をつくタンパク質の焦げた匂いが松脂の悪臭と混ざって鼻腔を直撃した。


「オオォォ――アアアア!!」


 アホは生涯で初めて、飼い慣らされたペットの従順な低い鳴き声から離れた、追い詰められた獣の瀕死のような絶望の咆哮を上げた!


 激痛、烈火、震える大地が、瞬時に彼の体内の原始的な生存本能を完全に爆発させた。過剰なアドレナリンは山津波のように血液脳関門を押し崩し、脳下垂体が長年にわたって吸収してきた鎮静鈍化酵素をきれいさっぱり洗い流した! 彼は狂ったようにその場で跳ね上がり、大きな躯体は極度の恐怖のために激しく痙攣し、両手は空中で狂ったように振り回された!


「アホ! 休眠ロックを実行せよ! これは最後の警告だ!」


 鞍座の中のカシは安全ラッチを固く掴み、指先から極細の高周波神経プローブを弾き出し、最大定格出力の電撃パルスを巨人のうなじへ激しく打ち込んだ!


 従来なら、その十分の一の電流でも、アホの四肢を麻痺させ、干し草の筵の上に従順に跪かせるに十分であった。


 しかし烈火と瀕死の恐怖に挟み撃ちにされる中、本来は懲罰のためのこの電流は、一本の高圧雷管のように、巨人の全身の筋繊維の一本一本を完全に爆発させた! アホは発狂したように背中へ手を回して自分の背を掴みかかり、粗く巨大な掌は比類なき蛮力で、あの象牙色の微小な本革の鞍座を一掴みで握り潰した!


「バキッ!」


 骨の砕けるような断裂音の中、鞍座を固定していた炭素繊維の留め具が弾け飛び、カシの華奢な陶器の躯体は万鈞の巨力に振り飛ばされ、半空に鋭い弧を描いて、断崖の下の真っ暗な灌木の茂みへ激しく叩きつけられた。

 続いて、落雷と衝撃波に蹂躙され尽くした断崖全体が、鈍い地質のうめき声の中で、恐るべき大崩落を起こした。


 数千トンもの花崗岩が轟然と崩れ落ち、無数の火の粉と転がる丸太を伴い、岩石でできた大瀑布のように、天を覆い地を覆って、底の見えない谷底の深淵へと叩き落ちていった!


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