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神のペット  作者: 森羅 白夜
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第四話:世界の縁へ向かう

ネオ・オリ城の西側の重力ゲートが、音もなく両側へ滑り開いた。


朝の気流が微かな電離の気配を帯びてエアロック室に流れ込んだが、車列の内外では、蚊の羽音ほど細い会話の声すら聞こえなかった。微小な機械社会において、「音声」とはとうに淘汰された非効率な媒体である。水滴のように扁平な微小磁気浮上巡行車四台が並んでゲートを滑り出し、その車体は長さ半メートルにも満たず、全身が滑らかで緻密な象牙色の酸化ジルコニウム・セラミック装甲に覆われていた。そして、これら小巧で精緻な先導車の後方には、高張力チタン・アルミ合金パイプを溶接して作られた、長さ六メートルの密閉式重型獣檻トレーラーがそれぞれ曳かれていた。


車内は死のような静けさに包まれていた。


カシと、設計院から来た他の二名の学者は、運転席の超伝導磁気吸着スロットに並んで固定されていた。車内には物理的な計器盤はなく、表示灯の点滅もなかった。純粋な珪素系生命である彼らのコア中枢は、多層の微小超伝導チップと光量子シナプスで織り上げられている。思想の交換に唇も喉も不要であり、ナノ秒単位の高周波データパケットだけが、互いのアンテナアレイの間を音もなく行き交っていた。


【ブロードキャストパケット-発信源:ヴィーナ】【データ要約:四号トレーラーの制振ダンパー調整完了。カシ、あなたの後方に曳かれている三型原種、心拍の変動が基準値より12%高いわ。鎮静ミストを注入する?】


【ユニキャスト返信-宛先:ヴィーナ】【データ要約:不要だ。気圧の読みが激しく上昇している。これは血肉の生物が環境勾配に対して示す物理的ストレス反応だ。外域の環境モニタリング値は確認したか?】


【ブロードキャストパケット-発信源:長老・モール】【環境ログ読み込み:現在の大気酸素濃度38.6%、成層圏オゾン層の総厚は旧人類工業時代のピーク時の2.4倍。気圧1.42標準気圧。警告:環境は極めて引火しやすい。車体外部の高圧電極はすべて強制ロック済み。】


カシは下位プロトコルでデータを確認し、やがてコアプロセスをローカルネットワークから切り離した。彼は微小な座席から身を起こし、光学レンズを回し、車両後部の偏光フィルター付き防弾窓越しに、後方に曳かれる巨大な獣檻を見やった。


アホは分厚い難燃性の干し草の山の中であぐらをかいていた。


この巨大な存在は車列の移動を察知したようで、どこか落ち着きがなかった。版築の壁のような広い胸は呼吸に合わせて激しく上下し、太い腕は合金の柵をしっかりと掴み、鼻翼は絶えず広がって、ブラインドの隙間から滲み込む野外の空気を貪るように嗅いでいた。


カシは立ち上がり、陶器の関節が極めて微かな機械的ロック音を立てた。彼は右手を上げ、細い指で喉元にある微小な圧電セラミック片を弾いた。


「ジーッ――」


高周波電流が人工声帯を流れる際の微かなノイズとともに、車両後方の拡音孔から、穏やかで柔らかく、しかし金属的な質感を帯びた声が響いた。


「アホ、伏せなさい。柵を掴んではいけない」


ネオ・オリ城において、珪素系市民の間は永遠の沈黙であった。空気を圧縮して鼓膜を振動させるこの原始的な意思疎通の方法である言語は、特に格下げされて彼らの機体の最下層に保持され、その唯一の用途は、肉質の蝸牛を持ち体内に熱い血を流すペットたちを戒め、なだめることであった。微小市民にとって、口を開いて話すことは、古代人類が鳥の鳴き声を真似るようなもので、見下ろす姿勢に満ちた擬音の遊びなのである。


聞き慣れた声を聞くと、アホの大きな躯体がはっと震えた。濁った淡褐色の瞳は素早く窓の向こうの白い小人を捉え、張り詰めていた筋肉はゆっくりと緩んでいった。彼は従順に身を伏せ、大きな顎を冷たい合金のシャーシに押し当て、喉の奥から媚びに満ちたうなり声を転がした。


車列は人工力場シールドの縁を完全に離れ、荒涼として寂しい旧大陸の裂谷ハイウェイへと突入した。


目の前の天地は、ほとんど横暴なほどのスケールで轟然と広がった。


それは果てしなく続き、天を覆い日を遮る深緑の大海であった。人類工業文明の無節操な煙突と排気ガスが消えた過去十数万年の長い歳月の中で、地球は驚愕すべき生態の暴動を再演していた。


この科学的な経緯は、かつてネオ・オリ城の中央大聖堂の石碑の奥深くに余すところなく刻まれていた。古代人類が出生の崩壊によって消滅した後、フロンガスや窒素酸化物といった工業的破壊物質は完全に絶え、成層圏で万年にわたって蝕まれてきたオゾン層はゆっくりと修復され、厚みを増し、太陽の高エネルギー紫外線を再び大気の外に隔てるようになった。しかし、真の危機は空からではなく、空気そのものから来ていた――二酸化炭素が、この星の上でひっそりと枯渇しつつあったのである。


しかし、珪素系生命は酸素を吸わず、温室効果ガスも排出しない。高酸素環境のもとでシダ類と巨樹が無秩序に繁茂するにつれ、植物は次から次へと空気中の二酸化炭素を幹や根、そして泥炭の中に固定していった。地層へ沈降していく炭素は、火山の噴火や岩石の風化で補える分をはるかに上回っていた。万年という長い尺度の中で、遊離した二酸化炭素は少しずつ汲み尽くされ、暗い地底に封じ込められていった。


大気中の二酸化炭素は日に日に枯渇し、温室効果はそれに伴って衰え、世界の平均気温は数万年の間、階段状に下降した。氷床は両極から赤道へ音もなく進み、この星は不可逆な全地球深寒の氷期へまっしぐらに向かっていた。


この死局の中で炭素と酸素の恒常性を再建し、地層に封じられた古い炭素を大気へ送り返すため、機械の先祖は浩瀚たる「復興プロジェクト」を始動した――彼らは極地の泥炭層と永久凍土を掘り開き、深く埋もれた炭素を空気に晒してゆっくりと酸化させ、また凍土の奥深くから、すでに絶滅した哺乳類の遺伝子を採取し、それらを大量にクローンして荒野へ放ったのである。


これらの動物は本質的には自然の産物ではなく、機械文明がこの星の完全な凍結を防ぐために投入した「生きた土起こし機」であった。彼らは植生を食み、泥炭を踏みにじり、土壌を掻き回すことで、本来なら植物に層々と地底へ封じ込められるはずの炭素を、摂食と腐敗と呼吸の間に空気へ送り返し、この星が極寒へ滑り落ちる足取りを、無理やり押しとどめていたのである。


しかし、進化の暴走は、冷たい論理の推演を超えていた。


40%近くという極端な高酸素の温室と長い歳月の触媒作用のもと、本来は旧時代の祖先と体格の変わらなかった生物たちは、狂ったような巨大化の突然変異を何度も繰り返していった。


「ドン……ドン……ドン……」


前方の地表から突然、太鼓を打つような鈍く規則的な震動が伝わってきた。

車窓越しに、カシは左側の、蒸散する霧に覆われた沼沢平原の上に、山岳に匹敵する巨大な存在がゆっくりと立ち上がるのを見た。それは体長二十メートルを超える「タイタン巨角ラクダ」であった。その肩甲の隆起は灰緑色の地衣に覆われた丘のようであり、太い四肢は直径二メートルを超え、一歩踏み下ろすたびに、微小な浮上車がすっぽり沈んでしまうほどの巨大な穴を泥の中に穿った。


巨ラクダは、重い破城槌のような角質化した長い吻を振り、直径半メートルもある古代のシダを一株まるごと乱暴に引きちぎり、粘つく涎の中で大口で咀嚼していた。その荒い呼吸音は数百メートル彼方でも、ふいごの轟音のように聞こえた。


その大きな影の下では、翼開長二メートル半を超え、不気味な金属ブルーの光を放つ変異した巨大トンボが数匹、沼沢の水面すれすれを高速で掠め飛んでおり、空気はその透明な複翅に裂かれて鋭い爆音を立てていた。


獣檻の中のアホは、すっかり見とれて呆然としていた。


彼は全身を柵に押しつけ、口を大きく開け、涎を顎から前腕へ垂らしていた。五メートル余りのアホの躯体の認識の中では、微小な機械の主人は華奢で脆弱でありながら逆らうことのできない至高の神であり、自分の小屋と街路こそが宇宙の全ての境界であった。この鋼鉄の力場の外の世界に、自分の数倍、さらには数十倍もの体格を持つ血肉の同類が跋扈しているとは、彼は一度も考えたことがなかった。


遺伝子の鎖の奥深くに潜み、何百世代にもわたって眠っていたある種の荒々しい共鳴が、外界の高濃度の酸素がアホの胸に注ぎ込まれるたびに、氷結した前頭葉の最下層で、陰火のように狂ったように広がり始めた。


一方、前方の微小な車内では、カシは冷淡に一連の光電スペクトルを記録し、脳内ローカルネットワークへ、この上なく淡々としたコメントを送った。


【生体酸素吸入ユニット-088型。二酸化炭素放出速度は基準達成。炭素・酸素循環は動的健全区間内。】


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