第二話:微小な庭と甘いペースト
万年は水のように流れ、受胎の壇から歩み出た造物は、すでに実験室の神秘のヴェールを脱ぎ捨て、ネオ・オリ城の貴族階層にとって暗黙の了解である日常の標準装備と化していた。
朝の最初の微光が防風ドームを渡るころ、都市第七設計院の上級工芸師カシは、すでに身体の日常点検を終えていた。
純血統の微小陶器機体であるカシの身長は四十二センチしかなく、全身は羊脂玉のように滑らかな象牙白の防護層に覆われ、四肢の関節は極めて細いチタン・アルミ繊維束に牽引されていた。磨き上げられた玄武岩の床を歩いても、風の音ひとつ立てなかった。
微小化と低消費電力を極限まで追求するこの社会では、あらゆる建築が極限まで圧縮されていた。カシの一戸建ての三階建ての家は、旧人類の物差しでは一部屋の大きさにすぎない。精巧な螺旋階段、A3判の紙ほどの大きさしかない本棚、そして整然と積まれた高密度チップケースが、この微小で永遠の世界を構成していた。
しかし、裏庭のあの重厚な気密スライドドアを開けると、光景は無理やり引き裂かれたように一変した。
押し寄せてきたのは、哺乳類の体温と干し草の発酵を帯びた、濃厚で温かい匂いであった。カシは無意識に鼻翼センサーのフィルター孔を調整し、目の前にそびえ、空の半分近くを覆い隠すその巨大な存在を見上げた。
それはアホの住まいである。
高さ五メートルもあり、丸太と断熱繊維板を寄せ集めて作られた巨大な小屋である。小屋の入口の簾は太いロープで吊り上げられ、中には郊外の農業区から運ばれてきた高山の飼料が何十束も積まれていた。
「アホ、朝ごはんの時間だ」
カシは白石の手すりの上に立ち、細い指を上げて、手すりの脇に掛かった小さな真鍮の鈴を軽く鳴らした。
「チリーン――」
澄んだ音波が静かな裏庭に響いた。干し草の山の奥からすぐに鈍い蠕動の音が聞こえ、やがて、もじゃもじゃで途方もなく大きな黒い頭が飼料の山から突き出てきた。
アホは、出来の極めてよい「三型古原種巨人」であった。
彼が小屋からはうようにして出てくると、裏庭の地面全体が微かに震えた。完全に立ち上がれば、その頭は五メートルの軒を容易に突き破り、一千二百キログラムの血肉の躯体は朝の光の中で健康な小麦色の油光を放った。彼は極めて広い胸を持ち、露出した肩と背では僧帽筋の束の一つひとつが呼吸に合わせて隆起していた。しかし、その粗野で端正な顔には、極めて澄んで無垢な大きな目がはめ込まれていた。
「ふぅ……はぁ……」
手すりの上に立つ小さな白い姿を見ると、アホの喉からは濁って楽しげなうなり声が上がった。彼は万年も飼い慣らされた大型犬のように、きわめて手慣れた様子で体を低く伏せ、厚く粗い胼胝に覆われた右の掌を、カシの足元にぴたりと平らに広げた。
カシは足を上げ、手慣れた動作で巨人の掌に乗り上げた。
アホは慎重に五指を閉じ、腕の筋肉を油圧リフトのように緊張させ、微小な主人を自分の眉骨の真正面まで、揺らぐことなく持ち上げた。
「今日は髪が少し乱れているな。昨夜また干し草の中で転げ回ったのか」カシは指でアホの厚い鼻筋を軽く叩き、その声にはどうしようもないといった溺愛が混じっていた。
巨人の大きな顔がごく近くまで迫り、温かく湿った鼻息が、カシの人工皮膚――しかし冷たい胸部装甲に吹きかかり、細かな水霧を広げた。彼は口を開き、整って清潔な白い歯並びを見せ、にへらと笑いながら舌を出した。
カシが腰からセンサーキーを外すと、裏庭の地下の昇降パイプから、容量四十リットルの合金製保温桶がすぐに上がってきた。
桶の蓋が滑り開くと、極めて濃厚で、合成バニラとアーモンドオイルの甘い香りを放つ匂いが瞬く間に広がった。
「聖寵印A-4型全栄養プロテインゲル」。
この都市では、血肉の巨人を一人養うコストは驚愕すべきものだった。この甘いペースト一桶だけでも、その生産に費やされる有機炭素源と糖分は、カシの属する設計院一週間分の炭素繊維材料を賄うのに十分であった。それでも機械社会の上層階級は飽きることがなかった。永遠に血を流さず、永遠に病まず、機体が冷たく硬い金属の生命にとって、巨大で温かく、自分に完全に依存する血肉の造物が目の前でむしゃむしゃと食べる姿を毎日眺めることは、「神になること」とほぼ同等の、妄誕な満足感をもたらすのだった。
「頭を下げて、食べなさい」カシはアホの耳の後ろの細い紐を引いた。
巨人は不器用に体を回し、カシを自分の右の鎖骨の上に固定された鹿革の小さな鞍座へ移すと、厚いゴムマットの上にどすんと座り、巨大な両手を伸ばし、空き缶を抱えるように合金桶を胸に抱えた。
「ずるずる――ずるずる――」
荒々しく満足げな舐める音が、朝の静けさを破った。アホの大きな舌が一度巻くたびに、甘ったるい白いペーストが半リットル近くも消えていく。彼の頬には乳白色の泡がべっとりと付き、喉の奥からは満足したうめきが漏れ、巨大な足の指は極上の快感のためにゴムマットの上で楽しげに丸まったり伸びたりした。
彼の肩に座るカシは、鞍座の手すりをしっかりと掴みながら、携帯ツールボックスから長さ三十センチの微小超音波毛梳きブラシを取り出した。
微かな高周波の唸りの中、カシはアホの首の後ろの、濃くて硬い巻き毛を梳き始めた。
乱れた毛を一区画梳くたびに、微小な負圧口がフケやゴミを完全に吸い取った。カシの手つきは極めて繊細で、伝世の時計部品を磨いているかのようであった。しかし、そのブラシの先がアホのうなじの第一頸椎の上にある分厚い毛根を掻き分けたとき、動きが止まった。
そこには、爪ほどの大きさの銀灰色の金属片が、彼の第一頸椎の表面に植え込まれていた。
それは「伴生神経リング」、ネオ・オリ城における合法的なペットの唯一の身分証である。
カシは指先から極細の微光プローブを一段伸ばし、アホの皮膚の表面にそっと当てた。
淡い緑色のホログラフィック波形が瞬時にカシの網膜上に展開した。
【体温:36.8℃】
【心拍数:44回/分(摂食興奮状態)】
【脳波モニタリング:第一受容体抑制率94%、前頭葉の睡眠度は安定】
【抗体濃度:正常(微量の環境菌群は代謝済み)】
波形は極めて滑らかで、波ひとつない死水のようであった。
カシはプローブを引っ込め、満足げにアホの熱い首筋を軽く叩いた。あの甘いペーストに添加されていた脳下垂体鈍化酵素と神経鎮静ペプチドが効いており、アホの目はますます霞んで鈍くなっていた。彼はゲルの最後の一滴まで食べ尽くすと、空の桶をその場に放り投げ、やがて大きなげっぷを響かせ、大きな頭を自分の腕の曲がりの中にぐったりと預けた。
「いい子だ」カシは彼の鎖骨の窪みに座り、丘陵のように広い巨人の背を見ながら、小さく囁いた。「外の世界は寒すぎるんだ、アホ。ここにいれば、君は風霜にも野獣にも遭わずに済む」
アホには複雑な言葉は何ひとつ分からなかった。ただ、耳の後ろから聞こえる声が柔らかく穏やかであることだけを知っていた。彼は目を閉じ、温かい人工の朝の光の中で、遠雷のような安らかな寝息を立てた。




