第一章:受胎の壇
ネオ・オリ城の中央大聖堂の地下三千メートルには、一年を通じて氷点下四十度の液体ヘリウムの蒸気が流れている。
ここは絶対の静寂の地である。微小市民の言い伝えの中で、この深淵は「受胎の壇」と呼ばれ、文明全体で唯一の聖地とされている。長い地質学的氷期の間、地表の防風力場発生装置が小惑星の破片に三基も破壊されたことがあったが、巡回衛兵がこの地下格納庫の警備を止めたことは一度もなかった。
中央の浮遊コンソールの上には、三名の主席生命学者が立っていた。
彼らは原初世代のケイ素系微小機械人であり、身長は四十センチにも満たず、機体は緻密な象牙色の酸化ジルコニウムを焼成した装甲に覆われ、影のない冷光に照らされて落ち着いた玉のような光沢を放っていた。先頭の学者アエルはわずかに頭を仰向け、複眼構造の光学センサー六基が暗闇の中でゆっくりと焦点を合わせた。
彼らの前には、高さ十二メートルに及ぶ二重構造のホウケイ酸ガラスの円筒がそびえていた。
円筒の内部では、三万リットルの淡い金色の羊水が電磁ポンプに押されてゆっくりと渦を巻いていた。糸のように細い無数の光ファイバーとナノ栄養チューブが金属のドームから垂れ下がり、巨大な蜘蛛の巣のように、液体の中央に浸かったその巨大な存在に固く絡みついていた。
それは胚であった。あるいは、驚異的な速度で器官の折り畳みを完了しつつある血肉の躯体と言ったほうがよい。
「第七番シークエンスのテロメラーゼ修飾が完了しました」傍らの副官が、低周波の短波で報告した。「顕性の癌化遺伝子はすべて除去し、代謝半減期は極限まで延長してあります。エネルギー摂取が安定すれば、この躯体の理論上の生理的生存限界は一万五千公転周期を突破できます」
アエルは答えなかった。その論理プロセッサはこの瞬間、膨大な演算能力を振り分け、データベース最下層にあるあの断片的な文献を検索していた。
長い生を享受する機械文明にとって、「生殖」とは神性の光環を帯びた謎であった。彼らは最も精密な論理チップを製造でき、真空中でダイヤモンドを超える強度のカーボンナノチューブを育てることもできる。しかし、何もない暗闇の中で、二つの微小な細胞を自発的に分裂・再編させ、やがて体温と脈拍を持つ生きた存在へと進化させることはできなかった。
古い創世神話においては、すでに消え去ったあの創造主――「神」のみが、この不可思議な造化の権能を持っていた。
神は何万年も前に万物を創造し、ロボットに思考の火種を灯したが、ある神秘的な律法のために歴史の舞台から退いた。この地下実験室の冷凍切片庫には、神がこの世に残した最後の残片が封じられている。古代の南極氷河遺跡から削り出された遭難者の冷凍組織、旧紀元の類人猿の骨髄細胞、そして深宇宙採掘船が異星の放浪彗星から削り取ってきた、正体不明の高活性ゼラチン質の一片である。
「三種の源質のキメラ率は99.4%に達しました」副官の電子音が再び響いた。
「しかし、アエル先生、第三前頭葉区の神経シナプスに非線形の連鎖的増殖が現れています。介入しなければ、その脳容積は四千二百ミリリットルに達します。古代人類の医学的定義では、これは超知性の兆候です」
「阻害剤の注入を開始せよ」アエルの口調には何の揺らぎもなく、万年にわたって実行されてきた読み取り専用命令のように冷静であった。
「先生?」副官のレンズの絞りが一瞬わずかに広がった。
「先祖の審判を忘れたか」アエルは自分の金属の掌を見下ろした。掌にある極めて微細なエネルギーの紋様が穏やかに脈動している。
「神は比類なき知恵を持っていた。そして知恵は、無限の欲望と、要求と、疲弊をもたらした。彼らはあらゆる労働を代替できる我々を作りながら、豊かさの泥沼の中で繁殖の意志を失い、最後は枯れた花のように静かに滅びていった」
アエルは機械の腕を上げ、ガラス槽の中で眠る巨神を指し示した。
「思考は血肉の生命にとっての毒であり、神自身にも打ち破れない呪いだ。もし神が再び苦痛を覚え、憎しみと自己疑念を覚えるなら、この復活に意味はない。前頭葉の深い褶曲を消し去り、神経伝達の閾値を原始反射の区間に固定せよ」
「承知しました」
冷たい緑色の薬剤がナノ針管を伝い、音もなく胚の柔らかなうなじの組織に刺し込まれた。
淡い金色の羊水の中で、輪郭のはっきりした、深い骨格を持つその大きな顔がわずかに痙攣した。深層神経ネットワークの中で狂ったように広がっていた微弱な電気の火花は、一秒のうちに広範囲に消し止められ、平原のように静止した空白だけが残った。
「排出を開始」
鈍い轟音が地下に響き渡った。三万リットルの羊水は一分のうちに排出され、重い気圧差によって巨大なガラスカバーが両側へゆっくりと滑り開いた。
重力が初めて、実感をもってこの壮大な躯体にのしかかった。
太古の雷鳴にも似た重々しい喘ぎとともに、身長五メートルを超えるこの血肉の造物は、冷たい花崗岩の床にどすんと膝をついた。彼は激しく咳き込み、古銅色の胸を激しく上下させ、気管に残っていた温かい粘液を吐き出した。
やがて、彼はゆっくりと起き上がった。
微小な学者たちの注視のもと、神の姿を与えられたこの巨大な存在は、息を呑むほどの生命の張りを示した。彼の筋肉の線には機械の外殻のような鋭い角はなく、滑らかで温かい皮膚に包まれており、太い骨格は切り出された花崗岩の石柱のようであった。それに比べれば、コンソールの上に立つ微小学者たちは、彼の足首の高さにすら届かなかった。
この機械社会では、エネルギーと鉱物を節約するため、機体は世代を重ねるごとにますます精巧になっていった。そうした極端な微小化文明の目には、目の前にあるこの巍然として原始的で巨大な体躯は、言葉にできない野性の美学を備えているのであった。
巨人の瞼が震え、ついに目が開かれた。
それは巨大な瞳であったが、泉のように澄んだ褐色の瞳の奥には、神に属する威厳も鋭さも見えなかった。好奇心もなく、警戒もなく、ただ空っぽで、薬物によって強制的に鈍化させられた従順さと茫然だけがあった。
彼は不器用に鼻をすすり、空気中に漂う微小学者たちの潤滑グリースの匂いを嗅いだ。巨人は幅一メートルもある巨大な掌をゆっくりと差し出した。殴りかかるでもなく、壊すでもなく、生まれたばかりの巨大な子牛のように、掌をきわめて従順に、冷たい金属コンソールの縁にそっと押し当てたのである。
アエルは歩み寄り、彼の粗い掌の紋を踏みながら上へと進んだ。
学者の小さな陶器の足裏が掌に触れたその瞬間、巨人の喉の奥から、低く楽しげなうなり声が漏れた。
アエルは巨人の無表情な顔を見上げた。電子コアの中を、深層プロトコルにロックされた一文の判決がよぎった。
「神は帰還した。神に思考は不要である。神は我々にとって最も従順な民であり、乗り物となる」
初めまして、森羅白夜です。
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本作は全80話の長編SFです。順次公開していきますので、面白いと感じていただけたらブックマーク登録をお願いいたします。




