第四十九話 建国祭へ向けて③
翌日は辺境の地から一番近いタハラの街の商業ギルドへ行って、諸々の手続きを行いました。
屋台から店舗へ昇格したため、場所の移転や営業時間、各種納税について相談する必要がありました。
国への納税は免除されましたが、商業ギルドへは年会費を収めなければなりません。
店舗になると、売上の向上が見込める分、年会費も少し高額になります。
王都の屋台も店舗になるため、しばらくは二箇所を行き来する必要がありますね。
また私は建国祭に向けてアフタヌーティーセットを用意したいと伝えました。私の元いた世界の概念ですから、当然非常に驚かれました。
「サンドイッチとキッシュ、パイにスコーンにタルトまでついてくるんですか。なんとも豪華なセットですな。しかしそこまで手のこんだものとなると、赤字になりませんか」
「小麦粉、卵、牛乳などはまとめて仕入れれば良いですし、タルト生地とパイ生地は一定期間冷凍保存がききますから、人を雇う必要がないんです。元は街の人を可能な限り浄化するための催し物ですし」
「なるほど。話題性は間違いないですし、それなら一定の利益も出せそうです」
担当の方は一度持ち帰って会議にかけてくださり、結局王都で青空茶会を開催していただけることになりました。
もし評判が良ければ、以降も南へ下っていって色々な街で開催します。これなら、多くの方に食べてもらえるはずです。
私は商業ギルドへ行った足で、いつもお世話になっている商店にも出向きました。突然の大量発注に目を白黒させていましたが、結局引き受けてくださいました。
帰り道、皆で話しながら歩いていると、アフタヌーティーセットに関する話題になりました。
「ねえ、アリサ。『アフタヌーンティーセット』って、アリサの国の人はみんな食べてたの?」
「全員が全員ではありません。特に女性に人気で、昼食を軽めにして、デザートの時間に食べている人が多かったです」
「へ〜。豪華なデザートだね!」
「大切な日のお祝いですとか、大事な人とのお出かけの日に食べたりするんですよ」
「今回はどんなパイやキッシュを作るの?」
「キノコと生ハムとチーズのキッシュ、それに子羊のパイ包み焼きを考えています。パイ包み焼きは塩気があるので、甘いものとの相性もいいと思います」
さて、メインはそれとして、後はスコーンとタルトですね。色々考え甲斐がありそうです。
「そうだ! シュクレ。あなたには大事な仕事をお願いします。ティースタンドに敷くレースペーパーを作ってほしいんです。材質はヴァルハルトが詳しいと思います。見た目も華やかですし、油分を吸って、汚れを防いでくれるんですよ」
「チュウ〜!!」
まるで「任せて!」と言いたげにシュクレは胸を張りました。
みんなで作り上げるアフタヌーティーセットが少しずつ形になってきて、私は手を握るヴァルハルトを見上げます。
ヴァルハルトは茜色の瞳で私と視線を絡め、「こんなに建国祭が楽しみなのは初めてだ」と愉快そうに笑いました。




