第四十八話 建国祭へ向けて②
街で食事をした後、私たちはエステルやシュクレが待つマジックハウスへ帰りました。
魔王はすでにいなくなっています。一度魔界へ戻ったのかもしれませんね。
「今、戻りました。何もなかったですか?」
「なーんにも! 平和そのものだったよ!」
「チュウ」
私は王家の話をエステルとシュクレに伝え、そのまま夕食を作ることにしました。
せっかく魚醤があるので、今日は唐揚げにします。 ホロホロ鳥の骨付き肉を塩コショウし、魚醤と酒に漬け込んで三十分置きます。
それから溶き卵を加えてまた一時間置き、小麦粉をまぶして油であげます。一度軽く揚げて、ニ度揚げするとさらに美味しくなりますね。
付け合せはトマトとチーズのカプレーゼ。それにヴァルハルトが取りに行ってくれた、貝のクラムチャウダーにしました。
「いっただっきまーす! わぁ、このカラアゲ? って不思議な味⋯⋯! 塩気が効いてて美味しい〜!」
「唐辛子の調味料を入れるともっと美味しくなります。今度探してみますね」
「ギョショウを使った料理は初めて食べたが、何にでも合いそうだな!」
「チュウ!!」
このメンバーで夕食をとるのも久しぶりですね。私たちは食べながら今後の話をしました。
「ねえ、アリサたちはこれからどうするの?」
「瘴気の影響を受けた街の人たちに、私の作ったものを食べてもらえればと思っています。ニヶ月後の建国祭までに用意するつもりですよ」
「何を作るの?」
「タルトやパイ、キッシュやスコーンなどですね。甘いものが好きではない方もいますから」
私は三段のアフタヌーティーティーについて話しました。エステルは目を輝かせながら聞いています。シュクレは少しよだれを垂らしていました。
「きっとすごく綺麗なんだろうなぁ⋯⋯。ねえ、私とシュクレも手伝っていい?」
「もちろんです。たくさん作らなければなりませんから、人手がいくらあっても足りません」
「建国祭かぁ⋯⋯。私は一度も参加したことがないけど、大きなお祭りなんだよね!」
「そうだな。一番遠いタハラの街から一ヶ月強かけて馬車で王都まで行く人もいるくらいだ」
「ねえ、舞踏会とかはないの?」
「そう言えば、あったかもしれませんね。私は仕事のため不参加でしたが」
「ふ〜〜〜ん⋯⋯」
エステルがまた何か企んでいるような顔でニヤニヤしています。
「それって誰でも参加できるの?」
「貴族や王家関係者に限られていたはずです」
「なら、ヴァルハルトとアリサも踊ってきたら?」
「えぇ!? でも私はダンスがあまり上手では⋯⋯」
「俺が支える。せっかくだから参加しないか? アリサ」
思わぬ流れに私は少しためらいました。もし失敗してヴァルハルトに恥をかかせてしまったら⋯⋯。イヤな想像が頭を駆け巡ります。
反対に、ヴァルハルトはいつも通り「なーんていいつつ、俺が転んだらごめんな!」と冗談めかして笑っています。
シュクレまでなんだか楽しそうに「チュウ〜?」と上目遣いに見てきました。
私は観念して、「お手柔らかにお願いします」と返しました。
「なんでエステルは私とヴァルハルトのことになるとニヤニヤしてるんですか」
「あっ!! 今呼び捨てした!! ねえ、いつから!? いつから〜??」
「ど、どっちでも良いじゃないですか。ですよね、ヴァルハルト」
「俺は呼び捨ての方が嬉しいけどな!」
段々顔が火照ってくるのを知られたくなくて俯いていると、ヴァルハルトがクラムチャウダーのおかわりをよそってくれます。
私は段々自分の中に一つの小さな感情が灯っていることを、ごまかしきれなくなっていました。




