第三十七話 帰還①
帰りも五日間飛び続けて、私はようやく辺境の地へ戻ってきました。
まずフレイヤを休ませ、マジックハウスへ行って水と食べ物を持ってきますと、フレイヤはごくごくムシャムシャと喉を鳴らして飲み食いしました。
エステル、シュクレ、魔王は辺境の街か王都へ出ているのか、家の中には誰もいません。
私はまず湯浴みをして着替え、水を一杯飲んで深呼吸しました。
ペンダントをのぞき込むと、ヴァルハルト様は横になった騎士団の騎士に何事かを語りかけています。横になった騎士は大勢いるようで、皆生気のない虚ろな表情をしていました。
「早くしなければ⋯⋯!」
私はフレイヤの休憩を待ち、すぐに王都へ旅立ちました。
王都の手前の草原に降りますと、白目をむいた様子のおかしなゴールデンコッコがふらふらと近寄ってきました。
私はマジックポーチに入れていた「竜の鱗の結晶」を取り出し、持ったまま祈りを捧げます。
ゴールデンコッコは黄金色の眩い光に包まれ、あっという間に金の羽を持つ美しい鳥になりました。 穏やかで敵意は感じられません。「コケッ」と一声鳴いて、どこかへ歩いていってしまいました。
このように魔物を浄化しながら王都へたどり着き、正門から中へ入り私は真っ直ぐあの兄妹の元へ向かいました。家を訪ね、戸をノックしますとお兄さんの方がひょこりと顔を出します。
「アリサ様!!!!」
お兄さんは嬉しそうな顔をして、「妹はまだ歩くことは難しいっすけど、大分よくなりました!」と報告してくれます。
「あの後、再度具合が悪くなったりはしていませんか?」
「全然っすよ! 食欲も戻って安心っす」
中へ招き入れてもらい、奥の部屋へ通してもらうと妹さんは身体を起こして縫い物をしていました。
「アリサ様! お陰様で、かなり調子がいいです」
「よかったです。もう一度見せてもらってもいいですか?」
私は妹さんに近寄り、浄化の力を使いました。妹さんが胸を押さえ、その身体から黒い靄が吹き出し金色の光に包まれていきます。
「う⋯⋯!」
「マリン!?」
お兄さんが駆け寄り、妹さんの背をさすります。最後に妹さんがコホッとむせると、黒い靄はキラキラと消えていきました。妹さんは涙をこぼしながらゆっくりと瞳を開きます。
「なんだか、身体のすみずみまで清められたような気がする⋯⋯」
「これで完治です。数日すれば歩けるようになると思いますよ」
「ありがとうっす! ありがとうっす⋯⋯!!」
お兄さんは感極まってぼろぼろ泣いています。兄と妹で抱き合い、互いの体温を分け合っていました。
「遅くなってすみません。他にも、似たような症状の方はいませんか? 今なら皆さん治せると思います」
「その⋯⋯あまり大きな声では言えないっすけど、国王陛下がお病気で伏せっています。一度アリサ様に浄化してもらったら、状況が変わるような気がするっす」
「そうでしたね⋯⋯。ただ私は一度王家を追われた身です。何より王家にはレスティ様がいらっしゃいますから、容易に出入り出来ないのです」
「すんません。余計なことを言いましたね」
「いいえ。貴重な情報をありがとうございます」
「俺たちは、アリサ様こそ本当の聖女だと信じています。お礼も何もできず申し訳ないっすが」
「大丈夫です。今度また他の方に同じような症状が出たら教えてくださいね」
「はい! 任せてくださいっす!!」
こうして兄妹の家を後にし、私はそのまま王都の屋台へ出向きました。




