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無実の罪で追放されたので、お菓子で魔物を浄化しながら楽しく暮らします。 〜偽聖女のせいで国が大変? わたしにどうしろと〜  作者: うぐいすもち


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第二話 出会い

 唯一案じたのは、私無き後の王国についてでした。殿下やレスティ様には思うところあれど、国民に何一つ否はありません。瘴気も払われず、治癒も行われなければ、国はまたたく間に傾くのではないでしょうか。

 

 ただ⋯⋯。レスティ様は魔法学院で優秀な成績を収めていたそうなので、どうにかなってしまうのかもしれませんね。

 

 おそらく、レスティ様が次代の聖女として王国に君臨されるのでしょう。そして王太子殿下と結婚され⋯⋯ああ、これ以上はやめておきましょうか。要らぬ妄想は自分を苦しめるだけです。


 私は侍女をつけることも許されず、御者と護衛二人で辺境の地へ送られました。馬車で五十日以上かかるほど遠方のその地は、特に瘴気が濃く魔物も多く出没すると言われています。

 

 魔物にでも食われてしまえばいい。

 

 そうほのめかれされているように感じ、私の胸の奥がまたじんと痛みました。

 

 旅中、町中で食料を買いながら進みましたが、聖女としての遠征を覚えていた街の人が驚いたように私を見つめながら何事かを話していました。罪人ではないものの、それに近い境遇でしたから、何をウワサされても仕方ありません。


 さて、遥かな旅路を終え、ようやく馬車を降ろされた私は、辺境の地の粗末な小屋、そして最低限の衣食住を与えられました。 

 

 護衛たちも帰ってしまい、私は召喚された時と同じく、たった一人になりました。

 

 長旅で身体の節々が痛み、足は少しむくんでいます。自分に何度か治癒の魔法をかけ、近くに流れていた小川の水を飲み、ようやく動けるようになりました。


「さて、まずは瘴気を払ってしまいましょう」


 私はまず集中して、周囲の瘴気を浄化します。身体から光があふれ、淀んだ空気が清々しいものになりました。草木が芽吹き、可愛らしい花も咲いています。これでしばらく魔物も近寄ってこられません。


「さて⋯⋯後は食べ物をどうにかしなければなりませんね」


 保存用の食料は三日分。それ以上は自分で確保する必要があります。

 

「探しに行きましょうか」


 そうつぶやいて、外へ歩みだそうとした時。


「そこに誰かいるのか?」


 男性の声が聞こえました。 

 

 周囲に家どころか建物さえ見えない辺境の地に、誰がいると言うのでしょう。目を凝らすと、浄化が届かなかった濃い瘴気のその先に、小さな人影が見えました。


「います!」

 

 短く答えると、人影は段々近寄ってきて背の高いガッシリとした男性になりました。


「こんなところで何をしているんだ!?」


 男性は動きやすそうなメイルを身につけ長い槍を持ち、赤い短髪を微かに揺らしていました。茜色の瞳は驚きに見開かれています。

 

 私はしばし考え、この方を知っていることに思い当たりました。

 

 この方は魔王の討伐に出向いた勇者ヴァルハルト・ユン・オルセン様です。

 

 騎士団の治癒を優先するため同行はしませんでしたが、旅立つ日に見送りをさせていただきました。

 

 勇者しか抜けぬという王家に伝わる槍を引き抜いたため、「聖槍に選ばれた」と誰もが感嘆の目で見つめていた方です。


「あなたは聖女様ではないですか!? なぜこんな辺境の地へ⋯⋯」

「王太子殿下のお怒りを買ってしまい、この地へ追放されました」

「そんな軽装で魔物の跋扈(ばっこ)するこの地へですか!? あの王子は何を考えている! 国の浄化に尽くし数多の騎士を癒した聖女を追放など⋯⋯!」


 ヴァルハルト様は慌てて近寄って来られると、私の手を取りひざまずきました。


「聖女アリサ様。貴女が魔物の影に怯える街の瘴気を払っておられたのは、俺の耳にもたびたび届いていました。騎士団も貴女がいたからこそ魔物と渡り合えたのです。貴女は魔物に食われるべきお人ではありません」

「ありがとう⋯⋯ございます⋯⋯」


 一雫こぼれた私の涙を右手でぬぐい、ヴァルハルト様は穏やかに微笑まれました。


「ヴァルハルト様はどうしてこちらにいらっしゃるのですか?」

「俺は⋯⋯」


 ヴァルハルト様は言葉に詰まり、そして「立ち話もなんですから、少しお待ちください」と腰につけたポーチのような物から銀色の球体を取り出しました。


 それを地面に放ると、どうしたことか、球体が割れて、あっという間に立派な家が出来てしまいました。


「マジックハウスです。持ち運びが出来て、鍵もかけられて便利なんですよ。さ、こちらへどうぞ」


 ヴァルハルト様は家の扉を開け、中へ招いてくださいました。

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