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無実の罪で追放されたので、お菓子で魔物を浄化しながら楽しく暮らします。 〜偽聖女のせいで国が大変? わたしにどうしろと〜  作者: うぐいすもち


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第一話 婚約破棄

「アリサ・リンドウ! レヴェルナ王国王太子フェリオ・ユン・レヴェルナの名において婚約破棄を宣言する!」


 私は信じられない思いで殿下を見つめていました。

 

 日本とは全く異なる世界に召喚されて三年。


 OLとして小さなマンション経営会社に勤務していたところを、いきなり「聖女」として呼び出され、訳の分からぬままこき使われてきました。

 

 魔物を生み出す瘴気が溜まっているからと遠征させられ、騎士団の兵士が深手を負ったからと治癒をさせられ、それ以外は個室に半軟禁状態。

 

 辛うじて図書室で本を読むこと、王家の最低限の茶会は許されましたが、外出もほとんど出来ず、娯楽など以ての外。

 

 そんなとき、足繁く私の部屋へ通って優しい声をかけてくださったのがフェリオ殿下だったのです。夜伽やキスこそなかったものの、他愛ない話をして、手を絡め合い甘い言葉も囁かれました。

 

 半年前には婚約してほしいとも言われ、長い軟禁生活で判断力の鈍っていた私はつい許諾してしまいました。


 それが今、公衆の面前で、王家の関係者や貴族たちが一堂に会するこの社交の場で、私は婚約破棄を告げられています。

 

 王太子(フェリオ)殿下の隣には、一見品よく見えるご令嬢がひっそりと寄り添っていました。

 

 レスティ・ナサ様。

 

 殿下の通学される魔法学院で知り合われた男爵令嬢。こちらの世界で初めてできた私のお友達。そして、現在殿下がご執心のお相手です。


「私に何か至らない点がございましたか⋯⋯?」


 震える声で絞り出すように問うと、殿下は「しらばっくれる気か」と鼻で笑います。


「菓子に関する知識をひけらかし、あげくの果てには紅茶に妙な混ぜものを入れただろう。アレを飲んでからレスティは具合が悪いと言っている」

「レスティ様はお菓子が好きだとお話されたので、前の世界のお菓子を食べさせてさしあげたいとそう申し上げただけでございます。また、こちらで紅茶は何も入れず飲むものですが、レスティ様は渋みが気になるとおっしゃったので、ミルクとお砂糖を足してはと提案させていただきました」

「現にレスティは気分が悪いと言っているのだ。一服盛ったに違いあるまい!」

「私が⋯⋯人を癒し、支え、送り出す使命を負った私が本当に毒をもったと⋯⋯殿下はそうお考えになるのですか?」

「当然だ! 大方私とレスティの仲を羨んだのだろう!」


 ああ⋯⋯もう何を言っても届きそうにありません。レスティ様はお茶会の席で初めて話しかけてくださったご令嬢です。

 

 清楚で品よく大変綺麗な方で、王太子殿下に限らず第二王子殿下、第三王子殿下もほぅと見惚れておられたのをよく覚えています。

 

 そんなレスティ様と親しくなれたと思っていたのは、私だけだったようですね。前の世界のことをあれこれと聞いてこられて、私もつい気を許しすぎてしまったのかもしれません。

 

「これまでの聖女としての功績を踏まえ、命までは奪わない。しかし、アリサ・リンドウはたった今この時より辺境の地へ追放する!」

「⋯⋯かしこまりました」


 一瞬レスティ様を見ると、瞳は気の毒そうに伏せられていましたが、唇は微かに右方向へ歪んでいました。

 

 私には、信じられるものなど何もない。

 

 それが全ての答えだったのでしょう。


 こうして私は追放処分を受け、必要最低限の荷物とわずかばかりの報奨金をまとめ、辺境の地へ出奔したのです。

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