第十九話 プラリネ入りガトーショコラ⑤
街から帰った後、私は販売用のお菓子を作りながら、魔物用のお菓子も作り、外の魔物たちに食べさせました。
ヴァルハルト様に護衛をしてもらいながら辺境の地の浄化を進めたため、凶暴な魔物たちはほぼいなくなり、辺境の地はどんどん平和で静けさに満ちた土地になっていきます。
中にはどうしても浄化が効かず、お菓子に口をつけない凶悪な魔物もいて、それはヴァルハルト様が討伐されました。
ギルドへ行った数週間後、私たちは無事に屋台を開店し、販売を始めました。基本的には私かヴァルハルト様が立ち、ガトーショコラタルトやベイクドチーズタルトを販売しました。
時折エステルやシュクレもついてきて、上手に接客をしてくれます。(エステルは髪型で上手に魔族特有の耳を隠していました)
ヴァルハルト様のお話では、冒険者の中にテイマーもいるらしく、魔物を連れているのはそれほど奇異でもないそうです。
売れ行きは上々で、ギルドの方が言った通り、女性冒険者の方に大変喜ばれました。
「さすがプラチナ証明書のタルトだよ。このツヤ! この輝き! よそでは食べられないね。しかも聖女様が作ったなんて!」
「あの、フルーツを使ったタルトや生クリームを使ったタルトは販売しないんですか?」
「日持ちしないため、集客状況を見て出す予定です。もう少しお待ちくださいね」
「な、なあ。このタルト、ポーションでも入ってるのか? この間ダンジョンで食ったら傷が治ったんだが⋯⋯」
「ふふ、特別なおまじないをかけています」
手にとって口元をほころばせるお客様を見ていると、私の中に温かなものが広がりました。
販売を始めて一ヶ月ほど経った頃でしょうか。その日は朝からガトーショコラタルトがよく売れて、残りは後三個になっていました。
これはお昼に一度帰らなければと考えていると、深く灰色のローブをかぶった不思議なお客様がいらっしゃいました。冒険者の中には訳ありの方もいらっしゃいますが、それにしても目立ちます。
フードは完全に顔を覆い隠していて、ガッシリした体格から男性らしきことしか分かりません。
「ガトーショコラタルトを」
「かしこまりました。お一つでよろしいですか?」
「全てもらおう」
「はい。お包みしますね」
男性はシュクレの小袋に入れる私の手をじっと見つめていました。敵意は感じませんが、そんなに見られていると落ち着きません。
「あの、どうかされましたか?」
「いや。そなたが作ったのか」
「ええ、そうです」
「ここで食べさせてもらおう」
「え!? こ、ここでですか!?」
椅子も机も用意していないので、私はおたおたと慌てふためいてしまいました。その間にフードの男性は袋を開き、ラップをはがし、タルトを一口で食べてしまいます。
「⋯⋯」
黙ったまま咀嚼しているため、美味しかったのかどうかも分かりません。そして、なぜか一瞬フードの男性の身体から光が溢れました。他の方もこんな風に光っているのでしょうか? そのような苦情は今のところ入っていませんが。
「悪くない」
一言だけ感想をつぶやくと、フードの男性は残りのショコラタルトを持ち、お金を払って帰っていきました。
「なんだったんでしょう⋯⋯」
謎のお客さんの来訪にハテナマークをたくさん浮かべながら、私は午後の分を取ってくるため屋台を後にしました。




